足場の組立て等作業主任者とは?
労働安全衛生法に基づく国家資格(技能講習)をわかりやすく解説
足場の組立て等作業主任者の概要
足場の組立て等作業主任者は、労働安全衛生法第14条・施行令第6条第15号に基づき、つり足場・張出し足場または高さ5m以上の足場の組立て・解体・変更作業を行う事業場に選任が義務付けられる国家資格(技能講習修了証)です。建設業労働災害防止協会(建災防)や中央労働災害防止協会(中災防)等の登録機関が実施する2日間・14時間の技能講習を修了し、修了考査に合格することで取得できます。受講には「足場の組立て・解体・変更の業務に3年以上従事した者」等の受講資格が必要です。
※ 「特別教育(6時間)」と「作業主任者技能講習(2日間)」は別物:足場の組立て・解体・変更の業務を行う作業者には「足場の組立て等特別教育(6時間)」の受講が義務付けられています。しかし特別教育は「作業を行う者」向けの安全衛生教育であり、作業主任者(法的な責任者・指揮者)になるためには別途「足場の組立て等作業主任者技能講習」の修了が必要です。特別教育だけでは作業主任者にはなれません。
選任が必要な作業と作業主任者の職務
つり足場(吊り下げ式)・張出し足場(建物外壁から張り出すもの)または高さ5m以上の足場の組立て・解体・変更作業に作業主任者の選任が義務付けられています(安衛則第566条)。作業主任者の職務は作業の方法の決定と直接指揮・材料の欠点の有無の確認・器具・工具の点検・安全帯等の使用状況の監視・墜落防止措置の実施確認です。
基本情報の早見表
| 取得方法 | 技能講習(2日間・14時間)+修了考査(筆記)合格 |
|---|---|
| 講習科目 | ①足場の種類・材料・強度に関する知識(4時間)②足場の組立て・解体・変更の方法に関する知識(7時間)③労働安全衛生法令(2時間)④修了考査(1時間) |
| 合格基準 | 各科目40%以上かつ総合60%以上(合格率90%超) |
| 受験料 | 約15,000〜16,925円(テキスト代込み・地域差あり) |
| 受講資格 | ①足場の組立て・解体・変更の業務に3年以上従事②土木・建築・造船系大学等卒業後2年以上の実務③一定の職業訓練修了後2年以上の実務 |
| 有効期限 | なし(終身有効・更新不要)。5年ごとの能力向上教育は努力義務 |
| 選任対象 | つり足場・張出し足場・高さ5m以上の足場の組立て・解体・変更作業 |
| 主催 | 建設業労働災害防止協会(建災防)・中央労働災害防止協会(中災防)等 |
講習内容を詳しく
2日間・14時間の科目詳細
技能講習は2日間14時間のカリキュラムで、3科目の講義と修了考査で構成されます。
- 足場の種類・材料・強度等に関する知識(4時間):単管足場(クランプ式)・くさび緊結式足場(ビケ足場)・枠組み足場(ビティ足場)・つり足場(チェーン・ゴンドラ)・張出し足場・移動式足場(ローリングタワー)の構造と特性・各部材(手すり・筋かい・幅木・根がらみ・作業床)の強度基準・材料欠点の判断基準(変形・腐食・亀裂)
- 足場の組立て・解体・変更の方法に関する知識(7時間):組立手順(根元固定→支柱建て→手すり先行→布板設置)・解体手順(手すり先行工法の逆順)・変更時の確認事項・作業床の設置基準(幅40cm以上・すき間3cm以下)・墜落防止措置(手すり高さ85cm以上・中さん・幅木)・組立図の読み方・着地防止措置(可搬式架設道板)
- 労働安全衛生法令(2時間):施行令第6条第15号・安衛則第559〜575条(足場の安全基準)・手すり先行工法に関する指針・特別教育との違い・作業主任者の職務(安衛則第566条)・安全衛生教育義務・能力向上教育(5年ごとの努力義務)・墜落・転落災害防止の具体的措置
修了考査の内容と合格基準
2日目の最後に修了考査(筆記・1時間)が実施されます。3科目から均等に出題され、各科目40%以上かつ総合60%以上で合格です。合格率は90%超と高く、講義を集中して受けていれば合格できる内容です。合格者には「足場の組立て等作業主任者技能講習修了証」が交付されます。
難易度・合格の目安
足場の組立て等作業主任者技能講習の修了考査は合格率90%超と高く、2日間の講義を真剣に受ければほぼ合格できます。実質的な難関は「受講資格」です。足場の組立て・解体・変更の業務経験が3年以上なければ受講できません。また特別教育(6時間)は受講資格の代替にもならず、あくまで実務経験が条件です。建設業各社が計画的に育成するケースが多く、入社後一定年数で会社主導で受講する形が一般的です。
キャリアパスと需要
建設業・足場専門工事業で最も需要の高い作業主任者の一つ
足場専門工事会社・建設会社・ゼネコン・塗装会社・外壁工事会社・解体業者が主な就業先です。高さ5m以上の足場は住宅外壁塗装・ビル改修・新築工事・橋梁補修・工場修繕など広範な建設工事で常に使われており、本資格は業界内で最も普及した作業主任者資格の一つです。足場工事の専門家として独立開業するルートもあり、足場組立て・解体の元請け専門工事会社では全作業員への資格取得奨励が一般的です。
型枠支保工の組立て等作業主任者・建築施工管理技士・土木施工管理技士との組み合わせ
足場の組立て等作業主任者と型枠支保工の組立て等作業主任者を組み合わせると、建設工事の仮設工事全般(足場・支保工)の作業主任者として現場を管理できます。2級または1級の建築施工管理技士・土木施工管理技士との組み合わせで施工管理と法定安全管理の両輪を担う現場監督として活躍できます。足場工事業での独立を目指す方は「とび・土工・コンクリート工事業」の建設業許可取得(専任技術者として登録)とセットで取得することも多いです。
豆知識:足場安全の世界
建設業の死亡事故の最大要因が「足場からの墜落」
厚生労働省の統計によると建設業の死亡災害の約4割が「墜落・転落」によるものであり、その多くが足場からの墜落です。特に高さ2〜5mの相対的に「低い」場所での事故が多く、「このくらいの高さなら大丈夫」という慢心が重大事故につながります。足場の組立て等作業主任者は手すりの設置確認・安全帯の着用指示・開口部養生の徹底という3点を日常的に監視し、こうした慢心による事故を防ぐ重要な役割を担います。
「手すり先行工法」が2009年に標準化された背景
2009年(平成21年)の労働安全衛生規則改正で「手すり先行工法」に関する指針が整備されました。手すり先行工法とは、作業床を取り付ける前に手すりを先に設置し(取り付けのときも手すりを先に)、撤去するときは手すりを最後まで残す工法です。従来の「組み立て中・解体中は手すりがない」状態での作業リスクをなくすため導入され、元請け会社は協力会社に対して手すり先行工法の推奨が求められています。
くさび緊結式足場(ビケ足場)が現場を変えた理由
昭和の現場を支えた単管足場(クランプで部材を組み合わせる方法)に対して、くさび緊結式足場(ビケ足場)はコマ(ディスク)にくさびをハンマーで打ち込む方式で、接続精度が高く組立速度が2〜3倍です。住宅・中低層ビルの外壁工事で急速に普及し、現在では建設現場の足場の大部分を占めます。くさび緊結式足場は「枠組み足場の安全基準」ではなく独自の「くさび緊結式足場技術指針」(厚生労働省)が適用されており、作業主任者はこの指針を踏まえた安全管理が求められます。
よくある質問
Q. 足場の特別教育(6時間)を受ければ作業主任者になれますか?
なれません。足場の組立て等特別教育(6時間)は、足場の組立て・解体・変更作業を「行う作業者」に受講が義務付けられている安全衛生教育であり、作業主任者になるための資格ではありません。作業主任者になるためには「足場の組立て等作業主任者技能講習(2日間・14時間)」を修了する必要があります。特別教育は受講資格の代替にもならず、技能講習の受講には実務経験3年以上等の別途の要件が必要です。
Q. 5年ごとの「能力向上教育」は受講しなければなりませんか?
法令上は努力義務であり、受講しなくても資格が失効することはありません。ただし、事業者はおおむね5年ごとに作業主任者を対象とした能力向上教育を実施するよう「努めなければならない」とされています(安衛法第19条の2)。元請け会社・発注者が受講を事実上の条件としている現場もあるため、活躍の幅を広げるためにも積極的に受講することを推奨します。内容は改正された法令・新技術・直近の災害事例等です。
こんな方におすすめ
- 足場の組立て・解体・変更の現場で3年以上の実務経験があり、法定の作業主任者として選任されたい方
- 足場専門工事会社・塗装会社・解体業者で班長・現場監督にステップアップしたい方
- 建設会社・ゼネコンで施工管理の幅を広げ、仮設工事の安全管理を一手に担いたい方
- 型枠支保工の組立て等作業主任者とセットで取得し、建設現場の仮設工事全般を管理できる専門家を目指す方
最新の講習日程・受講料・申込方法の詳細は建設業労働災害防止協会(建災防)または各都道府県の登録機関にお問い合わせください。
