
印刷物もWebサイトも映像も、作る現場は近いようで別物です。クリエイティブ系の検定を調べ始めると、DTPエキスパート、CGクリエイター検定、Webデザイナー検定と名前が並び、どれから手をつければいいのか迷ってしまいます。とりわけDTPエキスパートには「紙の資格って今も役立つの?」という声がつきものです。この記事では、3つの検定を「どの制作領域で食べていくか」という軸で地図にして、あなたに合う一枚を選べるように整理します。
迷ったら「どの制作領域で稼ぐか」で決まる
この3つは優劣の関係ではなく、守備範囲が違います。紙(印刷)ならDTPエキスパート、Webサイトの土台ならWebデザイナー検定、3DCG・映像ならCGクリエイター検定、というように棲み分けているのです。まずは早見表で全体像をつかんでください。
| 検定 | 主催 | 守備領域 | 更新の有無 | こんな人向け |
|---|---|---|---|---|
| DTPエキスパート認証試験 | JAGAT | 印刷・DTP(紙) | 2年ごとの更新制 | 印刷会社・制作現場 |
| Webデザイナー検定 | CG-ARTS | Webデザインの基礎〜応用 | なし(取得後も有効) | Web制作の入口 |
| CGクリエイター検定 | CG-ARTS | 3DCG・映像制作 | なし(取得後も有効) | 映像・ゲーム・3DCG志望 |
詳しく読むかどうかは、気になった検定だけで大丈夫です。以下でそれぞれの選びどころを見ていきます。
紙の現場で戦うなら:DTPエキスパート認証試験

DTPエキスパート認証試験は、公益社団法人 日本印刷技術協会(JAGAT)が認証する、印刷・DTPの体系知識を測る資格です。学科試験はCBT方式の択一式で、試験時間は120分。色や用紙、面付け、カラーマネジメント、印刷ワークフローといった現場の共通言語を一通り押さえていることを証明します。上位には、学科に加えて実技(課題制作)まで課すDTPエキスパート・マイスターという区分も用意されています。
※ DTPとは、パソコン上で文字や画像をレイアウトし、印刷用のデータを作る作業のこと。DeskTop Publishing(デスクトップ・パブリッシング)の略です。
DTPエキスパートは今も役立つのか
正直に言えば、紙媒体の市場は年々縮小しており、「紙の資格」に不安を感じる気持ちはもっともです。それでも、印刷の現場では色やデータの受け渡しでトラブルが起きやすく、体系立った知識を持つ人は今も重宝されます。感覚や我流だけでは、なぜ刷り上がりが変わるのかを説明できないからです。DTPエキスパートは、その知識を客観的に示す「共通言語の証明書」として機能します。印刷会社や制作会社で紙の仕事に関わるなら、持っていて損のない一枚です。加えて、DTPで培う色や解像度の知識はWebやCGの世界でも土台になります。紙だけの知識で終わらない点も、案外見落とされがちな強みです。
逆に、はじめからWebや映像を専門にしたい人にとっては、遠回りになることもあります。「紙の現場に軸足を置くか、置かないか」がひとつの分かれ目です。自分の仕事の中心が印刷にどれだけ近いかで、優先順位を決めるとよいでしょう。
映像・3DCGで食べるなら:CGクリエイター検定

CGクリエイター検定は、公益財団法人 画像情報教育振興協会(CG-ARTS)が実施する、文部科学省後援の検定です。ベーシックとエキスパートの2段階があり、ベーシックは2DCG・3DCG・デザインの基礎知識を、エキスパートは3DCGと映像制作の専門知識と応用力を測ります。映像・ゲーム・3DCGの世界を目指すなら、制作の土台となる用語と考え方をここで固められます。実技ソフトの操作そのものより、制作の設計や理論を体系立てて問うのが特徴です。
「CGの検定は意味ない」と言われることもありますが、それは資格だけで作品が作れるようになるわけではない、という意味に近いでしょう。ソフトを動かす手と、その裏にある理論は別物です。用語や仕組みを共通言語として持っておくと、現場での指示や制作意図の理解が速くなります。ポートフォリオと組み合わせて使うのが現実的な位置づけです。
Web制作の入口を示すなら:Webデザイナー検定

Webデザイナー検定も、同じCG-ARTSが実施する文部科学省後援の検定で、こちらもベーシックとエキスパートの2段階です。Webサイトの企画・設計から、デザイン、ユーザビリティ、運用までを体系立てて学べます。Web制作は独学で始める人が多い分野ですが、その分だけ我流の穴ができやすいのも実情です。この検定は、基礎が抜けていないことを外から示す物差しとして向いています。CGクリエイター検定と主催・級構成が同じなので、両方を視野に入れて学習計画を立てやすいのも利点です。
プログラミング寄りの内容ではなく、デザインや情報設計といった「作り手の考え方」を問うのが中心です。コードをどこまで書くかという実装スキルは、この検定とは別に手を動かして身につける必要があります。まずWebの全体像を地図として押さえたい人に、最初の一冊として合っています。
結局どれを選ぶ?領域別の選び方
目的で迷ったら、次のように自分の向かう先に一番近いものを選んでください。
- 印刷・紙のデザインや制作進行に関わる/関わりたい → DTPエキスパート
- Webサイトを作る側に回りたい、まず基礎を固めたい → Webデザイナー検定
- 3DCGや映像、ゲームのビジュアルを作りたい → CGクリエイター検定
3つは競合ではなく、制作という川の「紙 → Web → CG・映像」という流れの上に並んでいます。どれが上でどれが下ということではありません。今いる場所、これから向かう場所に一番近い検定を選ぶのが、遠回りしないコツです。将来的に領域をまたぎたくなったら、二枚目を足していけば十分です。
持ち帰り豆知識:資格に「賞味期限」がある珍しい設計
DTPエキスパートの面白いところは、認証に2年間の有効期限があり、2年ごとの更新試験に合格しないと資格が失効する「更新制」だという点です。多くの検定は一度合格すれば一生ものですが、実際、同じクリエイティブ系でもCG-ARTSのCGクリエイター検定やWebデザイナー検定は、取得後に失効することはありません。ではなぜDTPだけが更新制なのかといえば、印刷の技術やソフト、データの規格の進化が速く、知識がすぐに古びるからです。「資格に賞味期限をつける」という設計は、常に現場の最新基準でいてほしいという協会からのメッセージとも読めます。更新の手間はかかりますが、その分「今の知識を持っている証明」になる、と考えると見方が変わります。
まとめ:自分の制作領域に一番近い一枚から
迷ったら早見表に戻り、「自分はどの領域で食べていくのか」を起点に選んでください。最初の一歩としては、志望する領域の検定の公式サイトで、試験範囲(シラバス)にざっと目を通すのがおすすめです。範囲を見て「知らない用語ばかりだ」と感じたら、それがそのまま伸びしろです。まずは一枚、自分の現在地に近いところから始めてみてください。
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