
農業を学んだり、就農を目指したりする人のあいだで知られる「日本農業技術検定」。名前は聞いても、「どんな検定?」「難易度は?」と気になる人は多いはずです。さらに、よく似た名前の「日本農業検定」という別の検定もあり、混同されがちです。この記事では、日本農業技術検定の中身を整理し、まぎらわしい「日本農業検定」との違いもはっきりさせて解説します。
日本農業技術検定とは:農業の知識・技術を測る検定

日本農業技術検定は、農業の知識・技能の水準を、客観的に評価するための民間検定です。全国農業会議所が事務局を務める日本農業技術検定協会が実施しており、農林水産省や文部科学省が後援しています。2007年度から始まった、比較的歴史のある検定です。
主な受験者は、農業高校や農業大学校、農学系の大学で学ぶ学生や、就農を目指す人、農業法人で働く研修生・従業員、農業の後継者などです。学習の到達度を確かめたり、就農や農業系の就職・進学でアピールしたりするのに使われます。農業を「仕事にしたい人」に向けた、実践的な検定だと言えます。
近年、農業は「稼げる産業」として見直され、脱サラして就農する人や、農業法人に就職する若者も増えています。とはいえ、農業には作物の栽培から病害虫の対策、農業機械の扱いまで、幅広い知識と技術が必要です。日本農業技術検定は、その知識と技術がどのくらい身についているかを、客観的な数字で示せるのが強みです。未経験から農業を始める人にとっては、学ぶべきことの地図としても役立ちます。
級は3段階、専門分野に分かれる
級は、入門の3級、基本の2級、高度な1級の3段階です。それぞれの位置づけを、下の表にまとめました。
| 級 | レベル | 試験 |
|---|---|---|
| 3級 | 入門(農作業の意味がわかる) | 学科のみ |
| 2級 | 基本(栽培管理などができる実践準備) | 学科+実技 |
| 1級 | 高度(実践・指導者レベル) | 学科+実技 |
2級・1級には、学科のあとに実技試験もあります(学科だけの受験も可能です)。また、専門分野を選ぶのも特徴で、3級は栽培系・畜産系・食品系・環境系といった系統から、1級・2級は作物・野菜・花き・果樹・畜産・食品といった、より細かい分野から選んで受験します。自分の学びや目指す方向に合わせて選べる仕組みです。
この「専門分野を選べる」点は、農業の幅広さをよく表しています。ひとくちに農業といっても、米や野菜を育てる栽培、牛や豚を飼う畜産、加工品を作る食品、造園や農業土木といった環境まで、分野はさまざまです。自分がやりたい分野に絞って受験できるので、実際の仕事や進路に直結した知識を確かめられます。たとえば、酪農を目指す人は畜産系を、野菜農家を目指す人は野菜の分野を選ぶ、という具合です。
難易度の目安
難易度は、級によってはっきり分かれます。合格の基準は、3級が正答率60%以上、2級・1級が70%以上です。
合格率の目安を見ると、入門の3級は6割ほどとやさしめですが、2級は2割前後、1級は1割前後と、上位になるほど一気に難しくなります。3級は農業の学習を始めた人の入門に、2級は就農の準備レベルに、1級は指導者レベルに、と位置づけられています。まずは入門の3級から挑戦し、段階的に上の級を目指すのが基本です。学科試験は誰でも受けられるので、農業に興味がある人が力だめしに受けることもできます。
2級以上になると、実技試験が加わるのも難しさの一因です。実技では、実際の農作業に近い技能が問われるため、机の上の勉強だけでは通用しません。日ごろから土に触れ、作物を育てる経験を積んでいることが、大きな力になります。農業高校や農業大学校で学ぶ人が受けやすいのは、まさにこの実践経験があるからです。逆に言えば、この検定に合格できる力は、そのまま現場で通用する実力の裏づけにもなります。
まぎらわしい「日本農業検定」との違い
ここで、多くの人が混同してしまうのが「日本農業検定」です。名前がそっくりですが、じつはまったく別の検定です。両者の違いを、下の表で整理しました。
| 日本農業技術検定 | 日本農業検定 | |
|---|---|---|
| 対象 | 農業を学ぶ学生・就農を目指す人 | 小中学生〜一般・家庭菜園愛好家 |
| 目的 | 農業の専門知識・技術の評価 | 農業への理解・食育 |
| レベル | プロ・専門レベル | 教養・食育レベル |
| 実技試験 | あり(1級・2級) | なし |
ひとことで言えば、日本農業「技術」検定は、就農や農業教育に向けた「技術の検定」。もう一方の日本農業検定(通称「農検」)は、一般の人や食に関心のある人に向けた「教養・食育の検定」です。実施している団体も別々で、日本農業検定は全国農協観光協会が行っています。就農・農業のプロを目指すなら日本農業技術検定、農業や食への理解を深めたいなら日本農業検定、と目的で選び分けるとよいでしょう。
名前がここまで似ていると、うっかり取り違えて申し込んでしまうこともありそうです。就農を目指して技術を証明したいのに、うっかり食育向けの検定を受けてしまっては、目的がずれてしまいます。申し込みの前に、「技術」の二文字が入っているかどうか、そして実施団体はどこかを確認しておくと確実です。自分が農業に「プロとして関わりたい」のか、「よき理解者として関わりたい」のか――その立ち位置を意識すると、選ぶべき検定が自然と定まります。
持ち帰り豆知識:テキストが書店で買えない
日本農業技術検定には、少し変わった特徴があります。じつは、対策用のテキストや過去問題集が、一般の書店やネット通販では手に入りにくいのです。学校の教材として扱われることが多く、協会を通じて購入する形になっています。
これは、この検定が農業高校などの教育現場と深く結びついていることの表れでもあります。学校単位で受験し、授業の学びの到達度を測る、という使われ方が多いのです。就農を目指す人にとっては、体系立てて農業の知識を確認できる、貴重なものさし。入手経路が独特なのも、この検定の性格をよく表しています。
独学で受ける場合は、テキストの入手方法を早めに調べておくとよいでしょう。過去問題集を手に入れて、どんな問題が出るかを知ることが、合格への近道になります。農業は、教科書だけでなく、実際に土に触れ、作物を育てる経験があってこそ身につくもの。検定の勉強と、日々の農作業の両方を通じて、知識と技術を確かなものにしていけます。数字で実力を測れるこの検定を、学びの目標として上手に活用してみてください。
まとめ:就農を目指すなら”技術”検定
日本農業技術検定は、農業の知識・技術を測る、就農や農業教育向けの検定です。3級から1級まであり、上位になるほど難易度が上がります。名前のよく似た日本農業検定とは別物で、こちらはプロ予備軍向け、日本農業検定は一般・食育向け、という違いがあります。
農業を仕事にしたい、あるいは農業をしっかり学びたいと考えているなら、日本農業技術検定は力だめしにぴったりです。最初の一歩は、入門の3級の出題範囲を調べてみること。農業高校や農業大学校で学んでいる人はもちろん、これから就農を考えている人にとっても、自分の知識を確かめる良い機会になります。なお、級の構成や合格率は年度で変わることがあるので、受験前に公式の情報を確認してください。
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