溶射技能士について

実技試験あり筆記試験実務経験・学歴が必要
国家資格

溶射技能士とは?

概要・受検料・単一等級・表面処理の国家技能検定を徹底解説

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溶射技能士の概要

溶射技能士は、金属やセラミックスなどの材料を加熱して溶かし、製品の表面に吹き付けて皮膜を作る「溶射」の技能を国が認定する国家資格です。職業能力開発促進法に基づく「技能検定」の一職種で、試験問題は中央職業能力開発協会(JAVADA)が作成し、各都道府県の職業能力開発協会が実施します。合格すると名乗れる名称独占資格です。溶射は、部品の耐摩耗性・耐食性・耐熱性を高めたり、摩耗した部分を補修したりするのに使われる表面処理です。

溶射とは、金属やセラミックスなどの材料を加熱して溶かし、勢いよく吹き付けて表面に皮膜を作る表面処理法です。さまざまな素材・形状の製品に施工でき、耐摩耗・耐食・耐熱・絶縁などの性能を与えられます。

防食溶射と肉盛溶射

溶射職種は、「防食溶射作業」と「肉盛溶射作業」の2つの作業区分に分かれています。防食溶射は、アルミニウムなどを吹き付けてサビを防ぐ皮膜を作る作業、肉盛溶射は、ステンレス鋼などを厚く盛り上げて、摩耗した部分を補修したり強化したりする作業です。受検者は、自分の実務に対応する区分を選んで受検します。

等級のない「単一等級」

溶射技能士は、特級・1級・2級といった等級の区分がない「単一等級」の技能検定です。一つの試験に合格すれば「溶射技能士」となれます。単一等級のため、合格証書は厚生労働大臣名で交付されます。等級で区切らず、溶射の専門技能を一括して評価するのが特徴です。

基本情報の早見表

主催中央職業能力開発協会(JAVADA)が問題作成、都道府県職業能力開発協会が実施(職業能力開発促進法に基づく国家検定)
等級単一等級(特級・1級・2級等の区分なし。合格証書は厚生労働大臣名)
作業区分防食溶射作業/肉盛溶射作業
受検資格原則として一定年数(おおむね実務3年程度)の実務経験が必要。学歴・養成施設の修了で短縮(詳細は要確認)
試験形式学科試験+実技試験(防食=アルミニウム溶射、肉盛=ステンレス鋼溶射 など)
合格基準学科65点以上・実技60点以上(各100点満点)
実施時期前期・後期の年2回(職種により実施期が決まる)
受検料標準=学科3,100円+実技18,200円(都道府県により異なる。若年者減免あり)

試験内容を詳しく

学科と実技の両方で構成されます。それぞれの内容を見ていきましょう。

学科試験:溶射の知識

学科では、溶射の原理や、溶射材料、装置、前処理、材料、安全衛生などの知識が問われます。溶射の方法や、皮膜が密着する仕組み、施工前の表面処理の重要性など、溶射を正しく行うための知識が中心です。高温を扱う作業のため、安全に関する知識も重視されます。

実技試験:溶射の施工

実技では、選んだ作業区分に応じて、実際に溶射を行います。防食溶射作業ではアルミニウムを吹き付けて防食皮膜を作り、肉盛溶射作業ではステンレス鋼を盛り付けて補修・強化します。母材にしっかり密着した、均一で品質の高い皮膜を作る技能が問われます。前処理から仕上げまでの一連の作業が試されます。

難易度・学習の目安

★★★☆☆ 実務経験を前提に、密着性の高い皮膜を作る専門技能が求められます。

溶射技能士は、実務経験を前提とする単一等級の資格です。受検にはおおむね数年の実務経験が必要とされ、溶射装置の扱いに習熟していることが求められます。皮膜の密着性や均一さは、前処理や施工技術によって決まるため、確かな技能が問われます。日々の溶射の実務が、そのまま実技対策につながります。

合格の目安:職種別の合格率は公表されていません。合格基準は学科65点以上・実技60点以上。前処理から施工までの確かな技能が問われます。

取得後に活かせる仕事・関連する職種

表面処理・コーティングの現場

各種産業部品の表面処理・コーティングの現場で活躍できます。耐摩耗・耐食・耐熱が求められる部品に、溶射で皮膜を付与する仕事です。さまざまな素材・形状に対応できる溶射の技能は、幅広い分野で必要とされます。

部品の補修・再生

肉盛溶射は、摩耗した部品の補修・再生にも使われます。新品に交換せず、溶射で肉盛りして再び使えるようにすることで、コスト削減や省資源に貢献します。設備や機械の保全の現場でも、溶射の技能が活きます。

技能の証明・キャリアアップ

溶射という専門技能を公的に証明できるため、社内での評価や技能手当、転職時のアピールにつながります。単一等級でも、確かな専門技能の証として、現場で重宝されます。

他の資格との違い・位置づけ

めっきとの違い

めっきが、電気や化学反応で金属皮膜を析出させるのに対し、溶射は、材料を加熱・溶融して吹き付けることで皮膜を作ります。溶射は、めっきでは難しい厚い皮膜や、セラミックスなど多様な材料の皮膜を作れ、複雑な形状や大きな部品にも施工しやすいのが特徴です。同じ表面処理でも、皮膜の作り方が異なる別の職種です。

金属熱処理との違い

金属熱処理が、加熱・冷却によって金属内部の性質(硬さ・粘り強さ)を変えるのに対し、溶射は、表面に別の皮膜を付け加える表面処理です。内部の性質を変えるのが熱処理、表面に機能を加えるのが溶射、と整理できます。いずれも金属の性能を高める技能ですが、アプローチが異なります。

どんな人が、どんな目的で取得しているのか

溶射に携わる技能者

表面処理や補修の現場で溶射を行う人が、自分の専門技能を証明するために取得します。単一等級のため、一つの試験に合格すれば溶射技能士となれます。

設備保全に関わる人

機械や設備の保全で、摩耗部の補修に溶射を使う人が、技能の裏付けとして取得します。肉盛溶射による補修の技能は、設備を長く使ううえで価値があります。

技術力を高めたい企業

溶射を手がける企業が、社員に取得をすすめて技術力を証明・向上させるために活用します。技能士の在籍は、品質の高い溶射ができる証になります。

豆知識:吹き付けて機能を足す

大きな部品にも対応

溶射の強みは、素材や形状を選ばず、大きな部品にも施工できることです。橋やプラントの構造物、発電設備の部品など、めっき槽に入らないような大きなものにも、溶射なら現場で皮膜を作れます。耐摩耗・耐食・耐熱といった機能を、必要な場所に「吹き付けて足す」――それが溶射の便利さです。

受検料は都道府県で変わる

受検料は標準額が学科3,100円・実技18,200円ですが、実技は各都道府県が定めるため金額が異なる場合があります。若年者を対象とした減免制度もあります(対象年齢や金額は年度・自治体で変わります)。受検資格の実務年数も含め、申し込み前に、お住まいの都道府県職業能力開発協会の最新案内を確認しましょう。

まとめ ― 表面に機能を与える国家資格

こんな方にとくにおすすめ

  • 表面処理・コーティングの現場で溶射を行う方
  • 部品の補修・再生に溶射を使う方
  • 設備保全で溶射の技能を活かしたい方
  • 溶射の専門技能を公的に証明したい方

取得に向けた第一歩

まずは、自分の実務に対応する作業区分(防食溶射/肉盛溶射)と、受検資格を満たしているかを確認しましょう。単一等級なので、一つの試験に合格すれば技能士になれます。最新の試験日程・受検料・受検資格は、お住まいの都道府県職業能力開発協会や、厚生労働省「技のとびら」の公式情報で確認してください。日々の溶射作業が、そのまま試験対策になります。

公式サイト:技能検定「溶射」(厚生労働省 技のとびら)