プリント配線板製造技能士とは?
特級〜3級・PCB製造・設計の国家技能検定をわかりやすく解説
プリント配線板製造技能士の概要
プリント配線板製造技能士は、電子機器に欠かせないプリント配線板(PCB)を製造・設計する技能を国が認定する国家資格です。職業能力開発促進法に基づく「技能検定」の一職種で、試験問題は中央職業能力開発協会(JAVADA)が作成し、各都道府県の職業能力開発協会が実施します。合格すると名乗れる名称独占資格で、スマートフォン・産業機器・自動車制御ユニットなど、あらゆる電子機器の根幹を担う技能の証明となります。
※ プリント配線板(PCB: Printed Circuit Board)とは、絶縁体の基板に銅箔の回路パターンを形成し、電子部品を実装するための基板です。現代の電子機器はほぼすべてこの基板を内蔵しており、「電子機器の土台」とも言えます。
製造作業と設計作業の2区分
プリント配線板製造職種は、「プリント配線板製造作業」と「プリント配線板設計作業」の2つの作業区分に分かれています。製造作業は基板の製造工程(エッチング・めっき・穴あけ・検査など)を担い、設計作業は回路パターンの設計・CAD作業を担います。受検者は自分の業務内容に対応する作業区分を選んで受検します。
等級は特級・1級・2級・3級
等級は特級・1級・2級・3級の4段階があります。3級は実務経験不問で挑戦でき、2級・1級と実務経験を積みながらステップアップします。特級は1級合格後5年以上の実務経験が必要で、製造現場のマネジメントにも対応した上位資格です。
基本情報の早見表
| 主催 | 中央職業能力開発協会(JAVADA)が問題作成、都道府県職業能力開発協会が実施(職業能力開発促進法に基づく国家検定) |
|---|---|
| 等級 | 特級・1級・2級・3級 |
| 作業区分 | プリント配線板製造作業/プリント配線板設計作業 |
| 受検資格 | 3級=実務不問/2級=実務2年以上/1級=実務7年以上(または2級合格後2年以上)/特級=1級合格後5年以上。学歴・養成施設の修了で短縮 |
| 試験形式 | 学科試験+実技試験(プリント配線板の製造または設計に関する作業) |
| 合格基準 | 学科65点以上・実技60点以上(各100点満点) |
| 実施時期 | 前期・後期の年2回(作業区分・等級により実施期が決まる) |
| 受検料 | 標準=学科3,100円+実技18,200円(都道府県により異なる。若年者減免あり) |
試験内容を詳しく
学科と実技の両方で構成されます。それぞれの内容を見ていきましょう。
学科試験:PCBの知識
学科では、プリント配線板の製造技術・材料・設計の基礎知識が問われます。製造作業区分ではエッチング・めっき・穴加工・表面処理・品質管理などの知識が、設計作業区分では回路設計・CAD・電気的特性・ノイズ対策などの知識が中心です。電子回路の基礎や安全衛生も出題範囲に含まれます。
実技試験:製造または設計の作業
実技では、製造作業区分は基板の製造工程(エッチング・穴あけ・めっき・検査など)に関する実際の作業が試され、設計作業区分はCADを使った回路パターンの設計作業が課されます。精度と品質を保ちながら正確に作業する技能が評価されます。
難易度・学習の目安
3級は実務経験不問で挑戦できる入門レベルですが、2級・1級は実際の製造・設計の現場経験が問われます。特に1級は7年以上の実務が求められ、高い精度と段取り能力が必要です。日々の基板製造・設計業務の実践がそのまま対策につながる、実務直結の資格です。
基板製造・設計の担い手
電子機器メーカーや基板製造専業メーカーで働く技術者が、自分の製造・設計の技能を公的に証明するために取得します。品質管理や後進の指導にも役立てられます。
技術力のある職場づくりに
基板の製造・設計を手がける企業が、社員の技術力向上と対外的な信頼性確保のために活用します。技能士の在籍は、品質の裏付けとなります。
他の資格との違い
電子機器分野の技能検定には、対象工程が異なる複数の職種があります。混同しやすい2つと比較してみましょう。
電子機器組立て技能士との違い
電子機器組立て技能士は、プリント配線板の上にトランジスタ・IC・コンデンサなどの電子部品を実装し、はんだ付け・配線して「完成品」に仕上げる技能を対象とします。一方、プリント配線板製造技能士が扱うのは、その土台となる基板そのものの製造(エッチング・めっき・穴あけ)や回路パターンの設計です。工程でいえば、プリント配線板製造が「基板を作る」段階、電子機器組立てが「基板に部品を載せて機器に仕上げる」段階にあたり、前工程と後工程の関係にあります。
半導体製品製造技能士との違い
半導体製品製造技能士は、クリーンルーム内で半導体材料(シリコンウエハーなど)を物理的・化学的に加工し、ICチップそのものを作る技能を対象とします。プリント配線板製造技能士が基板(電子部品を実装するための土台)を扱うのに対し、半導体製品製造技能士は基板に載る部品側であるICチップの製造・組立てを扱う点が異なります。両者は最終製品では同じ基板上に共存しますが、対象とする製造工程・材料はまったく別です。
どんな人が取得しているか
実際の取得者像を見ると、大きく2つの立場に分かれます。
電子部品製造業の現場社員
基板製造専業メーカーや電子機器メーカーの製造ラインで、エッチング・めっき・穴あけ・検査などの実務に日々従事している社員が、自分の担当工程の技能を公的資格として証明するために受検するケースが中心です。3級は実務経験不問のため、新入社員が早期に取得して基礎を固める入り口としても使われています。
品質管理担当者・設計担当者
製造作業区分だけでなく設計作業区分もあるため、CADで回路パターンを設計する担当者や、基板の品質検査・不良解析を担う品質管理担当者も取得対象になります。特級は1級合格後5年以上の実務が必要な上位資格で、製造ライン全体のマネジメントや品質保証責任者としてのキャリアを見据えた技術者が挑戦する水準です。
豆知識:現代電子機器を支えるPCB
すべての電子機器の中心にある
スマートフォン・パソコン・自動車の制御ユニット・医療機器など、現代の電子機器はプリント配線板なしには動きません。回路をコンパクトにまとめ、大量生産を可能にしたプリント配線板の製造・設計技術は、電子産業の根幹を支えています。
製造と設計の両輪
プリント配線板の品質は、製造工程の精度だけでなく、設計の段階から決まります。製造作業区分と設計作業区分の両方を設けているのは、基板品質の向上には製造と設計の双方の技能が欠かせないためです。
こんな方におすすめ
取得を検討したい方
- 基板製造メーカーの製造ラインで働く方
- 電子機器メーカーの基板設計・CAD担当者
- 技能手当・昇格のために公的資格が欲しい方
- 電子部品・半導体産業でキャリアを積みたい方
取得に向けた第一歩
まず、自分の業務に対応する作業区分(製造作業か設計作業か)を確認し、該当する等級に合わせて申し込みます。3級は実務経験不問なので、入社後すぐに挑戦することも可能です。最新の試験日程・受検料・受検資格は、お住まいの都道府県職業能力開発協会または厚生労働省「技のとびら」の公式情報で確認してください。
