
看護の道に進みたいと考えたとき、よく出てくるのが「看護師」「保健師」「助産師」という3つの国家資格です。名前は知っていても、「保健師と看護師は何が違うの?」「助産師になるにはどうすればいいの?」と聞かれると、意外と答えにくいものです。この記事では、3つの資格の違いと、それぞれのなり方を整理します。カギになるのは、保健師と助産師は「看護師+α」だという積み上げの構造です。
まず全体像:看護師が「土台」になる
3つの資格でいちばん大事なのは、その関係です。保健師も助産師も、まず看護師の資格を土台として、その上に専門を積み重ねる形になっています。ここを押さえるのが理解の近道です。
| 資格 | 主な役割 | 必要なもの |
|---|---|---|
| 看護師 | 病院などで患者をケア | 看護師国家試験に合格 |
| 保健師 | 地域・集団の健康づくり・予防 | 看護師+保健師国家試験 |
| 助産師 | 妊娠・出産・産後のケア、分娩の介助 | 看護師+助産師国家試験 |
つまり、保健師や助産師として働くには、看護師国家試験に合格したうえで、それぞれの国家試験にも合格し、両方の免許をそろえる必要があります。言いかえれば、保健師や助産師は「看護師でもある」わけです。この「土台+専門」の構造さえ押さえれば、3つの関係はすっきり整理できます。順に見ていきましょう。
看護師:医療現場の中核

看護師は、病院や診療所などで、患者の療養上の世話(日常生活の援助)と、診療の補助を行う国家資格です。急性期から慢性期まで、幅広い年代・さまざまな病気の患者に対応する、医療現場の中核と言える存在です。3つの資格のなかでも、活躍の場が最も広い職種です。
なるには、高校卒業後に看護大学(4年)や看護専門学校・短大(3年)などで養成課程を修了し、看護師国家試験に合格します。男女どちらでも取得でき、この看護師資格が、保健師・助産師への出発点にもなります。まず看護師を目指すことが、看護の道すべての第一歩です。
保健師:地域の健康を守る予防の専門家

保健師は、保健所や市町村、企業、学校などで、地域や集団の健康づくりを担う国家資格です。看護師が病気の人のケアを中心にするのに対し、保健師は「予防」や「公衆衛生」が主な仕事。健康な人も含めて、健康相談や保健指導、健診、家庭訪問、母子保健などを通じて、病気になる前の段階から人々の健康を支えます。
自治体で働く保健師は、公務員として日勤中心で働くケースが多いのも特徴です。なるには、看護師資格を前提に、保健師の養成課程を修めて保健師国家試験に合格します。大学で看護師と保健師の課程を同時に学ぶルートや、看護師の資格を取ってから1年ほど学ぶルートがあります。人の病気を治すより、地域全体の健康を底上げしたい人に向いた仕事です。
病院の看護師が夜勤を含む交代制で働くことが多いのに対し、行政の保健師は日勤中心で生活のリズムを保ちやすい、という働き方の違いに惹かれて保健師を目指す人もいます。乳幼児健診で赤ちゃんとお母さんに寄り添ったり、生活習慣病の予防教室を開いたり、災害時に住民の健康を守ったりと、活躍の場は地域のあらゆる場面に広がっています。目の前の一人だけでなく、まちに暮らす人々全体を見渡して健康を支える。そんなスケールの大きさが、保健師という仕事の魅力です。
助産師:お産と新しい命を支える

助産師は、妊娠・出産・産後のケアや、分娩の介助を担う国家資格です。正常なお産の介助は、助産師(と医師)が行えます。妊婦さんに寄り添い、新しい命の誕生を支える、専門性の高い仕事です。異常やリスクが生じた場合には、医師につなぎます。
助産師も、看護師資格を土台に、助産師の養成課程を修めて助産師国家試験に合格するとなれます。大学で看護師課程とあわせて学ぶルートや、看護師取得後に専攻科・専門学校(1年)や大学院(2年)で学ぶルートがあります。近年は、じっくり学べる大学院や専攻科へ進む人が増えています。妊娠・出産という人生の大きな節目に、深く寄り添える仕事です。
助産師の仕事は、分娩の介助だけではありません。妊娠中の健康管理のアドバイス、出産に向けた心構えのサポート、産後の授乳指導や育児相談まで、母子に長く寄り添います。病院や助産院で働くほか、開業して助産院を営む助産師もいます。命の誕生という、かけがえのない瞬間に立ち会える一方で、母子の命を預かる責任も大きい仕事です。だからこそ、じっくり学べる大学院などで専門性を高めてから現場に出る流れが広がっているのです。
助産師と産婦人科医はどう違う?
お産にかかわる専門職として、助産師とよく比べられるのが産婦人科医です。この2つの違いも押さえておきましょう。
産婦人科医は医師なので、すべてのお産を扱え、帝王切開などの手術や投薬といった医療行為ができます。ハイリスクの出産にも対応します。一方、助産師は正常分娩の介助が中心で、手術や投薬はできません。異常があれば医師に引き継ぎます。「正常なお産に寄り添うのが助産師、医療行為が必要な場面を担うのが医師」と役割が分かれ、互いに連携しながらお産を支えているのです。
どれを目指す?
3つの資格は、支えたい相手や場面で選び分けられます。
- 病院で幅広く患者をケアしたい→まず看護師(活躍の場が最も広い)
- 地域や集団の健康づくり・予防に携わりたい→保健師(看護師+保健師課程)
- お産に寄り添い、新しい命の誕生を支えたい→助産師(看護師+助産師課程)
どの道に進むにしても、出発点は看護師です。大学の看護学科では、看護師に加えて保健師や助産師の課程を選べる場合もありますが、定員が限られ、学内で選抜があることも多いようです。まず看護師を目指しながら、その先で自分がどの分野に進みたいかを考えていく、という流れが現実的です。
持ち帰り豆知識:助産師になれるのは女性だけ
3つの資格のなかで、助産師には一つ大きな特徴があります。じつは日本では、助産師になれるのは女性だけなのです。男性は、助産師の国家試験を受けること自体ができません。
看護師や保健師には性別の制限がないなかで、助産師だけは法律で「女子」と定められている、珍しい国家資格です。お産という、女性の心と体に深くかかわる場面を支える仕事だからこその決まりと言えるでしょう。同じ看護の土台から枝分かれする3つの資格ですが、こうして一つひとつを見ていくと、それぞれの成り立ちや個性が見えてきます。
まとめ:土台は看護師、そこから枝分かれ
看護師は医療現場の中核、保健師は地域の予防、助産師はお産の専門家。保健師と助産師は、いずれも看護師という土台の上に積み重ねる「看護師+α」の資格です。この構造を知れば、3つの関係で迷うことはありません。
最初の一歩は、看護師の養成課程を持つ大学や専門学校を調べ、そこで保健師や助産師の課程も学べるかを確認すること。将来どの道に進むにしても、まずは看護師という確かな土台を築くことから始まります。進路の見取り図を持っておけば、学びの途中でも迷わず前に進めます。
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