石綿作業主任者について

筆記試験誰でも受験可
国家資格

石綿作業主任者とは?

労働安全衛生法に基づく国家資格(技能講習)をわかりやすく解説

スポンサーリンク

石綿作業主任者の概要

石綿作業主任者は、労働安全衛生法第14条・施行令第6条第23号・石綿障害予防規則第19条に基づき、石綿(アスベスト)等を含む製品の製造・石綿が使用された建築物等の解体・改修・封じ込め・囲い込みの作業を行う事業場に選任が義務付けられる国家資格(技能講習修了証)です。建設業労働災害防止協会(建災防)・各都道府県の労働基準協会等の登録機関が実施する2日間・約10時間の技能講習を修了し、修了考査に合格することで取得できます。学歴・実務経験の制限はなく、18歳以上であれば誰でも受講できます。

2022年大気汚染防止法改正で石綿管理が大幅強化:2022年4月施行の大気汚染防止法改正により、建築物・工作物の解体工事前に「石綿含有建材の事前調査」「調査結果の記録・都道府県知事への事前届出」が義務化されました。さらに2023年10月からは「石綿含有みなし規定」が拡大され、建材の成分が確認できない場合は原則として石綿含有として扱うことが義務付けられています。石綿作業主任者の需要・重要性は年々高まっています。

選任が必要な作業と作業主任者の職務

石綿等を含む製品の製造作業・石綿含有建材(吹付け石綿・石綿スレート板・石綿保温材等)が使用された建築物等の解体・改修・封じ込め・囲い込みの作業に作業主任者の選任が義務付けられます(石綿障害予防規則第19条)。作業主任者の職務は作業の方法の決定・指揮・安全帯・呼吸用保護具(防じんマスク・電動ファン付き呼吸用保護具)の使用状況の監視・作業場所の隔離状態の確認・石綿飛散防止措置の実施です。

基本情報の早見表

取得方法技能講習(2日間・約10時間)+修了考査(筆記)合格
講習科目①石綿の健康障害・予防措置の知識(4h)②石綿障害予防規則・関係法令(2h)③石綿作業の健康管理(2h)④工学的対策・保護具の使用方法(2h)⑤修了考査
合格基準各科目40%以上かつ総合60%以上
受講資格18歳以上(学歴・実務経験等の制限なし・誰でも受講可)
受講料約15,290円(2026年4月〜。機関・地域により差あり)
有効期限なし(終身有効・更新不要)
選任対象石綿含有建材の解体・改修・封じ込め・囲い込み作業および石綿等を含む製品の製造作業
主催建設業労働災害防止協会(建災防)・都道府県労働基準協会・中央労働災害防止協会(中災防)等

講習内容を詳しく

2日間・約10時間の科目詳細

技能講習は2日間約10時間のカリキュラムで、石綿の健康被害・石綿含有建材の種類と判定方法・安全な解体手順・保護具の使用・石綿障害予防規則の法令知識を体系的に学びます。2022年以降の法改正を反映した最新の事前調査義務・報告義務の内容も含まれます。

  • 石綿の健康障害・予防措置の知識(4時間):石綿の種類(クリソタイル・アモサイト・クロシドライト等6種)と用途・石綿繊維が肺に到達するまでのメカニズム・石綿による健康障害(石綿肺・肺がん・中皮腫・良性石綿胸水)と潜伏期間(10〜50年)・石綿含有建材の種類(吹付け石綿・石綿スレート・石綿保温材・石綿ビニル床タイル等)・レベル分類(レベル1〜3)・石綿含有建材の判定方法(目視調査・サンプリング分析)・事前調査の手順と記録・報告義務
  • 石綿障害予防規則・関係法令(2時間):石綿障害予防規則(石綿則)の全体構成・作業主任者の選任義務(第19条)・作業主任者の職務(第20条)・石綿等の使用禁止(石綿則第3条)・事前調査(第3条の2以降)・都道府県知事への事前届出・大気汚染防止法(2022年改正内容)・廃棄物処理法(石綿含有廃棄物の管理型処分場処理義務)・健康管理(特殊健康診断の実施義務)
  • 石綿作業の健康管理(2時間):石綿取扱い作業従事者の特殊健康診断(採用時・定期・離職時)の内容・石綿健康診断の胸部X線撮影と読影のポイント・石綿ばく露歴の記録と保存(40年間保存義務)・石綿による職業性がん(中皮腫)の補償制度(労災・石綿救済法)・健康管理手帳制度の概要
  • 工学的対策・保護具の使用方法(3時間):作業場所の区画・隔離(グローブバッグ・養生テント・負圧テント)の設置方法・湿潤化処理と飛散抑制剤の使用・局所排気装置・HEPAフィルター付き集じん機の運用・石綿飛散防止措置の実施と確認・呼吸用保護具の種類(防じんマスク・電動ファン付き・送気マスク)の選択と装着確認・保護衣(使い捨て不織布つなぎ)の着脱手順・廃棄物(石綿含有建材・保護具)の飛散防止処理と梱包

修了考査の内容と合格基準

2日目の最後に修了考査(筆記)が実施されます。各科目40%以上かつ総合60%以上で合格です。合格率は非常に高く、2日間の講義を集中して受講すれば問題なく合格できます。合格者には「石綿作業主任者技能講習修了証」が交付されます。

難易度・合格の目安

★★☆☆☆ 修了考査合格率は95%超。受講資格の制限がなく誰でも受講可能。2日間の講義内容(石綿の健康被害・石綿則の法令・保護具の選び方)を押さえれば十分合格できる。法改正内容に注意。

石綿作業主任者の修了考査は合格率が非常に高く、2日間の講義を受ければほぼ全員が合格できます。受講資格に制限がなく18歳以上であれば誰でも受講できる点が他の作業主任者と大きく異なります。建設業・解体業に限らず、工場内の石綿含有設備の解体を行うプラント業・製鉄会社・化学メーカー等でも必要とされます。石綿則の改正内容が毎年のように更新されるため、法令科目の最新動向に目を向けることが重要です。

修了考査合格率:受講者のほぼ全員が合格。石綿の健康障害(中皮腫・肺がんの潜伏期間)・レベル分類(1〜3)・保護具の種類・事前調査の義務を押さえれば十分。2022年改正内容も出題に注意。

キャリアパスと需要

解体業・改修工事業・製造業で急増する需要

解体工事専門業者・総合建設会社の解体部門・改修工事会社・プラント解体会社・石綿含有設備(ボイラー・配管保温材)を扱う工場が主な就業先です。1975年以前の建物や設備には石綿含有建材が高頻度で使用されており、これらが解体・改修される量は今後20〜30年にわたって増加します。大気汚染防止法の強化(2022年〜)で事業者の法令対応ニーズが高まり、石綿作業主任者の需要は急増しています。

コンクリート造解体等作業主任者・石綿調査者との組み合わせ

石綿作業主任者と「コンクリート造の工作物の解体等作業主任者」を合わせて取得することで、建築物の解体工事における石綿対策(石綿作業主任者)と構造体の解体指揮(コンクリート造解体等作業主任者)の両方を一人で担える解体工事の総合専門家として評価されます。さらに「石綿含有建材調査者」(国土交通省・環境省が定める民間資格)を取得すると事前調査の有資格者として建物調査から解体まで一貫して担える専門家になれます。

豆知識:アスベスト問題の深層

「奇跡の繊維」から「静かな時限爆弾」へ

石綿(アスベスト)は天然の繊維状鉱物で、1μm以下の細い繊維が数十万本に割れる性質を持ちます。耐火性・断熱性・防音性・耐久性に優れ「奇跡の繊維」と呼ばれ、1950〜70年代に建築材料・断熱材・摩擦材として世界中で大量使用されました。しかし石綿繊維を吸入すると肺の奥に刺さったまま排出されず10〜50年後に中皮腫・肺がんを発症させることが判明。日本では2006年に石綿の製造・使用が全面禁止されましたが、既存の建物・設備にはまだ多量の石綿が残存しています。

「石綿ハザードマップ」と解体工事の未来

環境省・国土交通省は建物の建設年代と石綿含有リスクを地域別に把握する「石綿ハザードマップ」の整備を進めています。1975年以前建設の建物は「吹付け石綿」含有リスクが最も高く、1975〜90年代建設の建物にも石綿スレート・石綿含有シーリング材・ビニル床タイル等が多く残存します。2025〜2035年頃に戦後から高度成長期の建物の大量解体時代が来ると予測され、石綿作業主任者・石綿含有建材調査者の需要は今後急増する見込みです。

「中皮腫」の恐ろしさと患者支援制度

悪性中皮腫は石綿繊維の吸入が主因で発症するがんで、胸膜・腹膜・心膜を覆う中皮細胞から発生します。発症から確認までの潜伏期間が20〜50年と非常に長く、若い頃に石綿を吸った人が高齢になってから発症します。日本では毎年約1,500人が悪性中皮腫で死亡しています。2006年制定の「石綿健康被害救済法(アスベスト救済法)」により、患者・遺族への医療費・療養手当・特別遺族弔慰金等の給付が行われており、石綿作業主任者の業務が法令に基づく健康被害防止の最前線を担います。

よくある質問

Q. 石綿が含まれているか不明な建物の解体でも必要ですか?

はい、2023年10月から施行された「石綿含有みなし規定」により、建材の石綿含有が不明な場合は石綿含有として扱うことが義務付けられています。つまり石綿が「含まれていないことが確認された」建材以外は石綿含有として解体作業を行う必要があり、石綿作業主任者の選任が必要になります。なお「石綿が含まれていないことの確認」は、分析調査(JIS A 1481に基づく蛍光X線分析・偏光顕微鏡法等)による証明が必要です。

Q. 解体工事だけでなく改修工事でも選任が必要ですか?

はい、解体だけでなく「改修工事(リフォーム)」でも石綿含有建材を切断・破砕・研磨・除去する作業が発生する場合は石綿作業主任者の選任が必要です。具体的には石綿含有の外壁材(石綿スレート)の張り替え・天井材(石綿テックス)の撤去・床材(ビニル床タイル)の剥がし取り・内装の吹付け材の除去等が対象です。マンション・住宅のリフォーム工事でも頻繁に発生するため、改修工事専門の会社でも本資格保有者の確保が急務です。

こんな方におすすめ

  • 解体工事会社・改修工事会社・プラント解体会社で石綿含有建材を扱う作業の安全管理責任者を目指す方(受講資格不要で挑戦しやすい)
  • 建設業の安全衛生担当者として、石綿関係法令(石綿障害予防規則・大気汚染防止法)への対応体制を強化したい方
  • 石綿含有建材調査者・コンクリート造解体等作業主任者と組み合わせて、解体工事の法令対応から現場管理まで包括的に担える専門家を目指す方
  • 製造業・プラント業で石綿含有保温材・断熱材の撤去・改修工事を担当する現場責任者を目指す方

最新の講習日程・受講料・申込方法の詳細は建設業労働災害防止協会(建災防)または各都道府県の労働基準協会にお問い合わせください。

公式サイト:建設業労働災害防止協会(建災防)石綿作業主任者技能講習