鋼橋架設等作業主任者とは?
労働安全衛生法に基づく国家資格(技能講習)をわかりやすく解説
鋼橋架設等作業主任者の概要
鋼橋架設等作業主任者は、労働安全衛生法第14条・施行令第6条第15号の3に基づき、高さ5m以上または支間30m以上の金属製橋梁上部構造(鋼橋・鋼トラス橋・鋼アーチ橋等)の架設・解体・変更作業を行う事業場に選任が義務付けられる国家資格(技能講習修了証)です。建設業労働災害防止協会(建災防)等の登録機関が実施する2日間・約11時間の技能講習を修了し、修了考査に合格することで取得できます。受講には「金属製橋梁上部構造の架設等業務の実務経験3年以上」等の受講資格が必要です。
※ 「鋼橋」と「コンクリート橋」は別の作業主任者が必要:鋼橋架設等作業主任者は「金属製(鋼製)の橋梁上部構造」を対象とします。プレキャストコンクリート製桁・PC桁・RC桁による「コンクリート橋架設等作業主任者」は別の技能講習です。また建築物の鉄骨骨組みは「建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者」が対象です。橋梁工事を手がける会社では、材質・工法によって必要な作業主任者が異なります。
選任が必要な作業と作業主任者の職務
高さ5m以上または支間30m以上の金属製橋梁上部構造の架設・解体・変更作業を行う場合に作業主任者の選任が必要です(安衛則第517条の8)。作業主任者の職務は作業の方法の決定・指揮・使用する器具・工具の点検・材料の欠点の確認・安全帯等の使用状況の監視・悪天候(強風・大雨等)時の作業中止判断です。
基本情報の早見表
| 取得方法 | 技能講習(2日間・約11時間)+修了考査(筆記)合格 |
|---|---|
| 講習科目 | ①作業の方法に関する知識(工法・設備)②工事用設備・機械・器具に関する知識③作業環境・安全に関する知識④関係法令⑤修了考査 |
| 合格基準 | 各科目40点以上かつ総合60点以上 |
| 受講資格 | ①金属製橋梁上部構造の架設等業務に3年以上従事した者②職業訓練修了後2年以上の実務経験 |
| 受講料 | 約14,000〜17,000円(地域・機関により差あり) |
| 有効期限 | なし(終身有効・更新不要) |
| 選任対象 | 高さ5m以上または支間30m以上の金属製橋梁上部構造の架設・解体・変更作業 |
| 主催 | 建設業労働災害防止協会(建災防)および都道府県の登録機関 |
講習内容を詳しく
2日間・約11時間の科目詳細
技能講習は2日間約11時間のカリキュラムで、3区分の講義と修了考査で構成されます。
- 作業の方法に関する知識(工法・設備):鋼橋の種類(鈑桁橋・トラス橋・アーチ橋・斜張橋)・架設工法(クレーン架設・ベント工法・片持ち架設・送り出し工法・フローティングクレーン架設)・各工法の長所・短所・適用条件・架設手順(横組み・縦組み・仮固定・本締め)・解体手順(解体計画書の作成・クレーン計画)・橋桁の変形防止・転倒防止措置
- 工事用設備・機械・器具に関する知識:クレーン(移動式・タワー・フローティング)の特性と使用可能範囲・玉掛け用具(ワイヤロープ・シャックル・スリング)の点検・ベント(仮設支柱)の設計・設置・撤去・架設治具(吊りビーム・スプレッダービーム)の選択・強風時の中止基準(10m/s)・作業半径と吊り荷重の確認方法
- 作業環境・安全に関する知識:高所作業の墜落防止措置(手すり・安全帯・親綱)・河川・海上架設時の水難防止措置・近接する道路・鉄道への安全管理・飛来落下防止(朝顔・養生ネット)・悪天候の作業中止基準・緊急時の連絡・退避体制
- 関係法令:施行令第6条第15号の3・安衛則第517条の8〜11(鋼橋架設作業の安全基準)・クレーン則・玉掛け技能講習との関係・作業主任者の職務と選任義務
修了考査の内容と合格基準
2日目の最後に修了考査(筆記)が実施されます。3科目から均等に出題され、各科目40点以上かつ総合60点以上で合格です。合格率は非常に高く、2日間の講義をしっかり受講していれば問題なく合格できます。合格者には「鋼橋架設等作業主任者技能講習修了証」が交付されます。
難易度・合格の目安
鋼橋架設等作業主任者の修了考査は、2日間の講義内容に沿った出題で合格率は非常に高いです。実質的なハードルは「受講資格」であり、金属製橋梁上部構造の架設等業務に3年以上従事していなければ受講できません。橋梁架設は専門性の高い業種であり、受講者は橋梁専門工事会社や大手ゼネコンの橋梁部門に従事する方が中心です。開催頻度は足場や型枠支保工と比べて少ないため、早めの日程確認と申込が重要です。
キャリアパスと需要
橋梁専門工事会社・ゼネコン橋梁部門で必須の資格
橋梁専門工事会社・大手ゼネコンの橋梁部門・道路建設会社・鉄道インフラ建設会社が主な就業先です。日本全国に数十万橋が存在し、高度経済成長期に建設された橋梁の老朽化対策(架け替え・補修・補強)が急務となっている現在、橋梁架設の専門家への需要は増加しています。国土交通省の「道路橋定期点検要領」に基づく点検・補修工事においても、架設・撤去を伴う補修工事では作業主任者の選任が必要です。
建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者・コンクリート橋架設等作業主任者との組み合わせ
鋼橋架設等作業主任者と建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者を組み合わせると、橋梁架設と鉄骨建方の両方に対応できる金属構造物架設の専門家として幅広い現場で活躍できます。コンクリート橋架設等作業主任者も加えると、鋼橋・コンクリート橋の両方に対応でき、橋梁工事全般の作業主任者として希少価値が高まります。土木施工管理技士(1級)との組み合わせで橋梁工事の技術管理の第一人者として評価されます。
豆知識:鋼橋架設の世界
「支間30m以上」という基準はなぜ設けられたのか
支間(橋脚・橋台間の距離)が30m以上になると、桁の長さ・自重が大きくなりクレーンでの吊り上げ難易度が急上昇します。また、桁のたわみ・振動が大きくなるため架設中の安定管理が複雑になります。高さ5m未満でも支間が30m以上の橋梁は低い場所でも横方向の不安定性があり、倒壊リスクが高いことから「高さ5m以上または支間30m以上」という両基準が設けられています。
「送り出し工法」が大河川・深い峡谷の架設を可能にする
送り出し工法とは、橋梁上部構造(桁)を河川の一方の岸側でブロックごとに組み立て、専用の装置で反対側に向かって少しずつ「送り出す」架設工法です。大河川・深い峡谷・鉄道・高速道路の上空など、中央部にクレーンを設置できない箇所で採用されます。北陸新幹線や本州四国連絡橋でも一部採用されており、鋼橋架設等作業主任者はこうした高難度の現場での安全管理を担います。
橋梁老朽化問題と今後の需要増加
国土交通省の調査によると2033年頃には建設後50年以上が経過する橋梁が全体の約70%に達する見込みです。耐震補強・架け替え工事が集中する時期を迎え、鋼橋架設等の専門技術者・作業主任者の需要は今後10〜20年にわたって高水準を維持すると予測されます。ベテランの退職による技術者の高齢化も進む中、本資格を持つ若手技術者の市場価値は高まり続けています。
よくある質問
Q. コンクリート橋架設等作業主任者との違いは何ですか?
鋼橋架設等作業主任者は「金属製(鋼製)の橋梁上部構造(鋼桁・鋼トラス・鋼アーチ等)」を対象とし、コンクリート橋架設等作業主任者は「コンクリート製の橋梁上部構造(PC桁・プレキャストコンクリート桁・RC桁等)」を対象とします。架設する橋の材質によって必要な資格が異なる別制度です。橋梁専門工事会社では、請け負う工事の種別に応じて両方の資格を持つ人材の確保が必要です。
Q. 橋梁の補修・塗装工事でも作業主任者が必要ですか?
補修・塗装のみでは鋼橋架設等作業主任者の選任義務はありませんが、橋梁部材の解体・変更・架け替えを伴う場合は選任が必要です。補修工事で足場の組立て・解体が伴う場合は「足場の組立て等作業主任者」が必要です。また橋梁の塗装工事で有機溶剤を使用する場合は「有機溶剤作業主任者」の選任が必要になります。工事の内容によって必要な作業主任者が変わるため、施工前に確認することが重要です。
こんな方におすすめ
- 橋梁架設・橋梁工事の現場で3年以上の実務経験があり、法定の作業主任者として選任されたい方
- 道路橋・鉄道橋・新幹線橋梁の架設・架け替え工事を専門とする会社でキャリアアップを目指す方
- 老朽化対策・耐震補強工事の増加に備え、橋梁架設の安全管理の専門家として市場価値を高めたい方
- コンクリート橋架設等作業主任者と合わせて取得し、橋梁工事全般に対応できる安全管理者を目指す方
最新の講習日程・受講料・申込方法の詳細は建設業労働災害防止協会(建災防)または各都道府県の登録機関にお問い合わせください。
公式サイト:建設業労働災害防止協会(建災防)
