認定看護師(認知症看護)とは?
概要・難易度・取得後の活かし方を解説
認知症看護認定看護師の概要
「認知症看護認定看護師(Dementia Nursing CN)」は、公益社団法人日本看護協会が認定する認定看護師(CN)制度B課程19分野のひとつです。認知症患者およびその家族に対して、認知症の専門的な知識・技術を活かしたケアを提供するエキスパートです。2024年12月時点での認定者数はA課程・B課程合計で約2,316名に上ります。
※ 認定看護師(CN:Certified Nurse)とは、特定の看護分野において熟練した看護技術と知識を用いて水準の高い看護を実践し、看護職への指導・相談を行う能力を持つ看護師のこと。認定看護師はその専門分野において「実践・指導・相談」の3つの役割を担います。
受験要件
B課程認定看護師の受験には以下の要件が必要です。①日本国の看護師免許を保有していること。②通算5年以上の実務経験があること(うち3年以上は認知症看護の分野)。③日本看護協会が認定する認定看護師教育課程B課程(特定行為研修を含む)を修了していること。B課程では特定行為研修が組み込まれており、高度な実践能力の証明が求められます。A課程の認定審査は2029年度末で終了予定です。
A課程とB課程の違い
かつての「A課程」は特定行為研修を含まない旧制度です。2020年から「B課程」として特定行為研修を組み込んだ新制度に移行しています。B課程修了者はA課程に比べて高度な看護実践(医師の指示の範囲内での特定行為)が可能になります。A課程認定者は2029年度末までに更新審査を受けることでB課程相当への移行が可能です。
※ 特定行為(Designated Acts)とは、診療の補助の範囲内で、特に高度な判断や技術が必要な行為のこと。2015年の保健師助産師看護師法改正で制度化されました。特定行為を行うには「特定行為研修」を修了した看護師であることが必要です。認知症看護の特定行為には「脱水症状に対する輸液による補正」「感染徴候がある者へのカテーテル挿入部位のケア」などが含まれます。
難易度
看護師として5年以上の実務経験に加えて認定看護師教育課程(半年〜1年程度)への進学が必要です。教育課程中は学習・実習に集中する必要があり、施設によっては仕事を休職する場合もあります。費用面でも教育課程の受講料・生活費等の負担があります。専門看護師(★★★★★)ほどではありませんが、看護師が取得できる資格の中でも上位の難易度です。
取得後に活かせる仕事・関連する職種
急性期病院・総合病院での認知症ケア
急性期病院に入院する高齢患者の多くが認知症を合併しており、「認知症があるから手術・治療が難しい」「点滴を自己抜去してしまう」「夜間に徘徊する」といった問題が日常的に発生しています。認知症看護認定看護師は、入院高齢者の認知症ケアチームのリーダーとして、個別ケア計画の立案・スタッフへの指導・家族支援を包括的に担います。
認知症疾患医療センターでの専門的支援
全国の認知症疾患医療センター(都道府県が指定する専門医療機関)では、認知症の診断・行動心理症状(BPSD)の対応・家族支援・地域連携を包括的に行っています。認知症看護認定看護師はこのセンターの看護の中核を担い、鑑別診断・医療的対応・在宅・施設への橋渡しなど多岐にわたる役割を果たします。
介護施設・地域包括ケアでの実践と指導
特別養護老人ホーム・老人保健施設・グループホームなどの介護施設でも、認知症ケアの専門家として入居者の状態アセスメント・ケア計画立案・介護スタッフへの指導・家族相談などを担います。地域包括ケアシステムの中で、病院と地域の橋渡しをする役割としても期待されています。
誕生の背景・歴史
認定看護師制度の創設と認知症看護の位置づけ
日本看護協会は1995年から認定看護師制度を開始しました。当初は数分野から始まりましたが、医療の高度化・多様化・高齢化に伴い認定分野は拡大してきました。認知症看護は「急増する認知症患者への専門的な看護が強く求められている」という社会的背景から認定分野に加えられ、現在は全国2,316名以上の認定者がいます。
「認知症施策推進大綱」と専門人材育成の加速
2019年に政府が「認知症施策推進大綱」を策定し、「共生と予防」を2本柱とした国家的な認知症対策が本格化しました。医療・介護・地域の各現場での認知症専門人材の育成が喫緊の課題となり、認知症看護認定看護師へのニーズはさらに高まっています。
どんな人が、どんな目的で目指しているのか
認知症病棟・高齢者病棟で悩んできた看護師
「BPSDの患者にどう対応すべきか」「家族が混乱していてうまくサポートできない」「同僚スタッフの認知症ケアの知識が不足している」という課題を日々感じてきた看護師が、「もっと専門知識を身につけて現場を変えたい」という動機で目指すケースが多いです。
病院・施設の認知症ケアの質向上を担いたいリーダー
看護師長・主任・教育担当者が「施設全体の認知症ケアの水準を上げるためのリーダーが必要」という組織的な判断から、資格取得を支援するケースもあります。認定看護師の資格は組織内での役割・権限の明確化にもつながります。
豆知識:認知症看護で知っておきたい知識
BPSDとは何か、なぜ起きるのか
BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia:認知症の行動・心理症状)とは、徘徊・暴力・暴言・不潔行為・妄想・幻覚・うつ・睡眠障害などの症状の総称です。これらは認知症の「中核症状(記憶障害・見当識障害等)」に加え、本人の性格・環境・ケアの方法・心理的なストレスが複合して引き起こされます。つまりBPSDは「適切なケアと環境調整で改善できる症状」でもあり、専門的なアプローチが決定的に重要です。
パーソン・センタード・ケアという革命
従来の認知症ケアは「問題行動を管理・抑制する」視点が強かったですが、1990年代にイギリスの心理学者トム・キットウッド博士が提唱した「パーソン・センタード・ケア(Person-Centred Care)」が世界的に普及し、認知症ケアのパラダイムが大きく変わりました。「認知症があってもその人は人格を持つひとりの人である」という考え方を基盤に、個人の歴史・価値観・好み・強みを尊重したケアを行います。認知症看護認定看護師はこの思想を実践し広める役割を担います。
※ 認知症の4大疾患:アルツハイマー型認知症(最多、全体の60〜70%)、血管性認知症(脳梗塞・脳出血後など)、レビー小体型認知症(幻視・パーキンソン症状が特徴)、前頭側頭型認知症(人格変化・常同行動が特徴)の4つが主な原因疾患です。各疾患によって症状・経過・ケアのポイントが大きく異なり、鑑別と疾患特性に合わせたケアが重要です。
家族介護者もケアの対象
認知症ケアでは「患者本人へのケア」だけでなく「家族介護者へのサポート」も重要な役割です。認知症の方を介護する家族は、強いストレス・孤立感・燃え尽き(介護燃え尽き)を抱えていることが多く、「介護うつ」や「高齢者虐待」のリスクにもなり得ます。認知症看護認定看護師は家族の苦労を理解し、具体的なサポートと地域資源への橋渡しを通じて家族も支えます。
まとめ ― 認知症看護の専門家として社会を支える
こんな方にとくにおすすめ
- 認知症病棟・高齢者病棟・介護施設で認知症ケアに5年以上携わってきた看護師
- BPSDへの対応・家族支援・スタッフ指導で専門性を発揮したい方
- 認知症疾患医療センター・地域包括支援センターで専門的役割を担いたい方
- 施設全体の認知症ケアの水準向上をリードしたいリーダー・管理職
取得に向けた第一歩
日本看護協会の公式サイトで認定看護師制度・B課程教育課程の認定校一覧・認定審査スケジュールを確認しましょう。実務5年(うち認知症看護3年)の経験要件を確認した上で、B課程教育課程を提供している看護系大学・看護学校を調べて出願計画を立てましょう。施設によっては資格取得支援制度(休職・学費補助)がある場合もあるので、所属施設の人事・教育担当に相談してみることも大切です。
公式サイト:日本看護協会 認定看護師制度(認知症看護)
