足場の組立て等特別教育とは?
労働安全衛生法に基づく国家制度(特別教育)をわかりやすく解説
足場の組立て等特別教育の概要
足場の組立て・解体または変更の作業に係る業務特別教育は、労働安全衛生法第59条第3項・労働安全衛生規則第36条第39号(2015年7月1日施行)に基づき、足場の組立て・解体・変更作業に従事するすべての作業員に対して事業者が実施義務を負う「特別教育」です。学科6時間(法令上実技の規定なし)の講習で修了証が取得できます。修了考査(試験)は法令上定められておらず、全科目受講完了で修了証が交付されます。受講資格は18歳以上です(足場作業は労働基準法上18歳未満に禁止される危険業務)。建設現場での足場作業員として働く際の基本的な特別教育であり、元請け会社から現場入場条件として提示を求められることが多い実用的な修了証です。
※ 「作業主任者技能講習」との違いに注意:本特別教育は足場の組立て・解体・変更作業に「従事する」すべての作業員(実際に手を動かすすべての人)が対象です。一方、「足場の組立て等作業主任者技能講習」は高さ5m以上の足場現場で作業を「指揮・監督する」1名以上の責任者に必要な技能講習(修了考査あり)です。本特別教育は作業員全員・作業主任者技能講習は監督者と、役割が明確に分かれています。実務では両方を取得しておくとキャリアの幅が広がります。
対象業務と作業主任者との役割の違い
本特別教育の対象業務は足場の「組立て」「解体」「変更(追加・撤去・改造)」のすべてで、高さ5m未満の小規模足場も含みます。ビティ足場(枠組み足場)・くさび緊結式足場(ビケ足場)・単管足場・移動式足場(ローリングタワー)等の組立て・解体を行う職人全員が対象です。「足場を踏み台として使うだけ」の塗装・外壁補修の作業者は対象外ですが、足場板を取り付け・取り外しする場合は対象に含まれます。足場工事会社・建設業・塗装業・外壁補修業等の事業者は従業員を足場作業に従事させる前に本特別教育を実施する義務があります。
基本情報の早見表
| 取得方法 | 特別教育(学科6時間・法令上実技の規定なし・1日)の全科目受講完了 |
|---|---|
| 講習科目(学科6時間) | ①足場及び作業の方法に関する知識(3時間)②工事用設備・機械・器具・作業環境等に関する知識(0.5時間)③労働災害の防止に関する知識(1.5時間)④関係法令(1時間) |
| 修了条件 | 試験(修了考査)なし。全科目受講完了で修了証交付 |
| 受講資格 | 18歳以上(足場作業は18歳未満に禁止される危険業務のため)。学歴・実務経験不要 |
| 受講料 | 約10,000〜17,000円(機関・地域により差あり) |
| 有効期限 | なし(終身有効・更新義務なし) |
| 実施主体 | 建設業労働災害防止協会(建災防)・中小建設業特別教育協会・仮設工業会等 |
| 公式根拠 | 安衛法第59条第3項・安衛則第36条第39号・安全衛生特別教育規程第22条 |
講習内容を詳しく
学科6時間の科目詳細(法令上実技の規定なし)
本特別教育は法令上学科のみの規定で実技は定められていませんが、実施機関によっては任意で実技(安全帯の装着確認・足場板の取扱い実習等)を追加するコースもあります。学科6時間の中で最も重要なのは「足場及び作業の方法に関する知識(3時間)」で、足場の種類・構造・安全な組立て・解体手順・点検方法を詳細に学びます。2015年の施行後、建設現場での足場関連事故の低減が期待されており、特に解体時の墜落防止策が重点的に教育されます。
- 足場及び作業の方法に関する知識(学科・3時間):足場の種類(枠組み足場・くさび緊結式足場・単管足場・移動式足場・つり足場・張出し足場)と用途・各部の名称(建枠・布板・手すり・筋交い・根がらみ・アンカー・ジャッキ)と機能・足場の設置基準(床材の重ね・すき間・端部のひかえ・壁つなぎの間隔)・組立て手順(基礎→ジャッキ→建枠→布板→手すり→筋交い→壁つなぎの順序)・解体手順(組立ての逆順・上から下への原則)・変更作業(部材の追加・撤去・位置変更)の手順と安全確認・荷重の計算(積載荷重・作業荷重・風荷重)・材料の点検(変形・腐食・破損の確認)と取扱い・足場からの墜落防止措置(手すり・中桟・幅木の設置基準)
- 工事用設備・機械・器具・作業環境等に関する知識(学科・0.5時間):揚重機・クレーンと足場の位置関係・電気設備との離隔距離・作業環境(悪天候・強風・大雨時の作業中止基準)・足場材の揚重方法・荷受けステージの設置基準・資材搬入エレベーターとの干渉確認
- 労働災害の防止に関する知識(学科・1.5時間):足場関連の死亡事故統計(墜落・転落・崩壊・飛来落下)・墜落・転落事故の発生状況(足場の解体作業中が最多)・危険予知(KY)活動の実施方法・ヒヤリ・ハット事例の共有・悪天候時の作業中止と点検の判断基準・作業開始前点検(朝一番の足場全体の確認)・作業主任者(特別教育修了者と作業主任者の協働)との役割分担・保護具(安全帯・ヘルメット・安全靴)の正しい着用
- 関係法令(学科・1時間):安衛法第59条第3項・安衛則第36条第39号・安全衛生特別教育規程第22条・足場等の安全基準(平成21年改正安衛則による手すり・幅木の義務)・作業主任者の職務(特別教育受講者との役割区分)・足場の設置届(高さ10m以上・設置期間60日以上の場合)・作業手順書の作成義務
修了の条件(試験なし・全科目受講完了)
足場の組立て等特別教育には法令上の修了考査(試験)がありません。学科6時間を全科目受講完了した時点で修了証が交付されます。1日で取得でき、eラーニング(オンライン)での学科受講にも対応しています。受講記録は安衛則第38条に基づき3年間保存が義務です。なお2015年7月1日の施行時点で既に足場作業に従事していた者は、短縮版(3時間コース)での受講が経過措置として認められましたが、2018年以降の新規従事者は6時間コースが必須です。
難易度・受講のポイント
足場の組立て等特別教育は1日(6時間)で取得できる実用的な特別教育です。建設現場への新規入場時に元請けから修了証の提示を求められるケースが標準化しており、特に足場工事専門業者・仮設工事業者・建設会社・塗装会社への就職では事前の取得が求められます。フルハーネス型墜落制止用器具特別教育と合わせると、建設現場で求められる高所・足場作業の二大必須特別教育が揃います。
キャリアパスと需要
建設・塗装・外壁補修の現場で必須の修了証
足場工事専門会社(仮設足場施工業者)・総合建設業(ゼネコン)・外壁補修会社・塗装会社・電気設備工事会社・設備保全会社・解体工事会社・橋梁工事会社が主な就業先です。日本全国の建設現場では常時大量の足場作業員が必要とされており、慢性的な人手不足が続いています。足場工事は建物の工期全体を左右する重要工程であるため、経験を積んだ足場職人の需要は高く、本特別教育を起点に足場の組立て等作業主任者技能講習(経験を積んだ後に取得)へとキャリアアップできます。
フルハーネス特別教育・作業主任者技能講習との組み合わせ
本特別教育と「フルハーネス型墜落制止用器具特別教育」を合わせて取得することで、建設現場での高所・足場作業への対応能力を証明できます。さらに経験を積んだ後に「足場の組立て等作業主任者技能講習」(作業指揮者・監督者の資格)へとステップアップすると、現場の責任者として現場管理業務まで担当できる足場のスペシャリストとして評価されます。「とび技能士(1・2・3級)」との組み合わせで足場職人としての技能の高さを証明でき、独立・創業にも有利な資格体系を構築できます。
豆知識:仮設足場の基礎知識
枠組み足場・くさび緊結式足場・単管足場の違い
建設現場で使われる仮設足場には主に3種類があります。枠組み足場(ビティ足場)は鋼管製の建枠を積み上げる工法で高層建物の外壁工事に多用されます。くさび緊結式足場(ビケ足場・ロックシリーズ等)は支柱に設けた緊結部(くさびで固定する接続金物)を使用する工法で、設置・解体が速く中低層建物に広く使われます。単管足場は単管パイプとクランプ(接続金物)だけで組む最もシンプルな工法で、工場設備の補修や狭小現場での小規模足場に適しています。本特別教育では3種類の足場の構造・特徴・安全基準(壁つなぎ間隔・積載荷重等)を網羅的に学びます。
高さ5m以上の足場は作業主任者の選任が義務
安衛令第6条第15号の規定により、高さ5m以上の足場の組立て・解体・変更作業では「足場の組立て等作業主任者」を1名以上選任することが事業者に義務付けられています。この作業主任者は「足場の組立て等作業主任者技能講習」修了者であることが要件です。本特別教育(作業員全員対象)と作業主任者技能講習(指揮・監督者対象)は別々に必要な制度です。高さ5m未満の足場でも本特別教育は必要ですが、作業主任者の選任義務はありません。5m以上の現場では作業主任者の指揮のもとで本特別教育修了者が実作業を行う体制が法令上の要件です。
「解体作業時」が最も危険な場面
足場関連の死亡事故は「解体作業中」が組立て作業中よりも多く発生しています。解体作業は組立ての逆順で行いますが、上から下への解体の過程で足場板・手すり・筋交いを取り外すにつれて作業足場自体が不安定になり、かつ墜落防止の手すりが次々に撤去されるためリスクが高まります。事故を防ぐためには①「手すり先行工法」(組立て時は手すりを最初に設置し、解体時は最後に撤去する)②壁つなぎを外すタイミングの慎重な管理(支持が少なくなった状態で大きな風荷重・衝撃を受けないこと)③解体中は必ずフルハーネス型墜落制止用器具を着用することが最重要の安全対策です。
よくある質問
Q. 足場を「使うだけ」(上に乗って作業するだけ)でも特別教育が必要ですか?
足場の上で作業するだけ(塗装・補修・電気工事等の作業員として足場に乗るだけ)であれば、足場の組立て等特別教育は法令上必要ありません。本特別教育が必要なのは足場の「組立て・解体・変更(部材の追加・取外し・位置変更)」業務に従事する場合です。ただし足場板の掛け替え・仮設手すりの取外し・ブラケット(張り出し部分)の追加等は「変更作業」に該当し、特別教育が必要です。実際には足場を使う職種でも組立て・解体に一部関わるケースが多いため、元請けから本特別教育の修了証提示を求められる場合があります。
Q. eラーニング(オンライン)でも取得できますか?
はい、法令上実技の規定がない本特別教育は学科6時間を全てオンライン(eラーニング)で受講し、修了証を取得できます。CIC日本建設情報センター・中小建設業特別教育協会・CECC等のオンライン講座が全国対応で提供されており、パソコン・スマートフォンで自分のペースで受講できます。動画視聴・確認テスト・受講記録管理がセットになったシステムが多く、修了証は講習機関から発行されます。出張・転勤が多い方や近くに講習機関がない地域の方にも便利です。ただし元請けによっては集合形式での受講修了証のみを認める場合もあるため、就業先の確認も必要です。
こんな方におすすめ
- 足場工事専門会社・建設会社・外壁補修会社・塗装会社に就職・転職する予定であり、現場入場前に足場の組立て等特別教育の修了証を準備したい18歳以上の方(試験なし・1日で取得可)
- 建設現場に既に入場しているが本特別教育の受講記録がなく、元請けから修了証の提示を求められている足場作業経験者の方
- フルハーネス型墜落制止用器具特別教育と合わせて、建設現場での高所・足場作業に必要な二大特別教育を揃えて就職活動を有利に進めたい方
- 足場作業員として経験を積み、将来的に「足場の組立て等作業主任者技能講習」の受講を目指してキャリアアップを計画している方
最新の講習日程・受講料・申込方法の詳細は建設業労働災害防止協会(建災防)または中小建設業特別教育協会にお問い合わせください。eラーニングでの受講も全国対応しています。
