医療事務と調剤薬局事務、働き方と資格の違い

みんなの資格

医療系の事務職に興味があると、必ずと言っていいほど目にするのが「医療事務」と「調剤薬局事務」という2つの資格名です。どちらも「資格があると就職に有利」と言われますが、実際の仕事内容や資格の中身はかなり違います。この記事では、両者の違いを整理しながら、あなたの目的に合わせてどちらを選ぶべきかを具体的にお伝えします。

先に結論:あなたはどっち?

細かい説明はあとに回して、まずは結論からお渡しします。自分の目的に近い行を見てください。

あなたの目的おすすめポイント
病院・クリニックの受付やレセプト業務をしたい医療事務(メディカルクラークなど)診療科ごとの幅広い知識が必要、難易度はやや高め
調剤薬局の受付や調剤報酬請求をしたい調剤薬局事務薬の基礎知識が中心で、医療事務より取り組みやすい
将来どちらの職場でも働ける可能性を広げたい調剤薬局事務→医療事務の順で取得易しい方から始めて自信をつけてから次へ
資格名だけで職場が決まると思っているどちらも民間資格と理解する求人票の業務内容を必ず確認する

表だけで判断がついた方はここで読み終えてもらってもかまいません。なぜこの結論になるのか、根拠を知りたい方はこのまま読み進めてください。

そもそも「医療事務」「調剤薬局事務」は国家資格ではない

複数の民間団体がそれぞれ独自に検定試験を実施している

「医療事務」「調剤薬局事務」という名称の、全国共通の統一試験は存在しません。日本医療教育財団の「メディカルクラーク」をはじめ、技能認定振興協会(JSMA)、日本医療事務協会など、複数の民間団体がそれぞれ独自の名称・出題範囲で検定試験を実施しています。調剤薬局事務についても同様に、複数の団体が認定する資格が並立しています。

民間資格とは、国ではなく民間団体(企業・協会・財団など)が独自の基準で認定する資格のことです。法律上の独占業務はありませんが、就職活動で知識・スキルの証明として活用できます。

「医療事務」という呼び方自体、法律上の定義はない

実は「医療事務」という言葉そのものに法律上の定義はなく、医療機関の窓口・受付・レセプト業務などを担当する仕事全般を指す、いわば業界内の通称です。そのため求人票では「医療事務」とだけ書かれていても、実際に必要とされる知識やレベルは医療機関によって幅があります。資格の有無よりも、求人票に書かれている具体的な業務内容を確認することが大切です。

仕事内容の違い―レセプト業務の中身が別物

医療事務は「診療報酬請求事務」が中心

病院やクリニックの医療事務は、受付・会計に加えて「診療報酬明細書(レセプト)」の作成が主要な業務です。診療報酬点数表に基づいて、診察・検査・処置・薬剤などを点数に変換し、健康保険組合などに請求します。内科・外科・皮膚科など診療科によって算定ルールが細かく異なるため、扱う知識の範囲は広くなりがちです。

レセプトとは、医療機関が健康保険組合などに医療費を請求するための明細書のことです。患者の自己負担分を除いた医療費を、月単位でまとめて請求する仕組みになっています。

調剤薬局事務は「調剤報酬請求事務」+薬の基礎知識

調剤薬局事務は、処方箋の受付や会計に加えて「調剤報酬明細書」の作成が中心業務です。診療報酬とは別の「調剤報酬点数表」に基づいて計算するため、算定の体系そのものが医療事務とは異なります。また、薬剤師の指示のもとで薬を取り扱う場面もあるため、薬の名前や剤形(錠剤・粉薬・軟膏など)についての基礎知識も求められます。

難易度・資格の位置づけを比べる

医療事務(メディカルクラークなど)は星3つの中級レベル

医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)などの代表的な医療事務資格は、難易度の目安として星3つ(★★★☆☆)程度の中級レベルに位置づけられます。診療科ごとの算定ルールや医学的な知識まで幅広く問われるため、初学者は数ヶ月単位の学習期間を見込んでおくと安心です。

調剤薬局事務は星2つで、より取り組みやすい

一方の調剤薬局事務は、難易度の目安が星2つ(★★☆☆☆)程度とされ、医療事務に比べると学習範囲が絞られている分、取り組みやすい資格です。「まず医療系の資格に挑戦してみたい」という方の最初の一歩としても選ばれやすい傾向があります。

目的別おすすめルート

病院・クリニックの受付事務を目指す人

診療科を問わず、病院・クリニックでの就職を考えている方は、医療事務(メディカルクラークなど)の資格が候補になります。診療報酬の算定ルールは2年に一度改定されるため、資格取得はゴールではなく「学び続けるための土台づくり」と捉えておくとよいでしょう。

調剤薬局の受付事務を目指す人

調剤薬局での就職を考えている方は、調剤薬局事務の資格が直接的に役立ちます。医療事務に比べて学習範囲が絞られているため、独学や通信講座でも比較的短期間で取得を目指しやすいのが特徴です。

医療系事務でキャリアの幅を広げたい人

「病院でも薬局でも働けるようになりたい」という方は、まず難易度の低い調剤薬局事務から取得し、自信をつけたうえで医療事務の資格に挑戦するという順番がおすすめです。どちらの資格も、レセプト業務という共通の土台があるため、片方の知識がもう一方の理解を助けてくれます。

持ち帰り豆知識:「レセプト」はドイツ語、そして2年に一度の改定という宿命

レセプトの語源はドイツ語の「Rezept」

「レセプト」という言葉は、ドイツ語で「処方箋」を意味する”Rezept”に由来するとされています。日本の医療界には、かつてドイツ医学の影響を強く受けていた歴史から、「カルテ」「ギプス」など、ドイツ語由来の言葉が数多く残っています。「レセプト」もその一つで、今では日本独自の意味合い(診療報酬明細書)で定着しています。

診療報酬・調剤報酬は2年に一度改定される

診療報酬と調剤報酬は、原則として2年に一度のペースで改定されます。点数表の数字や算定条件が見直されるため、資格を取得したあとも、医療事務・調剤薬局事務として働き続ける限りは新しいルールを学び直す機会が定期的に訪れます。一見大変に思えるかもしれませんが、見方を変えれば「制度の変化に詳しい人材」として長く必要とされ続ける仕事だということでもあります。

まとめ:資格名より「どちらの現場で働きたいか」で選ぶ

  • 病院・クリニックで働きたい方は医療事務(メディカルクラークなど)から
  • 調剤薬局で働きたい方、まず取り組みやすい資格から始めたい方は調剤薬局事務から
  • 両方の現場で働ける可能性を広げたい方は、調剤薬局事務→医療事務の順で取得

最初の一歩としては、先に結論の表で自分に近いルートを確認したうえで、それぞれの資格の試験範囲・受験方法を調べてみてください。どちらも在宅受験や通信講座に対応している試験が多く、働きながらでも目指しやすい資格です。

▶ 医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)の試験内容・難易度のまとめは「医療事務技能審査試験(メディカルクラーク)について」のページで詳しく紹介しています。

▶ 調剤薬局事務の試験内容・難易度のまとめは「調剤薬局事務について」のページもあわせてご覧ください。

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