建築板金技能士について

実技試験あり筆記試験実務経験・学歴が必要
国家資格

建築板金技能士とは?

概要・難易度・合格率・キャリアを解説

スポンサーリンク

建築板金技能士の概要

建築板金技能士は、金属板を加工して屋根・外壁・雨どい・換気ダクトなどを製作・取付ける技能を証明する国家資格です。中央職業能力開発協会(JAVADA)が試験基準を定め、各都道府県の職業能力開発協会が実施する「技能検定」のひとつにあたります。

技能検定とは、働く人々の技能を国が証明する国家検定制度のこと。職種ごとに実技試験と学科試験が行われ、合格すると「技能士」を名乗ることができる。

2つの作業区分に分かれた試験構成

建築板金技能士のもっとも大きな特徴は、試験区分が「内外装板金作業」と「ダクト板金作業」の2つに分かれている点です。前者は屋根・外壁・雨どいなど建物の外まわりを板金でつくる仕事、後者は換気・空調用のダクト(送風管)を金属板から製作・取付ける仕事にあたります。同じ「建築板金技能士」という資格名でも、実際にはまったく違う技術を問われる2本立ての試験だとイメージすると分かりやすいでしょう。

ダクト板金作業とは、建物の換気・空調用ダクトを金属板から製作・取付ける作業区分のこと。内外装板金作業とは別に受験区分が分かれている。

等級構成にも表れる区分の違い

内外装板金作業には1級・2級・3級の3つの等級がありますが、ダクト板金作業には1級・2級の2つしかなく、3級は設定されていません。ダクト板金は現場に出るまでに一定の実務経験を積むケースが多いことなどが背景にあるとされ、いきなり2級からキャリアを積む人が中心の区分になっています。この等級構成の違いは、求人票や履歴書で資格名を目にしたときに区分を見分けるヒントにもなります。

受験資格・対象者

受験資格は実務経験年数によって決まります。内外装板金作業の3級は実務経験を問わず受験可能で、専門学校生や入職1年目の若手でも挑戦できます。2級は実務経験2年以上、1級は7年以上が原則ですが、2級合格後2年以上、または3級合格後4年以上の実務経験でも1級を受験できる短縮ルートが用意されています。段階を踏んでキャリアアップしていく仕組みが制度に組み込まれているのが特徴です。

難易度・学習時間の目安

★★★☆☆ 中級

試験は学科(真偽法・多肢選択式50問・100分)と実技の2本立てです。実技は等級・区分ごとに製作する部材が決まっており、内外装板金作業では1級「谷どい製作」5時間、2級「角どい製作」4時間30分、3級「ホッパー製作」3時間と、長時間にわたって実際に金属板を加工し続ける実践的な内容です。ダクト板金作業も1級「曲りダクトへの長円形短管取付」、2級「正方形ダクトへの円形短管取付」がそれぞれ4時間かけて行われます。

学科は現場経験がある程度あれば過去問演習を中心に数十時間の対策で対応できますが、実技は日々の作業で使う採寸・切断・折り曲げ・はんだ付けなどの技術をそのまま試されるため、独学よりも現場での実践経験の積み重ねがものを言います。受験料は学科3,100円・実技18,200円(35歳未満は実技9,200円)で、試験は前期・後期の年2回実施されます。

ホッパーとは、上部が広く下部が狭まった漏斗(じょうご)状の金属部材のこと。3級の実技課題として、板金の基礎技術を確認するために採用されている。

合格率の目安:内外装板金作業で1級46%・2級54%、ダクト板金作業で1級38%・2級38%程度。

取得後に活かせる仕事・関連する職種

屋根・外壁の板金工事職人

戸建て住宅やビルの屋根葺き替え、外壁の金属サイディング施工、雨どいの新設・修理など、建物の外まわりを金属板で仕上げる現場で技術を発揮できます。近年は台風・大雪など気象災害後の屋根修理需要が高まっており、確かな技術を持つ板金職人の存在価値はますます大きくなっています。

空調ダクト施工技術者

ダクト板金作業区分を取得すれば、オフィスビル・工場・商業施設などの換気・空調設備工事で活躍できます。新築工事だけでなく、老朽化した設備の更新工事も継続的に発生するため、安定した需要が見込める分野です。

建築板金工事業の独立・開業

1級技能士は建築板金工事業の登録において実務経験や技術者要件を満たす根拠のひとつとして扱われることが多く、将来的に独立して工事業を営むうえでも有利にはたらきます。1級取得者であることは、施主や元請け企業に対して技術力を示す明確なアピール材料になります。

建設キャリアアップシステムとは、技能者の資格・現場経験を業界共通のICカードで記録・証明する国の制度のこと。建築板金技能士のような技能検定の合格実績も登録情報として活用される。

誕生の背景・歴史

技能検定制度としての始まり

建築板金技能士を含む技能検定制度は、1959年(昭和34年)の職業訓練法制定を機に整備が進みました。高度経済成長期に建設需要が急拡大するなか、現場の技術力を客観的に評価し、若手の技術習得を後押しする仕組みとして国家検定が求められるようになったのです。板金職人の技術は徒弟制度のなかで師匠から弟子へ受け継がれてきた側面が強く、それを「見える化」する意味でも技能検定の存在は大きな意味を持ちました。

ダクト板金作業区分の追加とその後

当初は屋根や外壁など建物まわりの板金技術が中心でしたが、ビルの高層化や空調設備の普及にともない、ダクト工事の専門性が高まったことを背景に、ダクト板金作業という区分が設けられました。建物の意匠にかかわる板金と、設備配管に近いダクト板金とでは求められる技術も道具も異なるため、区分を分けたうえでそれぞれ検定基準が整備され、現在の2区分体制に至っています。

どんな人が、どんな目的で取得しているのか

板金業に入職したばかりの若手職人

専門学校や工業高校を卒業して板金業に飛び込んだ若手が、まず3級を取得して「一人前への第一歩」を踏み出すケースが多く見られます。実務経験不問で受験できるため、入職直後から目標として据えやすいのも支持される理由です。

現場でキャリアアップを目指すベテラン職人

2級・1級と等級を上げていくことで、現場での役割が「作業者」から「職長」「現場責任者」へと広がっていきます。特に1級は元請け企業からの信頼を得やすく、大規模な改修工事や公共施設の板金工事を任される足がかりになります。

独立・工事業登録を見据える経営者候補

将来的に建築板金工事業として独立を考えている人にとって、1級技能士の資格は技術力の証明であると同時に、業として登録する際の実務的な裏付けにもなります。家業を継ぐために取得する二代目・三代目の職人も少なくありません。

豆知識:建築板金技能士の歴史をたどる金属屋根の変遷

江戸時代の銅板屋根がルーツ

建築板金の歴史をさかのぼると、江戸時代に寺社建築で用いられた銅板屋根や樋(とい)細工にたどり着きます。銅板を打ち出し・曲げ加工して屋根や雨どいをつくる技術は、当時から高度な手仕事として職人の間で受け継がれてきました。現在の技能検定で問われる「谷どい」「角どい」といった雨どい製作の課題は、この伝統技術の延長線上にあるといえます。

トタンの伝来からガルバリウム鋼板へ

明治時代に入ると、亜鉛めっきを施した鋼板「トタン」が海外から伝来し、安価で加工しやすい屋根材・外壁材・雨どい材として一気に普及しました。昭和期の日本の街並みを支えた素材といっても過言ではありません。そして現在では、トタンよりも3〜6倍程度耐久性に優れるとされる「ガルバリウム鋼板」が主流になっています。銅板からトタン、そしてガルバリウム鋼板へという素材の変遷は、そのまま日本の建築板金の歴史そのものだといえるでしょう。

ガルバリウム鋼板とは、アルミニウムと亜鉛の合金でめっきした鋼板のこと。さびに強く軽量なため、現在の屋根材・外壁材として広く採用されている。

まとめ ― 手仕事の技をかたちにする資格

こんな方にとくにおすすめ

  • 屋根・外壁・雨どい工事の現場で働き始めたばかりの若手職人
  • 空調ダクト工事の技術を客観的な資格として証明したい人
  • 将来的に建築板金工事業として独立・開業を考えている人
  • 家業の板金店を継ぐ予定があり、技術の裏付けが欲しい人

取得に向けた第一歩

まずは実務経験を問われない3級(内外装板金作業)から挑戦するのが王道です。日々の現場作業そのものが実技試験の練習になるため、特別な準備期間を設けるより、現場での基本作業を丁寧に積み重ねることが合格への近道になります。学科試験は過去問演習で出題傾向をつかみ、実技は先輩職人の指導を受けながら制限時間内に仕上げる練習を重ねましょう。関連資格として、かわらぶき技能士防水施工技能士も合わせて取得すると、屋根まわりの工事を一手に引き受けられる職人としての幅が広がります。

公式サイト:技のとびら(厚生労働省)