重度訪問介護従業者養成研修とは?
概要・研修体系・取得後の仕事を解説
重度訪問介護従業者養成研修の概要
重度訪問介護従業者養成研修は、重度の肢体不自由や重度の知的・精神障害により常時介護を必要とする方の生活を、長時間にわたって支える人材を養成するための公的な研修です。国が定める人員基準を満たすために都道府県・指定都市が指定した研修事業者が実施しており、修了することで「重度訪問介護」というサービスに従事できるようになります。
※ 重度訪問介護とは、常時介護を要する重度の障害がある方を対象に、自宅などで入浴・排せつ・食事の介護や家事援助、外出時の移動支援、さらに突発的な危険を回避するための見守り(以下「見守り的援助」)まで、長時間にわたって総合的に支援する障害福祉サービスです。
研修の法的な位置づけ
この研修は、いわゆる「国家資格」ではありません。障害者総合支援法に基づく人員基準省令(平成18年厚生労働省令第171号)と、告示「指定居宅介護の提供に当たる者として…厚生労働大臣が定めるもの等」(平成18年9月29日厚生労働省告示第538号)によって、重度訪問介護に従事するための要件として位置づけられている公的研修です。
重度訪問介護に実際に携わるには、この研修の修了に加えて、介護福祉士や実務者研修修了などのより上位の資格・研修を修了しているルートも認められています。つまり「重度訪問介護の現場に入るための入口」として設計された研修だといえます。
受講資格・対象者
基礎課程については、受講にあたって前提となる資格や年齢の特段の制限は設けられていません。介護の仕事が未経験の方でも、まず基礎課程から受講をスタートできます。一方で追加課程は、原則として基礎課程を修了していることが前提となります(基礎課程と同時に実施される場合は例外があります)。
他の従業者養成研修との違い
「みんなの資格」では、重度訪問介護従業者養成研修のほかに、同行援護従業者養成研修や行動援護従業者養成研修についても紹介しています。名前がよく似ているため混同されがちですが、対象となる障害や支援内容がまったく異なる別々の研修制度です。
重度訪問介護従業者養成研修は、重度の肢体不自由がある方や、重度の知的・精神障害により行動上著しい困難を抱える方を対象に、自宅での長時間の生活支援全般を担うための研修です。これに対して同行援護従業者養成研修は主に視覚障害がある方の外出時の移動支援(代筆・代読を含む)を目的とし、行動援護従業者養成研修は知的障害・精神障害により行動する際に困難を伴う方の危険回避や外出支援を目的としています。支援の場面・対象者が異なるため、それぞれ別個のカリキュラムとして設計されています。
※ 行動上著しい困難とは、自傷・他害・こだわり行動などが強く、日常生活を送るうえで通常以上の見守りや専門的な対応が必要な状態を指す言葉として、障害福祉の制度上使われる表現です。
研修の課程構成・難易度の目安
重度訪問介護従業者養成研修は、大きく分けて「基礎課程」「追加課程」「統合課程(基礎+追加)」「行動障害支援課程」の4区分で構成されています。どの課程を受講するかによって、対応できる障害の範囲が変わってきます。
| 課程名 | 主な対象・目的 | 前提となる課程 |
| 基礎課程 | 重度訪問介護の基本的な支援方法を学ぶ入門課程 | なし(誰でも受講可) |
| 追加課程 | より重度の障害がある方への対応力を積み増す課程 | 原則として基礎課程修了(同時実施の場合を除く) |
| 統合課程 | 基礎課程と追加課程をまとめて受講する課程 | なし(一体的に受講) |
| 行動障害支援課程 | 強度行動障害がある方への支援力を高める課程 | 基礎課程(自治体・事業者により運用差あり) |
※ 強度行動障害とは、自傷や他害、物を壊す、著しい多動などの行動が頻繁かつ強く現れ、特別に配慮された支援が必要な状態のことです。福祉の現場で専門用語として使われます。
研修時間・カリキュラムの目安
告示のうえでは各課程の時間配分の大枠が示されていますが、具体的な時間数や演習の有無は実施する都道府県・研修事業者によって差があります。一例として大阪府では、基礎課程18時間・追加課程12時間・統合課程30時間・行動障害支援課程14時間という時間設定で実施されています。ただしこれはあくまで一自治体の例であり、全国一律の基準ではない点に注意が必要です。
研修は座学の講義に加え、実技演習(移動・体位変換・見守りの実践など)を組み合わせた形式が中心です。修了時に試験のような評価を行うかどうかは、公式な文書に明記が見当たらず、現時点では不明です。実施する研修事業者によって運用が異なる可能性があるため、受講を検討する際は申し込み先に直接確認することをおすすめします。
受講料の目安
受講料についても厚生労働省が定めた公式な料金設定はありません。研修事業者ごとの設定となっており、非公式な情報としては基礎課程・追加課程それぞれ1万5千円〜2万円程度、両方をまとめて受講する統合課程で3万円程度が相場とされることがあります。ただしこれは目安にすぎず、実際の金額は「不明・要問い合わせ」というのが正確なところです。地域の自治体窓口や研修事業者に直接確認してください。
取得後に活かせる仕事・関連する職種
重度訪問介護のヘルパー
最も直接的な活かし方は、重度訪問介護事業所でのヘルパー業務です。利用者の自宅を訪問し、入浴・食事・排せつなどの身体介護から、掃除・洗濯といった家事援助、外出時の移動支援まで、長時間にわたって一人ひとりの生活に寄り添う仕事に就くことができます。
重度障害者等包括支援のスタッフ
常時介護を要する程度がとくに高い方向けの「重度障害者等包括支援」では、複数の障害福祉サービスを組み合わせて提供します。重度訪問介護従業者養成研修の修了は、こうした包括的な支援体制の一員として働くための土台にもなります。
他の介護資格へのステップアップの足がかり
この研修で得た実践的な介護の知識・技術は、初任者研修や実務者研修、さらには介護福祉士へとステップアップしていく際の土台にもなります。障害福祉の現場経験を積みながら、より上位の資格取得を目指すキャリアパスを描く方も少なくありません。
誕生の背景・歴史
平成18年:障害者自立支援法(現・障害者総合支援法)の施行とともに新設
重度訪問介護従業者養成研修は、平成18年(2006年)の障害者自立支援法(現在の障害者総合支援法)施行にあわせて整備された研修です。それまでの支援費制度における「日常生活支援」などの仕組みを再編し、重度の肢体不自由者に加えて、重度の知的障害・精神障害により行動上著しい困難がある方も対象に含める形で「重度訪問介護」というサービス類型が生まれました。この対象拡大にともない、担い手を育成するための専門研修として本研修が新設されました。
制度改正とともに広がった支援の対象
その後の制度改正で、重度訪問介護は入院中の医療機関でのコミュニケーション支援など、支援の場面が徐々に広がってきました。背景には「地域で、住み慣れた場所で暮らし続けたい」という重度障害者やその家族の願いと、それを支える人材が慢性的に不足しているという現場の課題があります。研修制度そのものも、こうした社会的なニーズの変化に応じて運用が見直されてきた歴史を持っています。
※ 障害者総合支援法とは、障害のある方が日常生活・社会生活を送るために必要な福祉サービスの内容や提供体制を定めた法律です。平成25年に障害者自立支援法から名称・内容が改められました。
どんな人が、どんな目的で取得しているのか
未経験から福祉の仕事を始めたい方
基礎課程は前提資格が不要なため、介護・福祉の仕事がまったくの未経験という方が最初の一歩として受講するケースが多く見られます。人の役に立つ実感を持ちやすい仕事として、異業種からの転職者にも選ばれています。
すでに介護職として働いている方のスキル拡張
訪問介護や施設介護で働いている方が、対応できる利用者の幅を広げるために追加で受講することもあります。とくに重度の障害がある利用者への対応を任されるようになるタイミングで、事業所側から受講を勧められることも多いようです。
家族の介護をきっかけに資格取得を志した方
身近な家族に重度の障害がある方がいて、その介護をきっかけに「もっと専門的な知識を身につけたい」「同じような境遇の家族を支える仕事に就きたい」と考え、この研修を受講する方もいます。当事者性のある動機は、その後の仕事への向き合い方にも大きく影響するようです。
豆知識:重度訪問介護という制度のユニークな一面
「見守り」も支援の一部という考え方
重度訪問介護の大きな特徴のひとつが、直接的な介護行為だけでなく「見守り的援助」も報酬の対象となっている点です。何か作業をしているわけではなくても、突発的な体調変化や事故のリスクに備えて側にいること自体が、重度の障害がある方の暮らしを支えるうえで欠かせない支援だと制度上認められています。これは他の訪問介護サービスにはあまり見られない特徴です。
長時間・連続した支援を前提に設計されている
一般的な訪問介護は1回30分〜90分程度の短時間サービスが中心ですが、重度訪問介護は1回の訪問が長時間に及ぶことが想定されており、なかには8時間を超える支援が行われるケースもあります。同じ利用者と長く関わりながら生活全体を支えるという点で、他の介護サービスとは支援のリズムそのものが異なります。この「関係性の長さ」が、この仕事ならではのやりがいにもつながっているといわれています。
まとめ ― 「暮らしそのものを支える」研修
こんな方にとくにおすすめ
- 介護・福祉業界が未経験だが、資格ゼロから福祉の仕事を始めたい方
- すでに訪問介護で働いており、対応できる利用者の幅を広げたい方
- 家族や身近な人の介護を経験し、専門知識を身につけたいと考えている方
- 将来的に介護福祉士など上位資格を目指すための土台をつくりたい方
取得に向けた第一歩
まずはお住まいの都道府県・指定都市、またはその指定を受けた研修事業者のWebサイトで、基礎課程の開催予定を確認するところから始めましょう。前提資格が不要なので、いきなり基礎課程から申し込むことができます。修了後に対応範囲を広げたくなったら、追加課程や行動障害支援課程へとステップアップしていく流れが一般的です。受講料や具体的な研修時間は事業者ごとに差があるため、申し込み前に必ず直接確認することをおすすめします。
公式サイト:重度訪問介護サービスについて(厚生労働省)
