
空を飛ぶ飛行機の安全を、地上で支えるプロが「航空整備士」です。航空業界に憧れる人にとって、パイロットと並ぶ花形の仕事ですが、「どうやったらなれるの?」「一等と二等って何が違うの?」「難しいの?」と、疑問は尽きません。じつは航空整備士は、国土交通省が所管する国家資格で、いくつもの区分に分かれています。この記事では、その仕事となり方、一等・二等の違い、難易度を解説します。
航空整備士とは:飛行機の安全を”確認”する国家資格

航空整備士は、航空機を安全に飛ばすために、機体やエンジン、装備品を点検・整備し、その安全性を「確認」する国家資格です。国土交通省が所管する、航空従事者の資格のひとつです。ただ整備するだけでなく、整備が終わった機体が安全基準を満たしていることを、公式に認証する――この「確認」という行為に、航空整備士の重要な役割があります。
飛行機は、少しの不具合が大きな事故につながりかねない乗り物です。だからこそ、飛ばす前後の点検や、法律で定められた整備を、確かな知識と技術を持つ航空整備士が担います。何百人もの命を乗せて飛ぶ機体の安全を、地上で保証する。表舞台に立つパイロットを、確かな技術で支える、なくてはならない仕事です。
一等・二等・運航整備士…区分の違い
航空整備士の資格は、扱える機体の大きさや、整備の深さによって、いくつかの区分に分かれます。おもな区分を、下の表にまとめました。
| 区分 | 扱う機体 | 整備の範囲 |
|---|---|---|
| 一等航空整備士 | 大型機(旅客機など) | 格納庫での重整備まで |
| 二等航空整備士 | 中・小型機 | 格納庫での重整備まで |
| 航空運航整備士 | 一等=大型/二等=中小型 | 運航の合間の軽整備(ライン整備) |
大きく分けると、まず扱う機体の規模で「一等」と「二等」が分かれます。一等は旅客機などの大型機、二等はセスナや小型ヘリコプターなどの中・小型機を扱えます。さらに、「航空整備士」と「航空運航整備士」という区分もあります。運航整備士は、運航の合間に行うタイヤの交換や日常点検といった、比較的軽い整備(ライン整備)を担当します。対して整備士は、それに加えて、エンジンや脚の交換、機体構造の修理まで、格納庫で行う本格的な整備(ドック整備)まで手がけられます。このほか、飛行機とヘリコプターでも資格が分かれています。
航空整備士になるには
航空整備士の資格を取るには、航空機の整備の実務経験が必要です。いきなり試験だけ受けて取れる資格ではありません。
ルートは大きく2つあります。一つは、航空会社などで整備の実務経験を積みながら、国家試験(学科と実地)に挑戦する道。もう一つが、国土交通大臣が指定した養成施設、つまり航空整備士の課程を持つ専門学校などで学ぶ道です。指定された養成施設を修了すると、実地試験が免除されるといった優遇があり、在学中から資格取得を目指せます。これから航空整備士を目指すなら、こうした専門学校に進むのが、現実的で近道になるルートです。
専門学校では、航空機の構造やエンジンのしくみ、電子機器、整備の実技まで、幅広く学びます。飛行機は、機械・電気・電子とあらゆる技術のかたまりですから、覚えることは膨大です。加えて、英語の技術文書を読む力も欠かせません。航空機のマニュアルの多くは英語で書かれているためです。手を動かす技術と、専門知識、そして語学まで――求められるものは多いですが、その一つひとつが、空の安全を守る力になります。学生のうちから、こうした学びに地道に取り組めるかが、この道を歩むうえでの土台になります。
※ 各区分で必要な実務経験の年数や年齢の要件は異なり、制度改定もあります。たとえば一等航空整備士は20歳以上・実務経験4年以上、二等は19歳以上・実務経験3年以上とされますが、正確な要件は受験する年度に国土交通省の基準で確認してください。
難易度の目安
航空整備士は、高度な専門知識が求められる、難関の資格として知られています。
試験は学科と実地に分かれ、学科は年に数回、各科目で一定の点数を取れば合格となる科目合格制です。合格した科目は一定期間、免除されます。難易度について、一般の試験ルートの合格率は2割程度とされることもありますが、正式な合格率は公表されていないため、あくまで目安です。一方、指定養成施設を経由するルートは、学校でしっかり学ぶぶん、比較的高い合格率とされています。いずれにせよ、実務経験を積み、幅広い知識を身につける必要がある、簡単ではない資格です。だからこそ、取得すれば確かな専門性の証になります。
活躍の場と、高まる需要
航空整備士が活躍するのは、航空会社の整備部門をはじめ、独立系の整備会社(MROと呼ばれます)、航空機メーカー、さらには自衛隊などです。空の安全を支える現場で、その専門性を発揮します。
近年は、航空需要の回復にともなって、整備士の人手不足が業界の課題として指摘されるようになりました。ベテラン整備士の高齢化も進んでおり、次の世代の担い手が求められています。飛行機が飛び続けるかぎり、その安全を守る整備士は、必ず必要とされる存在です。空が好きで、手に職をつけて長く働きたい人にとって、航空整備士は目指す価値の大きい仕事だと言えるでしょう。
資格を取ったあとも、成長は続きます。最初は二等や運航整備士から始め、経験を積んで一等へとステップアップしたり、特定の機種の整備を担う「型式限定」を増やしたりと、キャリアの広げ方はさまざまです。新しい機種が登場すれば、その整備を学び直す必要もあります。技術の進歩とともに、学び続けることが求められる仕事でもあるのです。だからこそ、飽きることがなく、長く打ち込める。手に職をつけて、専門性を一生かけて磨いていきたい人に、ふさわしい道だと言えます。
持ち帰り豆知識:整備士のサインがないと飛べない
航空整備士の仕事の重さを、よく表しているエピソードがあります。じつは、資格を持つ整備士による「確認」のサインがなければ、飛行機は飛ぶことができません。整備を終えた機体は、航空整備士が安全を確認し、航空日誌にサインをして、はじめて飛行が許されるのです。
そのサインには、重い法的な責任がともないます。「この機体は安全だ」と、自分の資格に懸けて保証する行為だからです。パイロットが操縦桿を握る前に、その機体の安全を最終的に確認しているのが、航空整備士。華やかなパイロットの陰で、飛行機の安全を根っこから支える、誇り高い専門職なのです。
まとめ:実務経験を積んで目指す、空の安全の守り手
航空整備士は、飛行機の安全を確認する国家資格で、扱う機体の大きさで一等・二等に、整備の深さで整備士・運航整備士に分かれます。なるには実務経験が必要で、専門学校(指定養成施設)で学ぶルートが現実的な近道です。高度な知識を要する難関ですが、その分、確かな専門性が身につきます。
空の安全を支える仕事を目指すなら、最初の一歩は、航空整備士の養成課程を持つ専門学校のカリキュラムを調べてみること。どんなことを学ぶのかを知れば、この道が自分に合うかどうかが見えてきます。なお、区分ごとの受験資格や実務経験の年数、試験の内容は年度で変わることがあるので、目指す際は国土交通省などの公式情報で最新を確認してください。
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