地山の掘削及び土止め支保工作業主任者とは?
労働安全衛生法に基づく国家資格(技能講習)をわかりやすく解説
地山の掘削及び土止め支保工作業主任者の概要
地山の掘削及び土止め支保工作業主任者は、労働安全衛生法第14条・施行令第6条第9号に基づき、掘削面の高さが2m以上となる地山の掘削作業および土止め支保工の切りばり・腹起しの取り付けまたは取り外しの作業を行う場合に選任が義務付けられる国家資格(技能講習修了証)です。建設業労働災害防止協会(建災防)等の登録機関が実施する3日間・17時間の技能講習を修了し、修了考査に合格することで取得できます。受講には実務経験3年以上等の受講資格があります。
※ 「地山の掘削」「土止め支保工」の2作業を統合した資格:平成18年の労働安全衛生法施行令改正により「地山の掘削作業主任者」と「土止め支保工作業主任者」が統合され、現在の名称になりました。旧来の両資格保有者は自動的に新資格の修了証が交付されています。掘削面の高さ2m以上の作業現場では土砂崩壊による労働災害が多発しており、この資格取得者による安全管理が法的に義務付けられています。
選任が必要な作業と作業主任者の職務
掘削面の高さが2m以上となる地山の掘削(岩盤・崩壊しやすい地盤を除く)と、土止め支保工(切りばり・腹起し)の取付け・取り外し作業に作業主任者の選任が必要です。作業主任者の職務は作業方法の決定・指揮・器具・工具の点検・安全帯等の使用状況の監視です(安衛則第360条・362条)。
基本情報の早見表
| 取得方法 | 技能講習(3日間・17時間)+修了考査(筆記)合格 |
|---|---|
| 講習科目 | ①作業の方法に関する知識(7時間)②工事用設備・機械・器具・作業環境に関する知識(3時間)③工事に関する知識(4時間)④関係法令(2時間)⑤修了考査(1時間) |
| 合格基準 | 各科目40点以上かつ総合60%以上(慣例) |
| 受講資格 | ①地山の掘削・土止め支保工の業務に3年以上従事した者②学歴に応じ土木・建築系学科卒業+2年以上の業務経験③土木施工管理技士・建設機械施工管理技士等は一部免除あり |
| 受講料 | 約14,000〜29,000円(地域・機関により差あり。建災防テキスト代込み) |
| 有効期限 | なし(終身有効・更新不要) |
| 免除制度 | 土木施工管理技士・建築士・特定の実務経験者は講習科目の一部免除あり |
| 主催 | 建設業労働災害防止協会(建災防)および都道府県の労働基準協会等の登録機関 |
講習内容を詳しく
3日間・17時間の科目詳細
技能講習は3日間17時間のカリキュラムで、4科目の講義と修了考査で構成されます。
- 作業の方法に関する知識(7時間):地山の種類(岩盤・粘土・砂・礫等)と崩壊特性・掘削方法(オープンカット・矢板工法)・土質試験(N値・粘着力)・崩壊の前兆現象と緊急措置・排水計画・土止め支保工(親杭横矢板・鋼矢板・H鋼等)の種類と設計原則・切りばり・腹起し・火打ち・中間杭の機能と取り付け手順
- 工事用設備・機械・器具・作業環境に関する知識(3時間):掘削機械(パワーショベル・バックホウ・クラムシェル)の特性・揚重機(クレーン)の作業半径管理・換気設備・照明設備・有害ガス検知・騒音・振動・粉じん対策・作業環境測定
- 工事に関する知識(4時間):土木工事施工の基礎(掘削計画書の読み方・仮設計画書の確認)・近接構造物への影響(水道管・ガス管・地下鉄・隣接建物の沈下計測)・地下水処理(釜場排水・ウェルポイント・ディープウェル)・埋設物調査と試掘
- 関係法令(2時間):労働安全衛生法第14条・施行令第6条・安衛則第355〜375条(地山掘削の安全基準)・建設業法・都市計画法・建築基準法の関連条項・作業主任者の職務と選任義務・特別教育との関係
修了考査の内容と合格基準
3日目の最後に修了考査(筆記・1時間程度)が実施されます。出題は4科目からバランスよく出題され、各科目40%以上かつ総合60%以上が合格の目安です(実施機関により若干異なる)。建災防の講習テキストに沿った内容が中心で、講義をしっかり受講していれば合格できる難易度です。万が一不合格の場合は補講・再試験の対応がある機関もあります。
難易度・合格の目安
地山の掘削及び土止め支保工作業主任者技能講習の修了考査は、講義内容を踏まえたものであり修了率は非常に高いです。実質的な難関は「受講資格の確認」であり、3年以上の実務経験(または学歴に応じた経験年数)が証明できない場合は受講できません。雇用証明書・工事経歴書・事業者証明書等の書類準備が必要です。実務経験者にとってはスムーズに取得できる資格です。
キャリアパスと需要
建設業・土木工事の現場監督・施工管理者として
建設会社・土木工事会社・ゼネコン・地下鉄・道路・ダム・宅地造成工事を請け負う専門工事会社が主な就業先です。掘削深さ2m以上の工事では法的に作業主任者の選任が必要なため、土木施工管理の現場では必須資格の一つとされています。建設業では作業主任者資格保有者は施工管理技士(土木)の補完資格として評価され、資格手当・役職昇格の条件になることもあります。
土木施工管理技士・ずい道等の掘削等作業主任者との組み合わせ
土木施工管理技士(1級・2級)と組み合わせることで、施工計画・品質管理・安全管理の全領域をカバーする土木の専門家として評価されます。同じ掘削系資格の「ずい道等の掘削等作業主任者」と組み合わせると、開削工法(オープンカット)とトンネル工法(シールド・山岳工法)の両方の作業主任者として建設現場の幅広い工種に対応できます。
豆知識:地山掘削の安全管理
「掘削面の高さ2m以上」の基準が設けられた理由
労働安全衛生法が掘削深さ2m以上を作業主任者必要の基準とした背景には、2m以上の土砂崩壊時に作業者が逃げ切れない確率が急激に高まるという統計的な知見があります。1m程度の崩壊では迅速に退避できることが多いですが、2m超になると崩壊速度・崩壊量ともに危険域に達します。現場では「2m手前で必ず作業主任者に確認」という原則が安全文化として定着しています。
土止め支保工の「切りばり座屈」が事故の主因
土止め支保工の事故で最も多いのが「切りばりの座屈(側圧による急激な変形)」です。深い掘削では地下水圧・側圧が想定を超えることがあり、切りばりが突然座屈すると山留め壁が倒壊・崩壊します。作業主任者は毎日の作業開始前に切りばりの変形・コーナー部の緩み・水平・垂直のずれを目視確認し、異常時は即座に作業を止め対処する責任があります。
「地山」の定義は岩盤・崩壊しやすい地盤を含まない
安衛則上の「地山」は「岩盤または崩壊しやすい地山を除く地山」を指します(安衛則第355条)。岩盤の掘削は「発破等の作業」の安全基準が適用され、崩壊しやすい急傾斜地の掘削は別の特別な措置(崩壊の防止)が求められます。一般的な建設工事(都市部の地盤・砂礫層・粘土層)での掘削が本資格の主な対象です。
よくある質問
Q. 土木施工管理技士の資格があれば技能講習の一部が免除されますか?
はい。1級または2級土木施工管理技士の資格保有者は「工事用設備・機械・器具・作業環境に関する知識(3時間)」および「工事に関する知識(4時間)」の2科目計7時間が免除され、2日間の短縮コース(10時間)で受講できます。同様に1級・2級建築士も一部科目免除の対象です。受講申込時に資格証の写しを提出することで免除が認められます。
Q. 受講資格の「実務経験3年以上」はどのように証明しますか?
実務経験の証明は「事業者証明書(会社の押印あり)」が一般的です。証明書には従事した業務内容(地山の掘削・土止め支保工に関する業務)と期間を記載します。フリーランス・個人事業主の場合は工事記録(工事台帳・現場写真・契約書等)を補足書類として提出することで対応できる機関もあります。詳細は受講申し込み先の機関に事前確認をしてください。
こんな方におすすめ
- 掘削工事・基礎工事・地下工事の現場で3年以上の実務経験があり、法定の作業主任者として活躍したい方
- 土木施工管理技士を取得済みで、地山掘削・土止め支保工の作業主任者資格でキャリアを強化したい方
- 建設会社・ゼネコンで施工管理・現場監督のキャリアパスを描く若手技術者の方
- 道路・宅地造成・排水工事の専門工事会社で作業主任者として法的責任を担いたい方
最新の講習日程・受講料・申込方法の詳細は建設業労働災害防止協会(建災防)または各都道府県の登録教習機関にお問い合わせください。
公式サイト:建設業労働災害防止協会(建災防)
