ずい道等の覆工作業主任者とは?
労働安全衛生法に基づく国家資格(技能講習)をわかりやすく解説
ずい道等の覆工作業主任者の概要
ずい道等の覆工作業主任者は、労働安全衛生法第14条・施行令第6条第10号(覆工)に基づき、トンネル・ずい道の型枠支保工の組立て・解体およびコンクリートの打設作業を行う事業場に選任が義務付けられる国家資格(技能講習修了証)です。建設業労働災害防止協会(建災防)等の登録機関が実施する2日間・13時間の技能講習を修了し、修了考査に合格することで取得できます。受講には「ずい道等の覆工業務の実務経験3年以上」等の受講資格が必要で、同じ「施行令第6条第10号」には掘削等作業主任者も含まれますが、覆工作業主任者は別の技能講習・別資格として取得します。
※ 「掘削」と「覆工」は別の作業主任者が必要:ずい道工事は大きく「掘削フェーズ(掘り進む)」と「覆工フェーズ(コンクリートで内壁を覆う)」に分かれます。掘削フェーズには「ずい道等の掘削等作業主任者」が、覆工フェーズには「ずい道等の覆工作業主任者」が必要です。両方の資格を一人が持つことも可能ですが、法令上は別の技能講習です。また「ずい道等の覆工作業主任者」は型枠支保工とコンクリート打設の両方を管理する幅広い職務を担います。
選任が必要な作業と作業主任者の職務
ずい道等の内部における型枠支保工(覆工型枠)の組立て・解体作業と、覆工コンクリートの打設作業に作業主任者の選任が義務付けられています。作業主任者の職務は、作業方法の決定・指揮・型枠支保工の材料欠点の有無・取り付け状態の点検・コンクリート打設中の異常発見時の作業中止・退避指示・安全帯等の使用状況の監視です(安衛則第362条の2等)。
基本情報の早見表
| 取得方法 | 技能講習(2日間・13時間)+修了考査(筆記)合格 |
|---|---|
| 講習科目 | ①ずい道等の型枠支保工に関する知識②コンクリートに関する知識③工事用設備・機械・器具に関する知識④作業環境に関する知識⑤関係法令⑥修了考査 |
| 合格基準 | 各科目40%以上かつ総合60%以上(慣例) |
| 受講資格 | ①ずい道等の覆工業務(型枠支保工の組立て・解体・コンクリート打設)に3年以上従事した者②学歴に応じ土木・建築系学科卒業+2年以上の業務経験 |
| 受講料 | 約12,925〜17,475円(地域・機関により差あり。テキスト代込み) |
| 有効期限 | なし(終身有効・更新不要) |
| 関連資格 | ずい道等の掘削等作業主任者(別資格)・型枠支保工の組立て等作業主任者 |
| 主催 | 建設業労働災害防止協会(建災防)および都道府県の登録機関 |
講習内容を詳しく
2日間・13時間の科目詳細
技能講習は2日間13時間のカリキュラムで、5科目の講義と修了考査で構成されます。
- ずい道等の型枠支保工に関する知識:覆工型枠(内型枠・移動式型枠台車)の種類・構造・材料の強度・許容応力・組立て手順・解体手順・崩壊の危険性・点検項目・補強方法
- コンクリートに関する知識:坑内コンクリートの配合設計・スランプ・打設計画・打設速度・コールドジョイント防止・締固め方法(バイブレータの使用法)・養生方法・品質管理試験(スランプ試験・空気量試験)
- 工事用設備・機械・器具に関する知識:コンクリートポンプ・アジテータ車・バッチャープラント・型枠台車(セントル)・バイブレータ・圧送設備の点検・使用法・注意事項
- 作業環境に関する知識:坑内換気計画・照明基準・一酸化炭素・粉じんの管理・コンクリートポンプ圧送時の騒音・振動対策・緊急時の退避経路・連絡体制
- 関係法令:労働安全衛生法第14条・施行令第6条第10号・安衛則(ずい道等の覆工作業に関する条項)・作業主任者の職務と選任義務
修了考査の内容と合格基準
2日目の最後に修了考査(筆記・概ね1時間以内)が実施されます。5科目から均等に出題され、各科目40%以上かつ総合60%以上が合格基準の目安です(実施機関により若干異なる)。建災防テキストに沿った出題が中心で、2日間の講義を受講していれば高い確率で合格できます。修了者には「ずい道等の覆工作業主任者技能講習修了証」が交付されます。
難易度・合格の目安
ずい道等の覆工作業主任者の修了考査は、2日間の講義内容から出題されるため、真剣に受講していれば高い確率で合格できます。実質的な難関は「受講資格」であり、ずい道・トンネルの覆工作業に3年以上従事していなければ受講できません。都市部から地方まで開催機会が限られているため、事前に建災防の各都道府県支部で開催日程を確認してから申込む流れになります。
キャリアパスと需要
トンネル工事・地下インフラ工事の専門家として
大手ゼネコンのトンネル部門・トンネル専門工事会社・地下鉄延伸工事・道路トンネル・新幹線トンネル・水力発電の導水路トンネル等が主な就業先です。ずい道等の掘削等作業主任者と覆工作業主任者の両方を取得すると、トンネル工事の全工程(掘削→覆工)の作業主任者として対応でき、工事全体の安全管理を一元的に担う専門家として高く評価されます。インフラ老朽化対策や新幹線延伸工事の需要拡大により、今後も継続的に有資格者が求められます。
ずい道等の掘削等作業主任者・型枠支保工の組立て等作業主任者との組み合わせ
ずい道等の掘削等作業主任者(掘削フェーズ)と覆工作業主任者(覆工フェーズ)を両方取得するとトンネル建設の全工程を担当できます。さらに地上工事でも活用できる「型枠支保工の組立て等作業主任者」と組み合わせると、地下・地上を問わずコンクリート構造物の施工管理ができる幅広いキャリアを築けます。1級土木施工管理技士とセットで持つことでトンネル・土木工事の安全管理のエキスパートとして活躍できます。
豆知識:ずい道覆工の安全管理
「コールドジョイント」が覆工コンクリートの最大の品質リスク
コールドジョイントとは、先に打設したコンクリートが硬化した後に次のコンクリートを打ち継いだときにできる不連続面のことです。ずい道の覆工コンクリートでコールドジョイントが発生すると、その部分が弱点となり水の侵入・漏水・ひび割れ・剥落の原因となります。作業主任者はコンクリートの打設計画(打設速度・バイブレータの使用間隔)を管理し、一体的な覆工コンクリートの品質確保を担います。
移動式型枠台車(セントル)の管理が安全の要
ずい道覆工で多く使われる移動式型枠台車(セントル)は、走行・停止・型枠開閉を繰り返しながら順次覆工コンクリートを打設する専用設備です。作業前にジャッキ・走行装置・型枠固定ボルトの点検が必要で、打設中のコンクリート側圧による変形・セントルの転倒が重大事故につながります。作業主任者は打設中も型枠の変形監視を継続し、異常があれば即座に打設を中止・退避させる判断権限を持ちます。
「吹付けコンクリート」と「型枠覆工」の使い分け
山岳トンネルでは、掘削直後の支保として「吹付けコンクリート(ロックボルトと併用)」を施工し、その後に型枠覆工コンクリートで最終的な内壁を作る2段階施工が標準です。吹付けコンクリートは短繊維(スチールファイバー・ポリプロピレン繊維)入りで地山を直接支える仮設的な役割を担い、型枠覆工コンクリートは構造物として恒久的な強度を持たせる役割です。覆工作業主任者は主に後者の型枠覆工フェーズを管理します。
よくある質問
Q. ずい道等の掘削等作業主任者と同一人が覆工の作業主任者を兼ねることはできますか?
可能です。両方の技能講習を修了して修了証を持っていれば、一人の作業者が両方の作業主任者として選任されることができます。特に小規模なトンネル工事や人員が限られる現場では、一人が掘削等・覆工両方の作業主任者を兼任するケースが実際にあります。ただし、掘削と覆工が同時に進行している場合は、それぞれの作業現場に作業主任者が常駐して指揮できる体制が必要です。
Q. シールド工法のセグメント組立作業にも覆工作業主任者が必要ですか?
シールド工法のセグメント(プレキャストコンクリート製)の組立作業は、現場でコンクリートを打設する「型枠覆工」とは異なる作業のため、ずい道等の覆工作業主任者の選任対象とは直接なりません。シールド工法でのセグメント組立には「ずい道等の掘削等作業主任者(シールド工法コース)」が対応します。ずい道等の覆工作業主任者は主に山岳工法(NATM工法等)での現場打ちコンクリート覆工フェーズを管理する資格です。
こんな方におすすめ
- 山岳トンネル・道路トンネル・鉄道トンネルの覆工フェーズで3年以上の実務経験があり、法定作業主任者として活躍したい方
- ずい道等の掘削等作業主任者を既に取得済みで、覆工作業主任者を追加取得してトンネル工事の全工程を担いたい方
- 1級土木施工管理技士とセットでトンネル工事の安全管理のエキスパートを目指す方
- 大手ゼネコン・トンネル専門工事会社でキャリアアップを図る施工管理技術者の方
最新の講習日程・受講料・申込方法の詳細は建設業労働災害防止協会(建災防)または各都道府県の登録機関にお問い合わせください。
