ゴンドラ取扱業務特別教育とは?
労働安全衛生法に基づく国家制度(特別教育)をわかりやすく解説
ゴンドラ取扱業務特別教育の概要
ゴンドラの取扱いの業務に係る特別教育は、労働安全衛生法第59条第3項・労働安全衛生規則第36条第20号・ゴンドラ安全規則第12条・昭和47年労働省告示第121号に基づき、ゴンドラを使用した高所作業(ビル外壁清掃・外装点検・塗装・工事)に従事する作業者に対して事業者が実施義務を負う「特別教育」です。学科5時間・実技4時間の合計9時間(1日)で修了証が取得できます。修了考査(試験)はなく、全科目受講完了で修了証が交付されます。受講資格は18歳以上です。建物の外壁清掃・窓ふき・塗装・保守点検等の高所作業を行う専門業者に必須の特別教育です。
※ 「ゴンドラ安全規則」は専用の法規制:ゴンドラは労働安全衛生法の一般規則(安衛則)に加えて「ゴンドラ安全規則(昭和47年労働省令第116号)」という専用の省令によって規制されています。ゴンドラ安全規則では年1回の定期自主検査・月1回の作業開始前点検・特別教育の実施義務・転落防止措置(安全帯着用義務)等が定められています。高所作業車(ハイリフト等)やつり足場は別の規制が適用されますが、ゴンドラはビルの屋上または中間位置に設置された機械装置からワイヤーロープで吊り下げて昇降させる専用装置であるため、ゴンドラ安全規則が優先適用されます。本特別教育の修了証と合わせて、必ずフルハーネス型墜落制止用器具特別教育の修了証を取得してください(同時に使用義務あり)。
ゴンドラ安全規則が定める対象業務の範囲
本特別教育の対象となる「ゴンドラ」は、吊りわく(作業台)・昇降装置・電気装置・スライディングアーム(つり出し装置)からなる一体型の高所作業装置で、主にビル・マンション・橋梁・煙突・タンク等の外壁作業用として設置されています。対象業務は「ゴンドラの操作(昇降・横行・停止)」「ゴンドラの点検・保守」「ゴンドラを使用した高所での清掃・塗装・防水・検査・修繕」等です。ゴンドラのメーカー・種類(単柱式・複柱式・屋上据置型・移動式)にかかわらず、動力で昇降させるゴンドラを使用する業務はすべて本特別教育の対象です。
基本情報の早見表
| 取得方法 | 特別教育(学科5時間+実技4時間・計9時間・1日)の全科目受講完了 |
|---|---|
| 講習科目(学科5時間) | ①ゴンドラに関する知識(2時間)②ゴンドラの操作のために必要な電気に関する知識(2時間)③関係法令(1時間) |
| 講習科目(実技4時間) | ④ゴンドラの操作及び点検(3時間)⑤ゴンドラの操作のための合図(1時間) |
| 修了条件 | 試験(修了考査)なし。全科目受講完了で修了証交付 |
| 受講資格 | 18歳以上(労働安全衛生法上の年齢制限) |
| 受講料 | 約10,000〜40,000円(機関・実技設備の有無・地域により大きく差あり) |
| 有効期限 | なし(終身有効・更新義務なし) |
| 実施主体 | 日本ビソー株式会社・ゴンドラメーカー各社・一般社団法人安全衛生マネジメント協会・各都道府県の労働基準協会等 |
| 公式根拠 | 安衛法第59条第3項・安衛則第36条第20号・ゴンドラ安全規則第12条・昭和47年労働省告示第121号 |
講習内容を詳しく
学科5時間+実技4時間(計9時間・1日)の科目詳細
本特別教育は合計9時間(1日)と、特別教育の中では比較的ボリュームのある講習です。昭和47年労働省告示第121号(ゴンドラの取扱いの業務に係る特別教育の規程)が定める学科3科目・実技2科目を履修します。特に実技4時間では実際のゴンドラを使って昇降操作・点検・合図の実習を行うため、実際のゴンドラを保有する実施機関(メーカー・専門教育機関)を選ぶことが重要です。受講機会が少ない特別教育のため、実施機関を早めに確認して申込みをすることを推奨します。
- ゴンドラに関する知識(学科・2時間):ゴンドラの種類(屋上据置型・移動式・クランプ固定型・スライディングアーム型・マストクライミング型)と各種の構造・特徴・用途の違い・各部名称(吊りわく・昇降装置・アウトリガー・スライディングアーム・ワイヤーロープ・サスペンションビーム)と機能・安全装置の種類と機能(過負荷防止装置・自動停止装置・非常停止装置・落下防止ストッパー)・吊りわくの積載荷重と定格速度の確認方法・ワイヤーロープの選定基準(安全係数10以上)・ゴンドラの設置・解体方法・日常点検項目(ワイヤーロープの素線切れ・金具類の損傷・電気系統の確認)・月例点検・年次自主検査の点検項目と記録方法
- ゴンドラの操作のために必要な電気に関する知識(学科・2時間):ゴンドラ制御システムの電源方式(単相・三相交流)・制御盤・操作スイッチボックスの構成と操作方法・インターロック機構(安全装置の電気的連動)・電動モーターの特性と昇降速度の制御・過電流保護・漏電遮断機の機能と動作確認・制御ケーブルの点検方法・電気系統の故障時の判断と対処(緊急停止手順)・アース接続の確認・電源ケーブルの配線と管理・電気系トラブルによる宙づり時の対処手順(安全ロープを使ったセルフレスキュー)
- 関係法令(学科・1時間):ゴンドラ安全規則の条文(第1条〜第27条)の概要・特別教育の実施義務(第12条)・定期自主検査の実施義務(第19条・年1回)・作業開始前点検の義務(第22条・毎日)・ゴンドラ使用時の安全措置(第18条・フルハーネス型安全帯の着用義務)・強風・大雨等悪天候時のゴンドラ作業禁止(第25条)・ゴンドラ使用前の積載荷重の確認義務・作業計画書の作成・監視員の選任・労働者への教育義務と元請け・下請け関係
- ゴンドラの操作及び点検(実技・3時間):実際のゴンドラを使用した操作実習。作業開始前の点検実習(ワイヤーロープの目視点検・制御盤の通電確認・安全装置の動作テスト・吊りわくの清掃・安全ネットの確認)・吊りわくへの乗降手順(フルハーネス型安全帯のランヤード接続順序)・昇降操作(上昇・下降・停止)の繰り返し実習・目的フロア高さへの水平停止と位置保持・横行操作(横移動機能付きの機種の場合)・緊急停止操作と復旧手順・作業後の吊りわくの格納(屋上への引き上げ・所定位置への固定)・電源オフ・ロック手順
- ゴンドラの操作のための合図(実技・1時間):ゴンドラ操作者と地上の監視員・合図者との合図方法の実習。法定の合図の種類(上昇・下降・停止・緊急停止・左移動・右移動)・無線インターカム使用時の通話手順・合図不明時・合図なし時の操作禁止・複数ゴンドラ同時使用時の識別合図・緊急時(機器故障・けが人発生・強風)の合図と避難指示手順
修了の条件(試験なし・全科目受講完了)
ゴンドラ取扱業務特別教育には法令上の修了考査(試験)がありません。学科5時間・実技4時間を全科目受講完了した時点で修了証(プラスチックカード)が交付されます。実施機関が少ないため、全国規模の専門機関(日本ビソー・安全衛生マネジメント協会等)の開催日程を事前に確認して早めに申し込むことが重要です。受講記録は安衛則第38条に基づき3年間保存が義務です。本特別教育の修了後、フルハーネス型墜落制止用器具特別教育の修了証を合わせて取得することが実務上必須です。
難易度・受講のポイント
ゴンドラ取扱業務特別教育は特別教育の中では実技が4時間と多めで、実際のゴンドラを使った操作訓練が中心です。安全上の最重要事項は①フルハーネス型安全帯のランヤードを吊りわくに乗る前に必ず接続し、降りた後に外すこと(接続前の転落・接続後の引っかかりが重大事故の原因)②ワイヤーロープの点検(素線切れが1撚りの素線数の10%以上でただちに交換・ゴンドラ用は安全係数10以上必要)③強風時(瞬間風速10m/s以上)や大雨・雷時の即時作業中止と吊りわくの屋上収納の3点です。作業中のゴンドラへの乗り方・降り方で転落死亡事故が繰り返し発生しており、基本動作の確実な習得が生命を守ります。
キャリアパスと需要
ビル外壁清掃・高所設備点検・外装工事の現場で活躍
ビル外壁清掃会社・ウインドウクリーニング会社・高所設備点検会社(通信アンテナ・空調設備)・外装防水・塗装工事会社・橋梁・タンク・煙突の点検・補修を行う産業設備保守会社が主な就業先です。国内では超高層ビル・複合商業施設・公共インフラの外壁メンテナンス需要が安定的にあり、特にビルの外壁清掃では人件費・安全管理の観点からゴンドラ使用が標準化しています。ゴンドラ取扱業務特別教育修了者は高所作業の専門技術者として建物メンテナンス業界で安定した需要があります。
フルハーネス型墜落制止用器具特別教育・高所作業車運転技能講習との組み合わせ
ゴンドラ作業には必ずフルハーネス型墜落制止用器具の使用が義務付けられるため、フルハーネス型墜落制止用器具特別教育との併取が実務上必須です。高所作業車運転技能講習(作業床高さ10m以上)と組み合わせることで、ゴンドラが設置されていない建物でも高所作業車で対応できる幅広い高所作業の専門技術者として評価されます。「建築物等の外壁清掃業(ビルクリーニング業)」での独立や「建物外壁調査士」(非破壊試験技術者資格)へのキャリアアップの足がかりとしても有効です。ゴンドラメーカーが提供する上位保守点検資格を合わせて取得すると設備メンテナンスの幅が広がります。
豆知識:ゴンドラの基礎知識
ゴンドラとは──足場とは違う「吊り下げ式」の高所作業装置
ゴンドラとは、建物の屋上や所定の位置に設置された機械装置(昇降機)から吊り下げたワイヤーロープで作業台(吊りわく)を吊り、電動モーターで上下(および機種によっては横方向にも)移動させる高所作業装置の総称です。仮設足場と最大の違いは「地面に支柱を建てない」点で、超高層ビルやオーバーハングのある複雑な外壁面でも作業台を当てることができます。タワークレーンに吊り下げた作業台(簡易ゴンドラ)と区別するため、ゴンドラ安全規則の「ゴンドラ」は建物固定の昇降装置から吊り下げるものに限定されています。国内では日本ビソー・東芝エレベータ・日立ビルシステム・ニチベイ等のメーカーが主要な建物用ゴンドラを製造・保守しています。
ゴンドラ作業中の「宙づり」リスクとハーネス症候群
ゴンドラ作業中に機器故障やワイヤーロープの異常で吊りわくが停止し、地上との行き来ができなくなる「宙づり」状態が発生することがあります。フルハーネス型安全帯で吊りわくにランヤードを接続した状態で宙づりになると、太ももや股関節のベルトが血流を圧迫して下半身の静脈血が心臓に戻れなくなる「ハーネス症候群(サスペンション・トラウマ)」が15〜30分以内に発症するおそれがあります。対策として①吊りわく内に折り畳み式の補助ループ(フットループ)を常備して立ち姿勢を維持する②宙づり発生時は直ちに合図で地上に通報し救出を要請する③セルフレスキュー用器具(緊急降下器・プルージック等)の使用手順を事前に習得しておく、の3点が推奨されています。ゴンドラ特別教育の実技ではこの対処手順が含まれています。
ゴンドラのワイヤーロープ──安全係数10以上が法定要件
ゴンドラ安全規則第13条は、吊りわくを支持するワイヤーロープの安全係数を10以上と定めています。クレーン用(安全係数6以上)やウインチ用(同6以上)と比較して非常に厳格な基準で、これはゴンドラに作業員が直接乗り込む「人を乗せる機械」であることが理由です。例えば定格積載荷重500kgのゴンドラでは、使用するワイヤーロープの破断荷重が5t以上必要です。廃棄基準はゴンドラ安全規則第16条に規定されており、①一撚りの素線数の10%以上の素線が切れているもの②直径の減少が公称径の7%を超えるもの③キンクしているもの④著しく変形または腐食しているものの4条件のうちいずれか一つに該当したらただちに使用を中止して交換します。日常点検での目視確認が作業者の最重要義務です。
よくある質問
Q. ゴンドラの近くで作業するだけ(乗らない)でも本特別教育は必要ですか?
安衛則第36条第20号は「ゴンドラの取扱いの業務」に従事する者への特別教育実施を義務付けています。「ゴンドラの取扱い」の範囲は操作(昇降・横行・停止のボタン操作)・吊りわくへの乗降・ゴンドラを使用した高所での作業です。ゴンドラには乗らず地上でのみ作業する誘導員・監視員(合図を出すだけで操作ボタンを押さない役割)は、本特別教育の対象業務には原則該当しません。ただし元請け会社の安全管理規程・現場の安全基準によって全関係者に受講を求める場合があるため、現場監督や元請けの指示を確認してください。ゴンドラの操作ボタンに触れる可能性がある場合は必ず受講してください。
Q. 海外製のゴンドラや自作ゴンドラを使う場合も本特別教育が必要ですか?
はい、必要です。特別教育の実施義務はゴンドラの製造国・メーカー・型式を問わず、動力で昇降する吊り下げ式の高所作業台(吊りわく)を使用するすべての業務に適用されます。ただし法令上のゴンドラはゴンドラ安全規則の適合品であることが前提であり、自作・非規格品のゴンドラはゴンドラ安全規則に定める構造規格(ゴンドラ構造規格・昭和54年労働省告示第115号)に適合していない場合、使用自体が違法となります。輸入ゴンドラや特殊仕様のゴンドラは使用前に都道府県労働局に構造規格への適合確認を行うことを推奨します。安全装置(過負荷防止装置・自動停止装置)が未搭載の機器は、構造規格に違反する可能性があります。
こんな方におすすめ
- ビル外壁清掃会社・ウインドウクリーニング会社・高所設備点検会社に就職・転職する予定で、ゴンドラを使った高所作業の前に本特別教育の修了証を準備したい方(18歳以上・試験なし・1日で取得可)
- 外装防水・塗装・建物補修工事の現場でゴンドラを使用する機会があり、元請けから本特別教育の修了証提示を求められている建設・外装工事業者の方
- フルハーネス型墜落制止用器具特別教育と合わせて、ゴンドラ高所作業に必要な2つの特別教育を揃え、外壁メンテナンス業界でのキャリアをスタートしたい方
- 超高層ビル・複合商業施設の建物管理・保全部門で、外壁の定期点検・清掃にゴンドラを活用する業者への発注管理・安全確認を担当する施設管理担当者の方
最新の講習日程・受講料・申込方法の詳細は日本ビソー株式会社または一般社団法人安全衛生マネジメント協会にお問い合わせください。実際のゴンドラを使用する実技講習のため、開催日程・定員が限られています。
公式サイト:日本ビソー株式会社 安全教育・特別教育
