医療心理士とは?
概要・難易度・キャリアを解説
医療心理士(認定医療心理士)の概要
医療心理士とは、一般社団法人日本心身医学会が認定する民間資格「認定医療心理士」の通称です。心身症やストレス関連疾患など、心と体の両面から患者を支える医療現場において、心理職としての専門性を第三者機関が公式に認めるための資格として位置づけられています。
※ 心身症とは、ストレスなど心理的な要因が体の症状として現れる病気の総称です。胃潰瘍や気管支喘息などが代表例とされています。
主催団体は一般社団法人日本心身医学会
認定医療心理士を運営しているのは、1959年に設立された一般社団法人日本心身医学会です。心身医学という、体の病気を心理面からもケアする学問領域を専門とする学術団体で、医師だけでなく心理職・看護職など多職種が参加しています。この学会が「心理職としての実務・研究実績を積んだ人材」を審査・認定する制度として、認定医療心理士を設けています。
「学会型資格」という独特の性格
医療心理士の大きな特徴は、単なる知識試験ではなく「学会活動そのものへの参加実績」が審査対象になる点です。学会員としての在籍期間、学術発表の実績、論文の提出まで求められるため、資格取得のプロセス自体が学会活動と一体化しています。このようなタイプの資格は、しばしば「学会型資格」と呼ばれます。
※ 学会型資格とは、学会への所属年数や学術発表・論文などの活動実績が認定の条件に組み込まれているタイプの資格です。合否が一発の試験だけで決まる資格とは性質が異なります。
同名の「日本医療心理士学会」とは別の資格です
ここで注意したいのが、「医療心理士」という同じ名称の資格を発行する団体が他にも存在するという点です。日本学術会議の指定を受けていない「日本医療心理士学会」という別団体が、同名の「医療心理士」資格を独自に発行しています。この記事で解説しているのは、あくまで一般社団法人日本心身医学会が認定する「認定医療心理士」であり、両者はまったく別の資格・別の主催団体です。求人票や紹介記事で「医療心理士」という名前だけを見た場合、どちらの資格を指しているのか必ず確認する必要があります。
難易度・取得要件の目安
受験資格のハードル
受験するには、公認心理師の登録者もしくは受験資格取得者であること、または心理学系の大学・大学院を卒業し指定科目を履修していることが前提となります。そのうえで、常勤なら2年以上、非常勤なら週15時間以上の勤務を3年以上続けた臨床研修の実績が必要です。
※ 公認心理師とは、2017年に誕生した心理職唯一の国家資格です。医療・福祉・教育など幅広い分野で心理支援を行う専門職として認められています。
学会員としての活動実績も必須
臨床経験だけでは足りず、日本心身医学会の会員として2年以上の在籍実績、学術発表1回以上、論文1編以上の提出も求められます。ここが一般的な資格試験と大きく異なる点で、日々の臨床業務と並行して学会活動にも継続的に取り組んでいる人でなければ、そもそも受験の土俵に立てません。
審査は書類・筆記・面接の三段階
審査は書類審査、筆記試験、面接試験という3つの段階で構成されています。具体的な科目数や試験時間、問題数は公開されていませんが、臨床経験と学術活動の両方を積み上げたうえで臨む最終関門という位置づけです。受験料は11,000円(税込)、合格後にはさらに認定料11,000円(税込)が必要になります。試験は年1回程度の実施で、直近では第22回が2026年2月8日に予定されています。
取得後に活かせる仕事・関連する職種
心療内科・精神科の心理職
心療内科や精神科で働く公認心理師・臨床心理士にとって、認定医療心理士は「心身医学の専門知識を持つ心理職」であることを示す上乗せの証となります。ストレス性の胃腸症状や自律神経の乱れなど、体の症状と心の問題が絡み合う患者を担当する場面で、この資格の専門性が説得力を持ちます。
総合病院のリエゾンチーム担当者
がん治療や難病治療を行う総合病院では、身体科の医師と連携しながら患者の心のケアを行う「リエゾンチーム」が組織されることがあります。こうしたチーム医療の現場で、心身両面の知識を備えた医療心理士は、医師や看護師との橋渡し役として重宝されます。
※ リエゾンとは「橋渡し・連携」を意味するフランス語由来の言葉で、医療現場では診療科をまたいだ連携のことを指します。
大学病院・研究機関での心身医学研究者
認定過程で学術発表や論文提出が求められるため、資格取得者はそのまま心身医学分野の研究者としてのキャリアにもつながりやすい立場にあります。大学病院や研究機関で心身相関のメカニズムを研究しながら、臨床にも携わるという働き方をしている取得者も少なくありません。
誕生の背景・歴史
1959年:日本心身医学会の設立
日本心身医学会が設立されたのは1959年のことです。当時、体の病気を診る医学と心を診る心理学は別々の学問として扱われることが多く、両者を橋渡しする「心身医学」という考え方はまだ新しいものでした。学会は、ストレスが体に及ぼす影響を科学的に研究し、治療に応用するための土台として発足しました。
公認心理師誕生後:認定制度の位置づけの変化
2017年に公認心理師という国家資格が誕生したことで、心理職の土台となる資格は整備されました。しかしそれは「心理職として働くための基礎資格」であり、心身医学という特定分野の専門性まではカバーしていません。そこで、日本心身医学会の認定医療心理士は、公認心理師という国家資格の先にある専門性の証明として、独自の役割を担い続けています。
どんな人が、どんな目的で取得しているのか
心療内科でキャリアを積む公認心理師
心療内科や精神科で数年間の臨床経験を積んだ公認心理師が、自分の専門性を対外的に示すために取得を目指すケースが多く見られます。学会活動を続けながら実務経験を積み重ね、満を持して受験に臨むという流れが一般的です。
研究と臨床を両立させたい心理職
学会発表や論文執筆といったアカデミックな活動に前向きな心理職も、この資格を目標に据えることがあります。臨床の現場だけでなく、学術的な発信も自分のキャリアの一部にしたいと考える人にとって、認定過程そのものがキャリア形成の後押しになります。
チーム医療での専門性を明確にしたい人
医師・看護師・薬剤師など多職種と連携するチーム医療の現場で、自分の専門領域を明確に示したいという動機で取得する人もいます。肩書きとして「心身医学の専門知識を持つ心理職」であることを示せる点が、チーム内での役割分担を円滑にすると考えられています。
豆知識:医療心理士の希少性と混同注意
全国にわずか92名(2010年時点)
認定医療心理士は、2010年時点で全国にわずか92名しか認定者がいなかったとされる非常に希少な資格です。同じ心理系の資格でも、臨床心理士や公認心理師が数万人規模の登録者を抱えているのと比べると、その数の少なさが際立ちます。受験資格そのものが「臨床経験+学会活動実績」という高いハードルで絞り込まれているため、必然的に取得者数が少なくなる構造になっています。
「医療心理士」という名前は2つの団体が使っている
すでに触れたとおり、「医療心理士」という名称は、日本学術会議の指定を受けていない「日本医療心理士学会」という別団体からも発行されています。この記事で扱っている一般社団法人日本心身医学会の「認定医療心理士」とは、主催団体も認定プロセスも異なる、まったく別の資格です。名前だけで資格を判断すると混同しやすいため、履歴書や職務経歴書で目にした際は、どちらの団体が発行したものかを必ず確認することが大切です。
まとめ ― 希少性と専門性を兼ね備えた学会型資格
こんな方にとくにおすすめ
- 心療内科・精神科ですでに臨床経験を積んでいる公認心理師・臨床心理士
- 学会活動や学術発表にも積極的に取り組みたい心理職
- チーム医療の現場で心身医学の専門性を明確に示したい人
取得に向けた第一歩
まずは公認心理師や臨床心理士として臨床経験を積みながら、一般社団法人日本心身医学会に入会し、学会活動に参加することが第一歩になります。学術発表や論文執筆の機会を意識的に作り、2年以上の会員歴と実務経験を積み重ねたうえで、受験に臨む流れが基本です。関連資格としては、公認心理師(国家資格)・臨床心理士・精神保健福祉士・思春期保健相談士などがあり、これらを土台にしてキャリアを積み上げていくとよいでしょう。
公式サイト:日本心身医学会(認定医療心理士)
