
マンション管理にかかわる国家資格に「マンション管理士」と「管理業務主任者」があります。名前がよく似ていて、試験範囲もほとんど重なるため、「この2つ、いったい何が違うの?」と混乱する人はとても多いはずです。じつはこの2つの資格、立場が正反対という、なかなか面白い関係にあります。この記事では、その違いをやさしく整理し、自分がどちらを(あるいは両方を)目指すべきかを判断できるように解説します。
ひと目でわかる:立場が正反対
まず、いちばん大事な違いを、下の表にまとめました。
| マンション管理士 | 管理業務主任者 | |
|---|---|---|
| 立場 | 管理組合(住む人)側の相談役 | 管理会社(業者)側の必置資格 |
| 独占業務 | なし(名称独占のみ) | あり(重要事項説明など) |
| 設置義務 | なし | あり |
| 合格率の目安 | 8〜10%(難関) | 20%前後 |
同じマンション管理の資格でありながら、片方は住む人の味方、もう片方は管理会社の側。この立場の違いが、独占業務の有無や設置義務、難易度の差といった、すべての違いにつながっています。順に見ていきましょう。
マンション管理士:住民(管理組合)側の相談役

マンション管理士は、マンションの管理組合、つまり住民側の立場に立ってコンサルティングを行う国家資格です。管理規約の見直し、大規模修繕の計画、住民間のトラブル、管理会社との交渉支援など、住む人の困りごとに専門家として寄り添います。
※ 管理組合とは、分譲マンションの区分所有者(住戸を所有する人)全員で構成される、建物を管理・運営するための団体のこと。マンション管理士は、この管理組合を支える立場です。
ただし、注意したい点があります。マンション管理士は「名称独占」の資格で、独占業務はありません。つまり、資格がないと名乗れないだけで、コンサルティング業務そのものは資格がなくてもできるのです。合格率は8〜10%前後と難関で、後で触れる「不動産三冠資格」のなかでも最も難しいとされます。それだけに、住民側の頼れる専門家として、高い信頼につながる資格です。
管理業務主任者:管理会社に必要な資格

管理業務主任者は、マンション管理会社に所属し、会社の立場から管理組合に対応する国家資格です。マンション管理士とは反対に、業者側の資格だと考えると分かりやすいでしょう。
こちらには、有資格者でなければできない独占業務があります。管理を委託する契約の重要事項の説明や、その書面への記名、管理事務の報告などです。さらに、マンション管理会社は、一定数の管理組合ごとに専任の管理業務主任者を事務所に置く設置義務があります。つまり、管理会社には常に一定の需要があるということ。合格率は20%前後で、マンション管理士より手が届きやすく、就職や実務に直結しやすい資格です。
この「設置義務がある」という点は、就職やキャリアを考えるうえでとても重要です。法律で置くことが決められている以上、管理会社は資格保有者を確保し続けなければなりません。だからこそ、管理業務主任者は求人ニーズが安定しており、資格を取れば実務にすぐ生かせます。マンション管理士が独立コンサル向けの色合いが強いのに対し、管理業務主任者は「会社に就職して働く」ことに直結する、実利の大きい資格だと言えます。
同じ年に生まれ、試験範囲が重なる
この2つの資格は、じつは2000年に成立したマンション管理適正化法によって、同時に生まれた「双子」のような関係です。だからこそ、試験範囲も7〜8割が重なっています。
この重なりは、受験する側には大きな利点になります。片方の勉強が、そのままもう片方の対策にもなるからです。さらに、片方の資格に合格していると、もう片方の試験で一部の問題が免除される制度もあります(免除の内容は年度によって異なるため、受験の際は最新の実施要領で確認しましょう)。試験の時期も近いため、同じ年に両方をまとめて狙う「ダブル受験」が定番の攻略法になっています。
効率よく進めるなら、まず合格率の高い管理業務主任者で足場を作り、翌年に難関のマンション管理士へ挑む、という順番もよく選ばれます。あるいは、思い切って同じ年に両方を受けてしまう手もあります。どちらにしても、7〜8割が重なる試験範囲を一度に固められるのは大きな強み。学習の労力を二重に払わずに、2つの国家資格を手にできるのは、この2資格ならではのお得なポイントです。
「賃貸不動産経営管理士」とはどう違う?
マンション管理の資格を調べていると、「賃貸不動産経営管理士」も目に入るかもしれません。混同しやすいので、住み分けを押さえておきましょう。
ポイントは、対象とする物件です。管理業務主任者が分譲マンション(区分所有・管理組合が対象)の管理会社向けなのに対し、賃貸不動産経営管理士は賃貸物件の管理向けの資格です。2021年に国家資格化された、比較的新しい資格でもあります。分譲マンションの管理を目指すなら管理業務主任者、賃貸管理の道に進むなら賃貸不動産経営管理士、と対象物件で選ぶのが基本です。
どっちを取る?
2つの資格は、目指す働き方で選び分けられます。
- マンション管理会社に就職・転職したい→まず管理業務主任者(設置義務があり求人が安定、合格率も現実的)
- 独立コンサルや、住民(管理組合)側の支援をしたい→マンション管理士
ただし、マンション管理士は独占業務がないぶん、実際には宅建士など他の資格や実績と組み合わせて力を発揮する場面が多い資格です。迷ったら、両方を取るのが有力な選択肢。試験範囲が重なり、相互に問題免除もあるので、同時期にまとめて狙えば効率よく、キャリアの幅も広がります。
持ち帰り豆知識:「不動産三冠資格」の一角
マンション管理士は、宅地建物取引士(宅建士)、管理業務主任者と並んで「不動産三冠資格」と呼ばれることがあります。この3つをすべて取得すると、不動産の売買から管理まで幅広くカバーできる、というわけです。
そのなかでも、マンション管理士は最難関とされています。独占業務がないにもかかわらず難易度が高いのは、住民側に立って幅広い問題を解決する、高度な専門性が求められるからでしょう。3つの資格は範囲が重なる部分も多く、段階的に取得していく人も少なくありません。一つひとつの資格の位置づけを知ると、不動産の資格全体の地図が見えてきます。
まとめ:立場の違いから、すべてが分かれる
マンション管理士は住民側の相談役で独占業務なし、管理業務主任者は管理会社側の必置資格で独占業務あり。同じ年に生まれ試験範囲は重なりますが、「どちらの立場に立つか」という一点から、すべての違いが枝分かれしています。
最初の一歩は、自分が「管理会社で働きたいのか」「住民側を支えたいのか」を考えること。就職を重視するなら合格率の高い管理業務主任者から、幅広く力をつけたいなら両方をまとめて、と方針が決まれば、あとは重なった試験範囲を効率よく攻略していくだけです。マンションは全国で増え続けており、その管理を担う人材の需要は今後も安定して見込めます。腰を据えて取り組む価値のある、実利の大きい資格分野だと言えるでしょう。
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