電子制御装置整備の整備主任者資格取得講習について

実技試験あり筆記試験実務経験・学歴が必要
国家資格

電子制御装置整備の整備主任者資格取得講習とは?

概要・受講対象・特定整備制度との関係を解説

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電子制御装置整備の整備主任者資格取得講習の概要

「電子制御装置整備の整備主任者資格取得講習」は、独立した国家試験ではなく、既存の自動車整備士に対して各地方運輸支局長が実施する追加の講習・確認制度です。すでに2級自動車整備士などの資格を持つ人が、この講習を修了することで初めて「電子制御装置整備」の整備主任者になれる、という位置づけになっています。

名前だけを見ると新しい国家資格の試験のように感じるかもしれませんが、そうではありません。すでに自動車整備士として働いている方、あるいはこれから整備士を目指す方が「その先のステップ」として受講するものだと理解しておくと迷いません。

整備主任者とは、認証工場・指定工場で点検整備の実施を直接管理・監督する立場の人のことです。工場ごとに選任が義務づけられています。

試験ではなく「講習」という制度設計

この制度の最大の特徴は、独立した資格試験として存在しているわけではない点です。国土交通省の「自動車特定整備事業について」というページの中で、電子制御装置整備を行う事業場の整備主任者等が身につけるべき知識・技能を習得するための講習として案内されています。

そのため「電子制御装置整備の整備主任者資格取得講習に合格した」という表現よりも、「講習を修了した」という表現のほうが実態に近いといえます。修了することで、電子制御装置整備を扱う事業場の整備主任者として認められる仕組みです。

受講資格・対象者

受講の前提となるのは、2級自動車整備士自動車車体整備士自動車電気装置整備士のいずれかの資格を持っていることです。すでにこれらの資格を取得している整備士が、電子制御装置整備を扱えるようになるための追加ステップとしてこの講習を受講します。

一方で、1級小型自動車整備士の資格を持つ人は、この講習の受講が免除されます。1級の教育課程にはすでに電子制御装置に関する知識・技能が含まれているとみなされているためです。

2級自動車整備士とは、自動車整備士のなかでも中核となる資格で、エンジン・シャシー等の一般的な整備業務を担う整備士を指します。1級はさらに上位の資格です。

「特定整備」における位置づけ

この講習は、道路運送車両法上の「特定整備」という枠組みの中に組み込まれています。特定整備は、従来の「分解整備」に、電子制御装置に関する整備(いわゆる「電子制御装置整備」)を加えて拡大した区分です。

電子制御装置整備を事業として行うには、その事業場に電子制御装置整備の知識・技能を持つ整備主任者を置く必要があり、そのための知識・技能を確認する手段として、この講習が設けられています。

難易度・学習時間の目安

★★☆☆☆ 前提資格の取得が本体。講習自体は集中して学べば修了しやすい構成

この講習の難しさを語るうえで大切なのは、「2級自動車整備士などの前提資格を取ること」自体のハードルと、「講習を修了すること」のハードルは別物だという点です。前提資格の取得には長い実務経験や専門教育が必要ですが、講習そのものは、すでに現場で整備士として働いている人が対象のため、実務の延長線上で無理なく学べる内容になっています。

講習は学科(law等の法令知識)・実習(エーミング作業などの実技)・試問(筆記による確認)の3部構成で行われます。一定の要件を満たす外部研修を受けている場合は、実習部分の代替が認められることもあります。学習時間の具体的な目安は公式には示されておらず、勤務先の指示や地方の自動車整備振興会が案内する日程に沿って受講する形が一般的です。

エーミング作業とは、自動ブレーキやレーンキープアシストに使われるカメラ・レーダー等のセンサー類を、脱着・交換後に正しい向き・位置へ再調整する作業のことです。

合格率の目安:受講料・修了率ともに公式資料での公表は確認できず、不明です。前提資格を持つ整備士向けの確認型講習という性質上、合格率という指標自体があまり意味を持たない制度と考えられます。

取得後に活かせる仕事・関連する職種

指定工場・認証工場の整備主任者

この講習を修了すると、電子制御装置整備を行う事業場で整備主任者として選任される道が開けます。車検を伴う整備工場では、法令上、整備主任者の配置が義務づけられているため、講習修了は工場運営そのものに直結する意味を持ちます。

先進安全自動車(ASV)対応の整備士

自動ブレーキやレーンキープアシストなどを搭載した車両は年々増えており、フロントガラスやバンパーの交換後にエーミング作業が必要になる場面も増加しています。この講習を修了した整備士は、そうした最新車両の整備を事業として正式に引き受けられる立場になります。

ディーラー・大手整備チェーンの現場責任者

ディーラーや大手整備チェーンでは、電子制御装置整備に対応できる人員の確保が経営課題になりつつあります。講習修了者は、現場での技術指導や新人教育を任されるケースもあり、工場内でのポジションアップにつながる場合があります。

誕生の背景・歴史

令和元年:道路運送車両法改正という転機

この講習が生まれた直接のきっかけは、令和元年5月24日に公布された道路運送車両法の改正です。従来「分解整備」と呼ばれていた整備区分が「特定整備」へと拡大され、自動ブレーキやレーンキープアシストといった先進安全技術に関わるカメラ・レーダー等の脱着・調整作業が、新たに車検の対象として組み込まれました。

背景にあるのは、先進安全自動車(ASV)の急速な普及です。自動ブレーキが標準装備されるクルマが増えるにつれ、フロントガラス交換やバンパー修理のたびにセンサー類の再調整(エーミング)が必要になる場面が急増しました。従来の整備士教育だけでは、この新しい作業領域をカバーしきれないという課題が浮き彫りになったのです。

令和2年4月以降:施行と講習制度の運用

改正法は令和2年4月1日に施行され、電子制御装置整備を事業として行う工場には、整備主任者にこの分野の知識・技能を持たせることが求められるようになりました。これを受けて、各地方運輸支局長が主体となり、既存の整備士資格保有者を対象にした「電子制御装置整備の整備主任者資格取得講習」が全国で実施される体制が整えられていきました。

特定整備とは、従来の分解整備に加えて、自動運転技術に関わる電子制御装置の整備(カメラ・レーダー等の脱着・調整)を含めた、車検の対象となる整備区分の名称です。

どんな人が、どんな目的で取得しているのか

整備工場の後継者・次期工場長候補

家業として整備工場を継ぐ予定の人や、将来的に工場責任者を目指す人が受講するケースが目立ちます。整備主任者になるには法令上この講習の修了が求められる場面があるため、経営を担う前段階として計画的に受講する人が多いようです。

先進安全車両の入庫増に対応したいベテラン整備士

長年2級整備士として現場に立ってきたベテランが、入庫する車両の多くに自動ブレーキやレーンキープアシストが搭載されるようになったことをきっかけに受講するパターンもあります。今までの経験だけでは対応できない作業が増えたことへの実務的な対応です。

ディーラー・大手チェーンからの受講指示に応じる整備士

会社側の方針として、電子制御装置整備に対応できる人員を計画的に増やすため、勤務先から受講を指示されて取り組む整備士も少なくありません。この場合、受講は個人の意思というより会社の体制整備の一環という側面が強くなります。

豆知識:特定整備制度とエーミング作業のあれこれ

「試験」ではなく「講習」であることの誤解されやすさ

ネット上では「自動車整備士技能登録試験(電子制御装置整備)」のような呼び方で紹介されることがありますが、これは正式名称ではありません。国土交通省が案内しているのはあくまで「電子制御装置整備の整備主任者資格取得講習」という講習であり、独立した試験制度としては存在しません。名称の細部にこだわりすぎず、「既存の整備士資格に乗る追加要件」という制度の本質を押さえておくことが大切です。

エーミング作業の実務経験は別資格にも活きる

意外と知られていないのが、エーミング作業(ASVのカメラ・センサー等の位置調整作業)の実務経験が、「自動車電気装置整備士」の受験資格(実務経験)としてカウントできるという点です。一方で、同じ特定整備の枠組みに含まれるガラス施工作業については、この実務経験に算入されません。同じ特定整備の中でも、資格の実務経験としての扱いが作業内容によって異なるのは、覚えておくと役立つポイントです。

自動車電気装置整備士とは、カーナビ・カーオーディオ・電装品などの電気装置整備を専門とする国家資格です。実務経験の要件は資格ごとに個別に定められています。

まとめ ― 「既存整備士+αの資格」という発想で理解する

こんな方にとくにおすすめ

  • すでに2級自動車整備士・自動車車体整備士・自動車電気装置整備士のいずれかを持っている方
  • 整備工場の後継者・将来の工場長候補として整備主任者を目指す方
  • 自動ブレーキ・レーンキープアシスト搭載車の入庫増に現場として対応したい方
  • 勤務先から電子制御装置整備への対応を求められている整備士の方

取得に向けた第一歩

まず確認すべきは、自分がすでに2級自動車整備士・自動車車体整備士・自動車電気装置整備士のいずれかを持っているかどうかです。まだ前提資格を持っていない場合は、そちらの取得が最初のステップになります。すでに持っている場合は、勤務先や各地方の自動車整備振興会に、講習の実施時期・申込方法を問い合わせるところから始めるとよいでしょう。1級小型自動車整備士を持っている方は、この講習自体が免除される点も忘れずに確認してください。

公式サイト:国土交通省「自動車特定整備事業について」