テクニカルイラストレーション技能士について

実技試験あり筆記試験実務経験・学歴が必要
国家資格

テクニカルイラストレーション技能士とは?

1〜3級・手書き/CAD作業の国家技能検定をわかりやすく解説

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テクニカルイラストレーション技能士の概要

テクニカルイラストレーション技能士は、製品の取扱説明書・パーツカタログ・特許図などに使われる立体図(等角投影図)を作成する技能を国が認定する国家資格です。職業能力開発促進法に基づく「技能検定」の一職種で、中央職業能力開発協会(JAVADA)が問題を作成し、都道府県職業能力開発協会が実施します。マニュアル制作会社・テクニカルイラスト専門会社・特許事務所で活躍する専門家の証明となる資格です。

テクニカルイラストレーションとは、製品や機械の構造・操作手順を、言語に依存せず直感的に伝えるための立体的な技術図を制作する専門技術です。取扱説明書・パーツカタログ・組立説明図・特許図がその代表例です。主に「等角投影図(アイソメトリック図)」と呼ばれる、3方向の軸が120度に開く立体図法が使われます。

2つの作業区分

作業区分は2つで、自分の業務に合った区分を選んで受検します(3級は区分共通)。

  • テクニカルイラストレーション手書き作業(1〜2級):トレーシングペーパーに楕円テンプレート・アイソメトリックスケールを用いて手書きで作図
  • テクニカルイラストレーションCAD作業(1〜2級):IllustratorなどのCADソフトを使って作図しA3用紙にプリントアウト
  • テクニカルイラストレーション作業(3級):手書き・CAD共通の初級課題

基本情報の早見表

主催中央職業能力開発協会(JAVADA)が問題作成、都道府県職業能力開発協会が実施
等級1級・2級・3級
作業区分手書き作業/CAD作業(1〜2級)/テクニカルイラストレーション作業(3級)
受検資格3級=実務不問(在学中可)/2級=実務2年以上/1級=実務7年以上(または2級合格後2年以上)。学歴・養成施設の修了で短縮
試験形式学科試験(1・2級=真偽法25問+多肢択一25問 / 3級=真偽法30問)+実技試験(立体図作成)
試験時間実技:1級4時間30分 / 2級3時間30分 / 3級2時間
合格基準学科65点以上・実技60点以上(各100点満点)
実施時期前期・後期の年2回
受検料標準=学科3,100円+実技18,200円(都道府県により異なる。若年者減免あり)

試験内容を詳しく

学科試験の出題範囲

製図・立体図法・機械一般・材料の知識が出題されます。

  • 製図:第三角法・第一角法の投影図・断面図の種類・寸法記入法・JIS規格(JIS B 0001)の基礎
  • 立体図:等角投影図(アイソメトリック図)・二等角図(ダイメトリック図)・斜投影図(キャビネット図)の種類と特徴・立体図の読み方と描き方の違い
  • 立体図作成法:等角投影図の作図手順・アイソメトリックスケール(0.816倍縮小)の使い方・CAD操作の基礎知識(CAD区分選択者)・楕円テンプレートの使い方(手書き区分選択者)
  • 機械一般:機械要素(ネジ・歯車・軸受・ばね・キー等)の種類と構造・機械材料の基礎
  • 材料:金属・非金属材料の種類と性質・熱処理の基礎知識
  • 電気:電気の基礎知識(配線図の読み方など。電気系製品のイラスト対応のため)

実技試験の主な作業

第三角法の組立図・部品図を読み取り、等角投影図で立体図を作成する試験です。

  • 1級:第三角法の組立図から、等角図で立体組立断面図(断面を含む組立状態の立体表現)を作成。試験時間4時間30分
  • 2級:第三角法の組立図・部品図から、等角投影図で立体分解図(パーツを分解した状態の立体表現)を作成。試験時間3時間30分
  • 3級:第三角法の課題図から、等角投影図で立体外観図(製品全体の外観)を作成。試験時間2時間
  • 評価ポイント:等角投影図の作図精度(軸の角度・縮小率の正確さ)・線の質・陰影表現・全体のバランス

難易度・学習の目安

★★★☆☆ 3級は空間把握力があれば2〜3ヶ月で到達可能。1級は断面を含む組立立体図を4時間30分で仕上げる高度な作業です。

テクニカルイラストレーション技能士は、空間把握力・等角投影図の作図精度・作業速度の3つが合否を左右します。3級は製図の基礎があれば独学で取り組める水準です。2級・1級は実務での立体図作成経験が必要で、特に1級の断面を含む組立立体図は高度な空間把握力と精密な作図技能が求められます。

合格の目安:職種別の合格率は公表されていません。合格基準は学科65点以上・実技60点以上。等角投影図の精度と描画速度の両立が鍵です。

キャリアパスと需要

マニュアル・特許・製品カタログ制作での活躍

工業製品メーカー(家電・自動車・機械)のサービス部門・マニュアル制作部門、テクニカルイラスト専門制作会社、マニュアル制作会社(取扱説明書・パーツカタログ)、特許事務所(特許図作成)、フリーランスのテクニカルイラストレーターが主な就業先です。製品の取扱説明書は家電・自動車・医療機器など多数の分野で需要があります。

手書き職人の希少価値が高まる逆説

CADやドローイングソフトの普及で業界の主流はCAD作業にシフトしていますが、逆に手書き作業の技能士は希少価値が上がっています。複雑な曲面表現やアーティスティックな仕上がりでは手書きが優れており、高級製品カタログや特許図では手書きを指定するクライアントも根強く存在します。

豆知識:テクニカルイラストの世界

起源はアメリカ軍の軍需マニュアル

テクニカルイラストレーションの図法規格は第二次世界大戦中のアメリカで開発されました。多民族国家であるアメリカが、言語の壁を超えて軍需兵器の組立・整備手順を伝えるために体系化したのが始まりです。「言葉がなくても伝わる図」を目指して確立されたこの技術は、戦後に民間製品のマニュアル制作に転用され、現在に至るまで世界標準の産業図版技術として使われています。

等角投影図の「0.816倍」は数学の必然

等角投影図(アイソメトリック図)では、X・Y・Z軸が互いに120度の角度で配置されます。このとき実際の長さをそのまま記入すると図が実際より大きく見えるため、長さを0.816倍(正確には√(2/3)倍)に縮小する「アイソメトリックスケール」を使います。試験ではこの縮小率を正確に適用した作図が評価され、専用スケールなしに手書きで実施する場合は計算能力も問われます。

プラモデルの組立説明図も技能士の仕事

バンダイ・タミヤなど模型メーカーの組立説明書に掲載される分解立体図・組立手順図は、テクニカルイラストレーションの典型的な成果物です。1つの製品の説明書に数十〜百以上の立体図が使われ、パーツの形状・向き・組み合わせを正確かつ見やすく表現する技能が求められます。テクニカルイラストレーション技能士の2級実技「立体分解図」はこのような作業に直結しています。

よくある質問

Q. 手書き作業とCAD作業、どちらを選べばよいですか?

就職先・業務環境に合わせるのが最善です。マニュアル制作会社や社内テクニカルイラスト部門ではIllustratorなどのCADソフトが主流のためCAD作業が有利です。特許図・高品質カタログでは手書き技能が評価されます。試験難易度は同等で、どちらで取得しても「テクニカルイラストレーション技能士」の称号は同じです。

Q. 3級から順番に受ける必要がありますか?

3級合格は2級・1級受検の必須条件ではありません。2級は実務経験2年以上、1級は実務経験7年以上(または2級合格後2年以上)の要件を満たせば直接受験できます。ただし3級は実務経験不問で受検でき、等角投影図の基礎を身につける入門として有用です。実務経験がない学生・入職直後の方には3級からの挑戦をおすすめします。

こんな方におすすめ

  • 家電・自動車・機械メーカーのマニュアル・カタログ制作部門の担当者
  • テクニカルイラスト専門会社・マニュアル制作会社で働いている方
  • 特許事務所で特許出願用の図面作成を担当している方
  • フリーランスのテクニカルイラストレーターとして活躍したい方

最新の試験日程・受検料・受検資格は厚生労働省「技のとびら」の公式情報で確認してください。

公式サイト:技能検定「テクニカルイラストレーション」(厚生労働省 技のとびら)