コンクリート造の工作物の解体等作業主任者とは?
労働安全衛生法に基づく国家資格(技能講習)をわかりやすく解説
コンクリート造の工作物の解体等作業主任者の概要
コンクリート造の工作物の解体等作業主任者は、労働安全衛生法第14条・施行令第6条第21号に基づき、高さ5m以上のコンクリート造の工作物(建築物・橋梁・護岸・ダム・煙突・サイロ等)の解体または破壊作業を行う事業場に選任が義務付けられる国家資格(技能講習修了証)です。建設業労働災害防止協会(建災防)等の登録機関が実施する2日間・14時間の技能講習を修了し、修了考査に合格することで取得できます。受講には「満18歳以後に解体作業3年以上の実務経験」等の受講資格が必要です。
※ 石綿(アスベスト)含有建材がある場合は別途「石綿作業主任者」が必要:コンクリート造建築物の解体工事では、石綿含有建材(吹付けアスベスト・石綿スレート板等)が使用されている場合に「石綿作業主任者技能講習」を修了した作業主任者を別途選任する義務があります(石綿障害予防規則第19条)。2022年の法改正でアスベスト事前調査の記録・報告が厳格化されており、解体工事業者はコンクリート造解体作業主任者とは別に石綿作業主任者の選任体制も整備する必要があります。
選任が必要な作業と作業主任者の職務
高さ5m以上のコンクリート造の工作物の解体または破壊作業(建築物・橋梁・護岸・ダム・擁壁・煙突・サイロ・水槽等)に作業主任者の選任が義務付けられます(安衛則第517条の17)。作業主任者の職務は作業の方法および労働者の配置を決定し直接指揮すること・器具・工具・安全帯等の点検・解体物の飛来落下防止措置の確認・粉じん対策(散水・呼吸用保護具)の実施確認です。
基本情報の早見表
| 取得方法 | 技能講習(2日間・14時間)+修了考査(筆記)合格 |
|---|---|
| 講習科目 | ①作業の方法に関する知識②工事用設備・機械・器具に関する知識③作業環境に関する知識④作業者教育の知識⑤関係法令⑥修了考査 |
| 合格基準 | 各科目40%以上かつ総合60%以上(慣例。公式非公開) |
| 受講資格 | ①満18歳以後に解体作業3年以上従事②土木・建築系大学等卒業後2年以上の解体業務経験 |
| 受講料 | 約15,000円(建災防基準:受講料12,530円+テキスト2,475円) |
| 有効期限 | なし(終身有効・更新不要) |
| 選任対象 | 高さ5m以上のコンクリート造の工作物の解体または破壊作業 |
| 主催 | 建設業労働災害防止協会(建災防)および都道府県の登録機関 |
講習内容を詳しく
2日間・14時間の科目詳細
技能講習は2日間14時間のカリキュラムで、5科目の講義と修了考査で構成されます。
- 作業の方法に関する知識:解体工法の種類(ブレーカー工法・圧砕工法・爆破工法・転倒工法・切断工法)・各工法の特徴と適用条件・解体計画書の作成(解体手順・作業区画の設定・立入禁止区域の設定)・コンクリート造物の強度・配筋の確認方法・解体時の倒壊防止措置・飛来落下防止・搬出計画
- 工事用設備・機械・器具に関する知識:油圧ブレーカー(解体ハンマー)・大型破砕機(コンクリートクラッシャー・鉄骨カッター)・ロングリーチアーム機の特性と取扱い・クレーン(解体材の搬出吊り)・鉄筋カッター・酸素アセチレン切断機・解体廃棄物(コンクリートガラ・鉄筋スクラップ)の分別・搬出
- 作業環境に関する知識:粉じん対策(散水・防じんマスク・大型散水車)・騒音・振動の管理(発生抑制・防音壁・測定)・倒壊物の飛来物対策(防護ネット・鋼板養生)・近隣への安全距離の確保・土壌汚染・地下水汚染のリスク管理・夜間照明基準
- 作業者教育の知識:解体工事特有の危険予知活動(KY活動)・新規入場者教育の内容・ツールボックスミーティングの実施方法・重機との接触防止(立入禁止区域の周知)・ヒヤリハット報告制度の活用
- 関係法令:施行令第6条第21号・安衛則第517条の14〜18(コンクリート造工作物の解体の安全基準)・廃棄物処理法(産業廃棄物としての解体廃材の管理・マニフェスト)・建設リサイクル法(特定建設資材の分別解体義務)・石綿障害予防規則との関係・作業主任者の職務と選任義務
修了考査の内容と合格基準
2日目の最後に修了考査(筆記)が実施されます。5科目から均等に出題され、各科目40%以上かつ総合60%以上で合格です。合格率は非常に高く、2日間の講義を集中受講すれば問題なく合格できます。合格者には「コンクリート造の工作物の解体等作業主任者技能講習修了証」が交付されます。
難易度・合格の目安
コンクリート造の工作物の解体等作業主任者の修了考査は合格率が非常に高く、2日間の講義を集中して受けていれば合格できる内容です。実質的な難関は「受講資格」であり、解体業務経験3年以上が必要です。また解体工事は石綿対策・廃棄物分別・近隣騒音・粉じん管理など法令が複数にまたがるため、本資格取得後も石綿作業主任者技能講習・産業廃棄物適正処理の知識を合わせて習得することが実務で必要になります。
キャリアパスと需要
解体工事業・建設リサイクル業で欠かせない資格
解体工事専門業者・総合解体会社・ゼネコンの解体部門・産業廃棄物処理業者が主な就業先です。老朽化した建築物(住宅・ビル・工場・橋梁)の解体工事は今後20〜30年にわたって大量に発生することが確実で、解体業界の需要は高水準を維持します。解体工事業の登録(建設業法)や建設業許可(解体工事業)の専任技術者として登録できる資格要件の一つにもなっており、会社の事業基盤強化にも直結する重要な資格です。
石綿作業主任者・建設リサイクル法対応との組み合わせ
解体工事では本資格に加え、「石綿作業主任者技能講習」の修了者の選任が石綿含有建材がある場合に必須です。また「特定解体工事元請業者」には建設リサイクル法に基づく説明・書面交付義務があります。産業廃棄物管理・マニフェスト管理の知識も現場では不可欠です。本資格を「入口」として石綿・廃棄物・建設リサイクルの法令知識を体系的に習得することで、解体工事の責任者・監理者として高い専門性を発揮できます。
豆知識:解体工事の安全管理
「高さ5m以上」が選任基準になった理由
コンクリート造建物の解体では、壁・柱・梁の崩落が想定外の方向に飛散するリスクがあります。高さ5m以上の構造物を解体する場合、崩落物の運動エネルギーが格段に大きくなるため、専門的な知識を持つ作業主任者による作業方法の決定と指揮が不可欠です。解体計画書(解体手順・重機の配置・安全距離の設定)を適切に作成し、計画に沿って安全に解体を進める責任を作業主任者が担います。
「建設リサイクル法」で分別解体が義務化された背景
建設リサイクル法(建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律・2002年施行)により、一定規模以上の解体工事ではコンクリートガラ・廃木材・金属くず等の「特定建設資材」を分別解体・リサイクルすることが義務付けられました。以前は「混合廃棄物」として一括廃棄されていた建設廃材の再資源化率が大幅に向上し、現在は解体コンクリートの90%以上が再生砕石・路盤材として再利用されています。作業主任者はこの分別解体計画の実施監理も担います。
解体工事での「石綿(アスベスト)問題」はなぜ深刻か
石綿(アスベスト)は1975年以前に吹付け断熱材として広く使用され、1975〜2004年頃まで石綿スレートや接着剤に含まれ使われていました。解体時に飛散した石綿繊維を吸入すると数十年後に中皮腫・肺がんを発症するリスクがあります。2022年の大気汚染防止法改正・石綿障害予防規則改正で、解体工事前の石綿含有建材の「事前調査」「調査結果の記録・報告(都道府県への届出)」が厳格化されました。コンクリート造解体作業主任者は、石綿作業主任者と連携してアスベストリスクゼロの現場管理を実現します。
よくある質問
Q. 建築物だけでなく橋梁・ダムの解体でも同じ資格が使えますか?
はい、使えます。「コンクリート造の工作物」には建築物に限らず橋梁・ダム・護岸・擁壁・煙突・サイロ・水槽・基礎など高さ5m以上のコンクリート製構造物全般が含まれます。構造物の用途・種別ではなく「高さ5m以上のコンクリート造」という材質と高さが選任基準です。インフラ老朽化対策の進展により、橋梁・ダム・護岸の解体工事でも本資格保有者のニーズが増加しています。
Q. 解体工事業の登録・建設業許可に本資格は必要ですか?
建設業法に基づく解体工事業の許可(一般・特定)を取得する際の「専任技術者」の要件の一つとして、本技能講習修了証(実務経験と組み合わせ)が認められる場合があります。なお解体工事業の専任技術者は本資格以外にも建築施工管理技士(1級・2級)・一定の実務経験等でも対応できます。具体的な要件は都道府県・地方整備局の建設業課にご確認ください。
こんな方におすすめ
- 解体工事会社・総合建設会社の解体部門で3年以上の実務経験があり、法定の作業主任者として現場を管理したい方
- 老朽化建築物・インフラ(橋梁・ダム・護岸)の解体需要拡大を見据え、解体専門家としてのキャリアを築きたい方
- 解体工事業の建設業許可取得に向けて、専任技術者の要件を満たすために資格取得を検討している方
- 石綿作業主任者とセットで取得し、解体工事の法令対応・安全管理を一手に担うスペシャリストを目指す方
最新の講習日程・受講料・申込方法の詳細は建設業労働災害防止協会(建災防)または各都道府県の登録機関にお問い合わせください。
