
「安定した仕事に就きたいけれど、大学に進むかどうかは決めきれない」。公務員に興味を持つ高校生や、高卒で働き始めた第二新卒の方から、そんな声をよく聞きます。じつは公務員試験は、最終学歴そのものを条件にしているわけではありません。仕組みを知れば、大学に行かなくても現実的に狙える職種と、専攻や学歴の壁で難しい職種の線引きが見えてきます。
公務員は「学歴」ではなく「試験区分」で決まる
公務員試験でよく見る「大卒程度」「高卒程度」という言葉は、多くの場合、最終学歴の条件ではなく出題される問題の難易度を示す区分です。年齢などの受験資格さえ満たせば、高卒でも受けられる試験は少なくありません。まずは、どの職種が高卒から狙いやすく、どこに壁があるのかを早見表で整理します。
※ 高卒程度とは、出題される問題のレベルが高校卒業程度であることを示す区分のことです。学歴の条件ではなく難易度の目安であり、年齢要件を満たせば学歴を問わず受験できる職種も多くあります。
| 職種 | 試験区分 | 高卒からの現実味 | 主な関門 |
|---|---|---|---|
| 市役所職員(初級) | 高卒程度 | ◎ 狙いやすい | 年齢上限が早い・倍率 |
| 刑務官 | 学歴不問 | ◎ 狙いやすい | 体力検査・面接 |
| 税務職員 | 高卒程度 | ◯ 卒業3年以内が目安 | 受験年数の制限 |
| 食品衛生監視員 | 大卒・専攻要件 | △ ストレートは難しい | 薬学・化学系の専攻 |
| 財務専門官 | 大卒程度 | △ ストレートは難しい | 専門試験・年齢目安 |
| 裁判所事務官 | 大卒程度が中心 | △ ストレートは難しい | 専門試験の負担 |
大学に行かなくても挑める職種
ここでは、高卒程度の区分や学歴不問で受けられる代表的な職種を見ていきます。いずれも大学の卒業を条件にしていないため、高校卒業後すぐでも挑戦できるのが特徴です。
市役所職員(初級・高卒程度)

市区町村が実施する高卒程度の地方公務員試験です。第1次試験は択一式の教養試験が中心で、大卒程度の試験のような専門試験は課されないことが多いとされています。第1次を通過すると作文や面接、適性検査といった人物試験に進むため、筆記だけでなく人柄や意欲を伝える準備も欠かせません。採用後は住民課や税務課などの窓口業務から経験を積み、若手職員として育成されていくとされています。地元で働きながらキャリアを積める点が魅力ですが、年齢上限がおおむね21歳程度までと早いため、進路を決める段階で受験資格を確認しておくことが大切です。採用枠が少なく倍率が上がりやすい点にも注意が必要です。
刑務官

法務省が実施する国家公務員試験で、18歳以上29歳未満であれば学歴・性別を問わず受験できるとされています。基礎能力試験と作文に加え、面接や体力検査も課されるのが特徴で、筆記以外の総合的な準備が求められます。採用後は矯正研修所などで法律知識や被収容者への対応、護身術といった専門研修を受けるため、試験の時点で専門知識がなくても始められる仕組みになっているとされています。2024年度の最終倍率は約2.5倍とされ、他の国家公務員試験と比べると受験しやすい水準といわれています。柔道・剣道などの武道経験を活かせる区分が設けられている点も、この試験ならではです。
教養より適性を見る自治体:SPIで受けられるルート

近年は、従来型の教養試験に代えてSPI3などの適性検査を導入する自治体が増えているとされています。専門的な公務員試験対策の負担を抑えられるため、独学で準備する高卒受験者にとっては入り口が広がる流れといえます。国税庁の税務署で働く税務職員採用試験も高卒程度の区分で、高校卒業からおおむね3年以内が受験の目安とされており、大学に行かない進路でも国家公務員を目指せる代表例のひとつです。
学歴・専攻の「壁」がある職種
一方で、大学での学びを前提とする職種もあります。「高卒程度だから誰でも」と単純化せず、壁のある職種は正直に押さえておきましょう。ここで紹介する3つは、高卒からストレートに狙うのは難しい例です。
食品衛生監視員 ― 専攻要件という壁

輸入食品や流通食品の安全を監視する専門職ですが、受験資格として大学で薬学・畜産学・水産学・農芸化学などの課程を修めていることが条件とされています。試験でも衛生化学や微生物学など、大学で学んだ専門知識がそのまま問われます。難易度そのものは大卒程度で標準的とされますが、受験資格の入り口に専攻の壁があるため、高卒から直接目指すのは難しい職種です。
財務専門官 ― 「大卒程度」の専門職という壁

財務局で財政と金融の両分野に携わる国家公務員で、人事院が実施する大卒程度の専門職試験です。専門試験では憲法・行政法・民法・経済学・財政学・会計学などが問われ、記述式や面接まで含めて半年〜1年以上かけて準備する受験者が多いとされています。受験には大学卒業(見込みを含む)の学歴が問われるため、これも高卒からストレートに挑むルートではありません。
裁判所事務官 ― 大卒程度が中心

裁判の事務を支える裁判所事務官の採用試験は、総合職と一般職があり、いずれも大卒程度が主な対象とされています。基礎能力試験に加えて法律・経済などの専門試験が課され、専門分野の対策が合否を大きく左右します。教養だけでは太刀打ちしにくいため、高卒からいきなり狙うより、まずは学歴を問わない職種で経験を積んでから検討する道が現実的です。
持ち帰り豆知識:「大卒程度」は学歴ではなく“難易度”の話
意外に思われがちですが、「大卒程度」の試験の多くは、じつは学歴そのものを条件にしていません。あくまで問題の難易度を示す区分なので、年齢要件さえ満たせば高卒でも大卒程度の試験を受けられるケースがあるとされています。実際、上級試験を学歴不問で実施している自治体も存在します。
ただし現実には、高卒程度の試験は年齢上限が21歳前後と早く設定されていることが多く、「高卒だからこそ早く動けるうちに受ける」戦略が効いてきます。刑務官のように、学歴を一切問わずに国家公務員として採用される道があることも、進路を狭く考えすぎないための心強い事実です。
まとめ:最初の一歩は「受験案内の年齢要件」
大学に行かなくても、市役所の初級や刑務官、税務職員のように高卒から狙える公務員は数多くあります。反対に、食品衛生監視員や財務専門官、裁判所事務官は専攻や大卒程度の壁があり、高卒からストレートには進みにくい職種です。この線引きを知っておくだけで、進路の選択肢はぐっと具体的になります。
最初の一歩としておすすめなのは、気になった職種の受験案内で「年齢要件」を確認することです。高卒程度の試験は上限が早いものが多いため、いつまでに受けられるかを把握しておくと、大学進学と就職のどちらを選ぶにしても後悔のない判断ができます。
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