採石のための掘削作業主任者とは?
労働安全衛生法に基づく国家資格(技能講習)をわかりやすく解説
採石のための掘削作業主任者の概要
採石のための掘削作業主任者は、労働安全衛生法第14条・施行令第6条第9号に基づき、採石法第2条に規定する岩石(花崗岩・安山岩・砂岩・石灰岩・大理石等)を採取するための掘削作業を行う事業場に選任が義務付けられる国家資格(技能講習修了証)です。キャタピラー教習所・コマツ教習所等の労働局登録教習機関が実施する2日間・13時間の技能講習を修了し、修了考査に合格することで取得できます。受講には職業訓練修了や実務経験等の受講資格が必要です。
※ 「採石のための掘削」と「地山の掘削」は別の作業主任者:採石のための掘削作業主任者は「採石法に規定する岩石(硬岩)の採取のための掘削」を対象とします。土砂地盤を掘削する「地山の掘削及び土止め支保工作業主任者」とは対象が異なります。採石場・石切場での岩石掘削には本資格が必要です。
選任が必要な作業と作業主任者の職務
採石法第2条に規定する岩石を採取するための掘削作業に作業主任者の選任が義務付けられます。作業主任者の職務は作業の方法の決定・指揮・使用する機械・器具・工具の点検・落石・崩壊等の危険の確認と対応・安全帯等の使用状況の監視・爆薬使用時の安全確認です。採石場特有の浮き石(不安定な岩石)・亀裂の確認と除去指揮も重要な職務の一つです。
基本情報の早見表
| 取得方法 | 技能講習(2日間・13時間)+修了考査(筆記)合格 |
|---|---|
| 講習科目 | ①岩石・掘削方法に関する知識(6h)②設備・機械・作業環境に関する知識(4h)③教育方法(1.5h)④関係法令(1.5h)⑤修了考査 |
| 合格基準 | 筆記試験合格(合格基準は非公表。合格率はほぼ100%) |
| 受講資格 | ①石材科の職業訓練修了後、岩石の掘削業務2年以上②石材関連業務の一定の学歴+2年以上の実務③各種職業訓練修了者 |
| 受講料 | 約13,000〜22,000円(機関・地域により異なる) |
| 有効期限 | なし(終身有効・更新不要) |
| 選任対象 | 採石法第2条に規定する岩石の採取のための掘削作業(採石場・石切場等) |
| 主催 | キャタピラー教習所・コマツ教習所等の労働局登録教習機関 |
講習内容を詳しく
2日間・13時間の科目詳細
技能講習は2日間13時間のカリキュラムで、岩石の性質・掘削工法・採石機械の知識・安全管理・関係法令を体系的に学びます。採石業特有の地質・爆薬・重機に関する専門知識が中心です。
- 岩石・掘削方法に関する知識(6時間):岩石の種類と性質(火成岩・堆積岩・変成岩の分類・硬さ・亀裂の特性)・採石法の対象岩石(花崗岩・安山岩・砂岩・石灰岩・大理石・凝灰岩等)・掘削工法(発破工法・機械掘削工法・切削工法)・発破の基礎(火薬の種類・起爆方法・発破効果)・採石面の崩落・落石メカニズムと防止対策・浮き石の点検と除去方法・採石場の法面(のり面)管理・排水計画
- 設備・機械・作業環境に関する知識(4時間):削岩機(ドリルジャンボ・クローラードリル・ブレーカー)の種類と取扱い・油圧ショベル・ブルドーザー・ダンプトラックの特性・岩石破砕機・砕石設備・ベルトコンベアの点検・粉じん(シリカ粉じん)対策と防じんマスク・騒音・振動の管理・崩落防止設備(ロックボルト・ネット)の点検
- 教育方法(1.5時間):採石場での危険予知活動(KY活動)の実施方法・新規入場者教育・ツールボックスミーティングの運営・墜落・転落・はさまれ等の事故事例と防止対策・発破作業における特別教育の実施
- 関係法令(1.5時間):施行令第6条第9号・安衛則第321〜337条(採石作業の安全基準)・採石法(採石業登録・岩石採取計画・採石跡地の復旧)・火薬類取締法(発破作業との関係)・粉じん障害防止規則・作業主任者の職務と選任義務
修了考査の内容と合格基準
2日目の最後に修了考査(筆記)が実施されます。合格基準の公式発表はありませんが、合格率はほぼ100%です。岩石の種類・掘削工法(発破・機械)・採石場の安全管理・関係法令の基本事項を2日間の講義でしっかり習得すれば問題なく合格できます。合格者には「採石のための掘削作業主任者技能講習修了証」が交付されます。
難易度・合格の目安
採石のための掘削作業主任者の修了考査は合格率がほぼ100%で、2日間の講義内容に沿った出題です。受講者は採石場・砕石会社の現場作業員が中心のため、岩石・重機・発破に関する基礎知識が業務経験から身についており、講義内容が「知っていることの整理」として進むケースが多いです。実質的なハードルは受講資格の確認(職業訓練修了後の実務年数等の要件確認)です。
キャリアパスと需要
採石業・砕石会社・石材業界で必須の安全管理資格
採石業者(砕石会社・石材会社)・建設資材会社・採石場を運営する建設会社が主な就業先です。国内の砕石は道路・ダム・コンクリート構造物の骨材として年間約2億トンが採取・使用されており、採石業は建設資材の根幹を支える重要産業です。採石場の作業主任者は現場の安全管理責任を担うとともに、採石計画・発破管理・重機管理を一元的に把握するポジションです。採石場の班長・現場監督へのキャリアアップに直結します。
採石計画・発破技士・火薬類取扱保安責任者との組み合わせ
採石のための掘削作業主任者を取得後、「火薬類取扱保安責任者」(火薬類取締法に基づく国家資格)や「採石業務管理者」(採石法に基づく資格)を合わせて取得することで、採石場の現場管理から許認可対応まで幅広く担える専門家として採石業界での市場価値が高まります。火薬を使う発破採石が中心の採石場では、発破技士(国家資格)の取得も有力な組み合わせです。
豆知識:採石業の安全管理
採石場の「浮き石」は最大の危険
浮き石とは、採石作業で切り離された後に岩盤の亀裂・割れ目に引っかかっている不安定な岩石のことです。見た目には固定されているように見えるため、気づかずに接近した作業員が落石に巻き込まれる重大事故が起きます。採石のための掘削作業主任者の最も重要な職務の一つが「坑口・採石面の浮き石の点検と除去の指揮」であり、毎朝の作業開始前に全採石面を目視・打診棒で確認することが義務付けられています。
発破採石と「発破技士」の関係
硬岩(花崗岩・安山岩等)の採石では削岩機で孔を開け火薬を装填して爆発させる「発破採石」が主流です。火薬の取扱いは「火薬類取締法」の規制を受け、発破作業には「発破技士」の資格が必要です。採石のための掘削作業主任者は発破技士と連携して採石計画・安全距離の設定・警戒配置を取り仕切る役割を担います。両資格を合わせ持つことで採石場の安全管理の責任者として高い評価を受けます。
採石業特有の「珪肺(けいはい)」リスクへの対応
採石場では削岩・砕石作業で発生するシリカ(二酸化ケイ素)を含む微細な粉じんを吸入し続けることで「珪肺(けいはい)」という職業性肺疾患を発症するリスクがあります。珪肺は現在も根本的な治療法がない難病です。採石のための掘削作業主任者は粉じん障害防止規則に基づく粉じん発生抑制(散水・湿式掘削)・局所排気装置の設置・防じんマスク(DS2以上)の適正使用の徹底を作業員に指導する義務を担います。
よくある質問
Q. 建設現場で掘削機を使う場合も本資格が必要ですか?
建設現場(土木工事・基礎工事等)での土砂・軟岩の掘削は「地山の掘削及び土止め支保工作業主任者」が必要です。採石のための掘削作業主任者は「採石法第2条に規定する岩石(硬岩)の採取のための掘削」が対象であり、砕石業・石材業の採石場での作業に選任が義務付けられます。建設現場で硬岩を掘削する場合でも、採石販売が目的でなければ本資格の選任義務は生じませんが、地山の掘削作業主任者の選任は必要です。
Q. 採石業登録の要件に本資格は含まれますか?
採石業の登録(採石法に基づく都道府県知事への登録)の要件として「採石業務管理者」の選任が義務付けられていますが、採石のための掘削作業主任者とは別の資格です。採石業務管理者は採石業務管理者試験(都道府県ごとに実施)の合格または採石業務管理者認定講習の修了で取得できます。採石のための掘削作業主任者は作業現場の安全管理のための資格であり、採石業務管理者は採石計画・法令遵守の管理のための資格です。
こんな方におすすめ
- 砕石会社・石材会社・採石業者の現場で、岩石の採取・掘削作業の安全管理を担う作業主任者として選任されたい方
- 採石場の班長・現場監督へのキャリアアップを目指し、法定の作業主任者資格を取得したい採石業経験者の方
- 火薬類取扱保安責任者・発破技士の取得と組み合わせ、採石場の安全管理の専門家として独立・起業を目指す方
- 採石業務管理者と合わせて取得し、採石業の運営管理から現場安全まで一元的に対応できる人材を目指す方
最新の講習日程・受講料・申込方法の詳細はキャタピラー教習所・コマツ教習所等の登録機関にお問い合わせください。
公式情報(厚生労働省):採石のための掘削作業主任者技能講習規程(厚生労働省)
