
福祉の現場で、心理学の知識を活かして、支援を必要とする人の心に寄り添う――そんな専門職を認定するのが「福祉心理士」です。「どんな仕事?」「どうやったらなれるの?」と気になる人に向けて、この記事では、福祉心理士の仕事と、なり方に絞って解説します(資格の概要は、記事末のリンク先にまとまっています)。
そもそも福祉心理士とは?
福祉心理士は、日本福祉心理学会が認定する民間資格です。福祉の現場で、心理学の知識を活かして、支援を必要とする人の心に寄り添う専門職を認定します。国家資格ではなく、学会が認定する資格である点に、まず注意しておきましょう。
この資格のいちばんの特徴は、「福祉」と「心理」の、両方の視点を持っていることです。高齢者、障害のある人、子ども、生活に困難を抱える人など、福祉の支援を必要とする人たちに、心理的な側面から寄り添う。介護や福祉の実務と、心の支援とを、橋渡しする立場です。福祉の現場では、身体的なケアや生活の支援だけでなく、「心のケア」も、とても大切になります。福祉心理士は、その心の部分に、専門性をもって関われる人、というわけです。
どんな仕事をする?
福祉心理士は、現場でどんな仕事を担うのでしょうか。学会の説明をもとに、その中身を見てみましょう。
まず、福祉サービスを利用する人の「アセスメント」を行います。アセスメントとは、その人の心理の状態を、専門的に理解し、見立てることです。そのうえで、サービスを利用する本人だけでなく、その家族、さらには、現場で働く職員に対しても、心理的な相談や支援を行います。利用者の気持ちに寄り添い、より良い支援へとつなげていく――それが、福祉心理士の役割です。福祉の現場では、利用者の心の状態を理解することが、適切な支援の第一歩になります。福祉心理士は、その理解を助け、心の面から現場全体を支える存在なのです。介護や福祉の実務に、心理の視点を加えることで、支援の質を高める役割だと言えます。
たとえば、認知症のある高齢者が、なぜ不安そうにしているのか。障害のある人が、どんな気持ちで日々を過ごしているのか。虐待を受けた子どもの心に、どう寄り添えばよいのか。福祉の現場では、こうした「心の声」を読み取ることが、支援の質を大きく左右します。身体のケアや、生活の支援だけでは、その人の本当の困りごとには届かないことがあるのです。福祉心理士は、心理学という土台をもとに、そうした見えにくい部分に光を当てます。また、支援する側の職員も、日々の仕事のなかで、悩みやストレスを抱えることが少なくありません。福祉心理士は、利用者だけでなく、そうした職員の心の支えにもなり得ます。人と人とが関わる福祉の現場だからこそ、心の専門性が生きる場面は、たくさんあるのです。
福祉心理士になるには
では、福祉心理士になるには、どうすればよいのでしょうか。じつは、「試験を受けて合格する」タイプの資格ではありません。
福祉心理士は、試験ではなく、申請による「認定」で取得する資格です。必要な要件を満たしたうえで、書類を学会に提出し、審査を受けて認定されます。主な取得のルートは、大きく2つとされています。目安を、下の表にまとめました。
| ルート | おもな要件(目安) |
|---|---|
| 大学で学ぶ | 大学で指定の科目(合計32単位以上)を修めて卒業 |
| 実務経験を活かす | 福祉施設などで3年以上の実務経験+指定科目の修得 |
一つは、大学で、心理学・福祉心理学・社会福祉学に関する、指定された科目を、合計32単位以上、修めて卒業するルート。もう一つは、福祉の施設などで3年以上の実務経験を積み、大学で必要な科目を修得したうえで、申請するルートです。認定を受けるには、審査料や認定料がかかり、資格を得たあとも、数年ごとに更新の審査を受ける必要があります。「学んだ知識」または「現場の経験」を土台に、申請して認定される――そんな仕組みの資格です。
※ 取得の要件(単位数・実務年数)や、費用、更新の仕組み、種別(福祉心理士のほかに准福祉心理士があるとされます)は、変わることがあり、細部は要確認です。資格の概要は記事末のリンク先(固定ページ)にまとまっています。正確な情報は、日本福祉心理学会の公式案内で確認してください。
関連する国家資格との違い
心理や福祉には、名前の似た資格がいくつもあります。混同しないよう、福祉心理士の位置づけを整理しておきましょう。
心理の分野には「公認心理師」という国家資格があり、福祉の分野には「社会福祉士」「精神保健福祉士」といった国家資格があります。これらはいずれも国家資格です。一方、福祉心理士は民間資格で、「福祉」と「心理」の橋渡しに特化しているのが特徴です。だから、福祉心理士は、これらの国家資格と競い合うというより、組み合わせて活かしたり、福祉の現場で「心理の視点を持っている証」として使ったりする位置づけになります。福祉の仕事をしている人が、心理の学びを深めた証として取得する、というイメージが近いでしょう。それぞれの資格が、どんな役割を持つのかを知っておくと、自分に合った学びの道が見えてきます。
持ち帰り豆知識:”試験がない”資格
資格というと、「試験を受けて、合格して取るもの」というイメージが強いかもしれません。ですが、福祉心理士は、その常識に当てはまりません。この資格には、合否を分ける試験が、ありません。
福祉心理士は、大学で指定の科目を学んで卒業する、あるいは実務経験を積む、といった要件を満たしたうえで、学会に申請し、審査を経て認定される資格です。つまり、「一発勝負の試験」ではなく、「必要な学びや経験を、きちんと積み重ねてきたこと」が認められて、資格になるのです。これは、福祉心理士が、単発の知識を問う資格ではなく、福祉と心理の両分野を、じっくり学んだ人を認定する資格であることの表れとも言えます。試験勉強で追い込む、というより、大学での学びや現場の経験を、そのまま資格につなげていく――そんな性格の資格なのです。
まとめ:福祉と心理を橋渡しする専門職
福祉心理士は、日本福祉心理学会が認定する民間資格で、福祉の現場で、心理学の知識を活かして人の心に寄り添う専門職です。仕事は、利用者のアセスメントや、本人・家族・職員への心理的な相談・支援など。なるには、大学で指定科目(32単位以上)を修めて卒業するか、実務経験を積んで申請し、審査を受けて認定される道があります。試験ではなく、申請による認定制なのが特徴です。
福祉の仕事に、心理の視点を加えたい人にとって、福祉心理士は一つの選択肢になります。ただし、この資格だけで独立できるものではなく、福祉の仕事のなかで活かしていく性格の資格です。まずは、自分が学べる大学の課程や、実務からのルートを調べてみるとよいでしょう。高齢化が進み、福祉の現場で「心のケア」への関心が高まるなか、福祉と心理の両方を学んだ人が担える役割は、これから広がっていくと考えられます。学んだことは、資格の有無にかかわらず、日々の支援のなかで、きっと役に立つはずです。資格の詳しい概要は、下のリンク先(固定ページ)にまとまっています。取得の要件は変わることがあるので、正確な情報は学会の公式案内で確認してください。

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