伐木等業務特別教育(チェーンソーを用いた伐木等の業務)について

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伐木等業務特別教育(チェーンソー)とは?

労働安全衛生法に基づく国家制度(特別教育)をわかりやすく解説

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伐木等業務特別教育(チェーンソー)の概要

伐木等業務特別教育(チェーンソーを用いた伐木等の業務に係る特別教育)は、労働安全衛生法第59条第3項・労働安全衛生規則第36条第8号の3に基づき、チェーンソーを使用した立木の伐木・かかり木処理・造材・枝払い業務に従事させる際に事業者が実施義務を負う「特別教育」です。2020年8月1日の改正で旧制度(大径木・小径木の区分)が統合され、学科9時間・実技9時間の合計18時間(3日間)の講習で修了証が取得できます。修了考査(試験)は法令上定められておらず、全科目受講完了で修了証が交付されます。18歳以上であれば受講できます。林業・建設・造園・電力会社等でチェーンソーによる伐木作業を行うすべての方に必要な特別教育です。

2020年8月改正で旧制度から大きく変わった:改正前は「胸高直径35cm未満の立木」と「胸高直径35cm以上の大径木」の2種類の特別教育(時間数・難易度が異なる)がありましたが、2020年8月1日の改正で統合されました。現在は区分なく共通の18時間(3日間)の特別教育が必要です。改正前の旧制度修了者は「補講」を受けることで新制度に対応できます(補講の内容は旧修了の区分により異なります)。2020年8月1日以降に旧制度の修了証のみを持っている場合は、補講の受講を確認してください。

対象業務と必要な人

チェーンソーを使用した立木の伐木(受け口・追い口の切り込み)・かかり木処理(隣の木に引っかかった木の安全な倒し方)・造材(玉切り・枝払い)のすべてが対象業務です。林業(森林組合・素材生産業者)・建設業(山岳道路の開発・土砂災害後の流木処理)・造園業(公園・庭の大木の伐採)・電力会社(送電線下の樹木伐採管理)・地方自治体(公有林管理)で業務として行う18歳以上の作業者全員が対象です。「チェーンソーで枝を切るだけ」の場合でも造材・枝払いに該当するため特別教育が必要です。

基本情報の早見表

取得方法特別教育(学科9時間+実技9時間・計18時間・3日間)の全科目受講完了
講習科目(学科9時間)①伐木等作業に関する知識(4時間)②チェーンソーに関する知識(2時間)③振動障害及びその予防に関する知識(2時間)④関係法令(1時間)
講習科目(実技9時間)①伐木の方法(5時間)②チェーンソーの操作(2時間)③チェーンソーの点検及び整備(2時間)
修了条件試験(修了考査)なし。全科目受講完了で修了証交付
受講資格18歳以上(労働基準法上、危険業務のため)。学歴・実務経験は不要
受講料約15,000〜25,000円(機関・地域により差あり)
有効期限なし(終身有効・更新義務なし)
実施主体林材業労災防止協会(林災防)・コマツ教習所・コベルコ教習所等
公式根拠安衛法第59条第3項・安衛則第36条第8号の3・安全衛生特別教育規程第10条

講習内容を詳しく

学科9時間の科目詳細

学科は4科目・9時間で構成されます。最重要科目は「伐木等作業に関する知識(4時間)」で、受け口・追い口の設計方法・かかり木処理の安全手順・退避方向の確保を体系的に学びます。2020年の改正改定により、胸高直径20cm以上の立木には受け口の設置が義務付けられ(改正前は40cm以上)、かかり木の処理方法も安全基準が強化されました。

  • 伐木等作業に関する知識(学科・4時間):樹木の生理・樹形・荷重のかかり方・倒す方向の見極め方(樹形・傾き・風向きの総合判断)・受け口(方向切り)の形状と深さ(幹径の1/4)・追い口(背切り)の高さと残すつる木の厚さ(均一・幹径の10%以上)・偏心木・傾斜木・曲がり木・腐れ木の特別な伐木手順・かかり木の発生防止と安全な処理手順(「鳶口・かんな・チェーンブロック」の使い分け・押さない原則)・退避方向(倒す方向と反対の45度後方・最低5m以上)と退避路の事前設置・特別教育と林業労働者安全衛生規則の改正内容
  • チェーンソーに関する知識(学科・2時間):チェーンソーの各部名称(ガイドバー・ソーチェーン・スプロケット・ハンドガード・チェーンブレーキ)と機能・エンジン式と電動式の特性比較・ソーチェーンの種類(フルスキップ・セミスキップ)と磨耗の判断・チェーンオイルの自動供給確認・ガイドバーの交換基準・キックバック(反転)のメカニズムと防止策(チェーンブレーキの適切な使用・刃先での切り込み禁止)
  • 振動障害及びその予防に関する知識(学科・2時間):振動障害(白ろう病)の発症メカニズム・初期症状(指先のしびれ・冷感)・進行症状(白化発作・手指機能障害)・日振動曝露量(A(8))の算定・チェーンソーの振動加速度値と曝露限界値・使用時間の管理・防振手袋の効果と限界・早期発見のための振動業務健康診断(年1回)の受診義務
  • 関係法令(学科・1時間):安衛法第59条第3項・安衛則第36条第8号の3・安全衛生特別教育規程第10条・林業・木材製造業労働災害防止規程の主要条文・2020年8月改正の概要・チェーンソー作業安全基準(受け口の義務・退避距離等)

実技9時間の内容

実技は3科目・9時間で構成され、実際の山林または模擬林場で行います。最長の「伐木の方法(5時間)」では実際の立木(林業機関では実際の山林での実習)を使った受け口・追い口の切り込み・かかり木処理・退避行動を繰り返し実習します。「チェーンソーの操作(2時間)」では空間での切断操作・キックバック防止動作・チェーンブレーキの操作を習得し、「点検及び整備(2時間)」ではソーチェーンの目立て(目立てヤスリによる刃の研ぎ方)・チェーンテンション調整・エアクリーナー清掃を実習します。特に目立て(刃研ぎ)は切断効率と安全に直結する重要技術です。

難易度・受講のポイント

★★☆☆☆ 試験(修了考査)なし・3日間18時間で完了。受講資格は18歳以上のみ。全科目中「伐木の方法実技(5時間)」が最重要。受け口・追い口の設計・退避方向・かかり木処理手順を実習で繰り返し習得することが安全実務の核心。目立て(ソーチェーンの研磨)も実務で必須の技術。

伐木等業務特別教育は特別教育の中でも比較的長時間(3日間・18時間)の講習ですが、試験はなく全科目受講完了で修了証が交付されます。受講中の重点事項は①受け口・追い口の正確な切り込み(木が狙った方向に倒れるための基本)②かかり木が発生した場合の安全な処理(押さない・引っ張らない・チェーンソーで追い切りしない)③退避方向と退避路の事前確保です。これらを理解・実践することが林業での重大事故防止の核心であり、本特別教育の最重要学習内容です。

修了率:試験なし・全科目受講で修了。受け口の深さ(幹径の1/4)・つる木の厚さ(10%以上)・退避方向(倒す方向の反対45度後方・5m以上)・かかり木処理の3原則(押さない・引っ張らない・追い切りしない)が実務の安全を左右する最重要知識。

キャリアパスと需要

林業・造園・建設の幅広い職場で必須

林業(森林組合・素材生産業者・製材会社)・造園業(公園管理・庭の大木伐採・緑地管理)・建設業(道路開発工事・砂防工事・伐採専門業者)・電力会社(送電線下の危険木管理)・地方自治体(公有林・防災林の整備)・国土交通省(直轄国有林管理)が主な就業先です。林業の担い手不足が深刻な日本では、チェーンソー特別教育修了者は就職・転職で非常に有利です。特に女性・Iターン者の林業参入を支援するプログラムでも本特別教育の受講が最初のステップとして位置づけられています。

刈払機特別教育・林業架線作業主任者との組み合わせ

刈払機取扱作業者安全衛生教育と組み合わせることで、下刈り(草刈り)から立木の伐木まで林業・造園業の幅広い作業を一人でこなせる技術者として評価されます。林業でのキャリアアップとしては、本特別教育取得後に「林業架線作業主任者」(技能講習・3年以上の実務経験要)・「森林施業プランナー」・「グラップル特別教育」(林業機械操作)との組み合わせが有効です。フォークリフト運転技能講習・高所作業車特別教育と組み合わせた林業機械オペレーターとしての道も開けます。

豆知識:伐木の危険性

林業の死亡事故の多くが「かかり木処理中」に発生する

林業は製造業・建設業と比較して事故死亡率が圧倒的に高い危険な産業です。林業の死亡事故の中で「かかり木処理中」の事故が特に多いとされています。かかり木とは伐倒した木が隣の木に引っかかって倒れ切らない状態です。処理方法を誤ると①引っかかった木が突然滑り落ちて下の作業者を直撃②処理のために追い切り(チェーンソーで幹を追加切断)すると応力開放で木が予測不能な方向に弾き出される③長時間のかかり木が大きく揺れて周囲の作業者に倒れ込む等の重大事故が発生します。本特別教育では「かかり木に追い切りしない・鳶口や引張機械で安全に処理する」手順を徹底的に訓練します。

キックバック──チェーンソーが突然上に跳ね返る現象

チェーンソーのキックバックとはガイドバーの先端(鼻先)がログや枝に挟まれた瞬間に、機体が操作者の頭部・顔面・上半身方向に急激に跳ね上がる現象です。キックバックは瞬時に発生するため回避が困難で、毎年顔面・首・腕への深刻な負傷事故を引き起こしています。防止策は①ガイドバーの鼻先(危険ゾーン)での切り込み禁止②チェーンブレーキの定期的な作動確認③切断開始前の刃の回転確認(全速回転での切り込み)④保護装具(チェーンソー用防護ズボン・ヘルメット・防護メガネ・防護グローブ)の着用です。実技ではキックバック発生状況の体験的理解と防止動作を習得します。

受け口の「つる木」が伐倒方向を制御する

チェーンソーで木を伐倒する際、受け口(方向切り)と追い口(背切り)の間に残す「つる木(ヒンジ)」の存在が木が狙った方向に倒れる仕組みの核心です。つる木は伐倒直前まで幹の一部として繋がった状態を保ち、木の倒れる方向と速度を制御するヒンジ(蝶番)の機能を果たします。つる木が厚すぎると狙った方向への倒れが不安定になり、薄すぎると早期破断で制御を失います。つる木の適切な厚さは幹径の10%以上・均一に保つことが安衛則(改正後)で義務付けられています。これを正確に実施できることが安全な伐木の最重要技術です。

よくある質問

Q. 旧制度(改正前)の「チェーンソー特別教育」修了証は2020年改正後も有効ですか?

旧制度の修了証は2020年8月1日以降の新制度の特別教育に自動的には対応していません。旧制度には胸高直径35cm未満の「基本コース」と35cm以上の「大径木コース」があり、それぞれの旧修了者に対して新制度対応の「補講(補完教育)」が設けられています。補講の時間数は旧修了区分によって異なります(例:旧「基本コース」のみ修了者は補講時間が長め・旧「大径木コース」修了者は補講が短め等)。勤務先の元請け会社・発注者から新制度対応の確認を求められている場合は、補講を受けた実施機関発行の補講修了証を取得してください。

Q. 「伐木作業主任者」と本特別教育の違いは何ですか?

「伐木作業主任者」は現在の安衛法体系には存在せず、正確には「林業架線作業主任者」が架線集材の場合に必要な技能講習です。一般的な伐木作業には作業主任者の選任義務はなく、本特別教育(チェーンソー伐木等業務特別教育)を修了した作業者が直接従事できます。これは本特別教育が「作業者全員が受けるベースライン教育」であることを意味します。ただし架線集材系(ランヤードシステム・林業架線)を使用する作業では林業架線作業主任者技能講習(実務経験3年以上が要件)が別途必要です。

こんな方におすすめ

  • 林業・素材生産・造林補助作業でチェーンソーを使用した立木の伐木・枝払い・玉切りを行う、または行う予定の18歳以上の方(受講資格は18歳以上のみ・試験なし・3日間で取得可)
  • 造園業・公園管理・緑地管理でチェーンソーを使用した大木の伐採・枝処理を担当しており、元請けから修了証の提示を求められている方
  • 電力・通信インフラの維持管理で送電線・通信線付近の危険木をチェーンソーで処理する業務に従事する方
  • 林業へのIターン・林業就職を目指しており、最初の必須資格として本特別教育を取得したい18歳以上の方

最新の講習日程・受講料・申込方法の詳細は林材業労災防止協会(林災防)各都道府県支部または各登録教習機関にお問い合わせください。

公式サイト:林材業労災防止協会(林災防)