ITサービスマネージャ試験について

更新不要(永久資格)筆記試験誰でも受験可
国家資格

ITサービスマネージャ試験とは?

概要・難易度・ITシステムの安定稼働を守るプロの国家資格を解説

ITサービスマネージャ試験の概要

ITサービスマネージャ試験(SM)は、IPAが実施する情報処理技術者試験の高度区分に位置する国家資格です。企業・組織が利用するITシステムやサービスを安定的・継続的に提供するための「ITサービス管理」に関する高度な専門知識と実践力を認定します。システムの設計・開発ではなく、稼働中のシステムを「運用・維持・改善する」マネジメント側の最高峰資格です。

ITサービスマネジメント(ITSM)とは、ITシステムをビジネスの要件に合わせて効率的・安定的に運用・管理するための考え方・フレームワークのことです。世界標準の「ITIL(IT Infrastructure Library)」に基づく考え方が試験の基本となっており、インシデント管理・問題管理・変更管理・可用性管理などが中心的な概念です。

試験の構成

年1回(秋期)実施。午前I・午前II(SM専門知識)・午後I(記述式)・午後II(論述式)の4部構成です。サービスレベル管理・キャパシティ管理・インシデント管理・問題管理・変更管理・構成管理・事業継続管理などが主要な出題範囲です。受験料は7,500円です。

SLA(Service Level Agreement:サービスレベル合意)とは、ITサービスの提供者と利用者の間で「どの程度のサービス品質を保証するか」を取り決めた合意文書のことです。「システムの稼働率は99.9%以上」「障害発生時の復旧目標時間は4時間以内」といった具体的な指標を定めます。ITサービスマネジメントの核心的な概念のひとつです。

「作るエンジニア」ではなく「守るエンジニア」の最高峰

システム開発(作る)よりも、稼働中システムの安定運用(守る)に専念する職種向けの試験です。データセンターの24時間365日運用・障害対応・変更管理・SLA管理などを担うIT運用のプロを認定します。

難易度・学習時間の目安

★★★★☆ 難しい ― IT運用管理の実務経験が事実上必要な論述試験

午後IIの論述では「あなたが担当したITサービスの運用管理における課題とその解決策を論述せよ」という形式が出ます。システム運用・インフラ管理・SRE(サイト信頼性エンジニアリング)などの実務経験がない場合、具体的な論述が難しい試験です。IT運用経験3〜8年のエンジニアが、ITSMの知識を体系化して臨むのが王道です。

SRE(Site Reliability Engineering:サイト信頼性エンジニアリング)とは、Googleが提唱したソフトウェアエンジニアリングの手法をシステム運用に適用する考え方・職種のことです。「システムをいかに止めずに安定稼働させるか」をソフトウェアの力(自動化・監視)で実現します。運用自動化・エラーバジェット管理・SLI/SLOの設定などが主な業務です。

合格率の目安:毎年13〜17%程度で推移しており、高度区分の標準的な難易度です。高度区分の中でも受験者数がやや少ないニッチな試験で、運用管理の専門家の中での認知度は高いです。

取得後に活かせる仕事・関連する職種

ITオペレーション・インフラ運用エンジニア

データセンター・クラウド基盤の24時間365日運用を担うオペレーションエンジニア・SRE担当として、システムの安定稼働に責任を持つロールで高く評価されます。

ITILプロセスオーナー・サービスデスク責任者

ITSMフレームワーク(ITIL)を組織に導入・運用する「プロセスオーナー」として、インシデント管理・変更管理などのITSMプロセスを設計・改善する役割で活躍できます。

クラウドマネージドサービス・ITアウトソーシング担当

他社のITシステムをマネージドサービスとして運用・管理するSIer・アウトソーサーにおいて、SLAの設計・履行管理・顧客対応などのマネジメント業務に活かせます。

誕生の背景・歴史

2001年:「システム管理士試験」として誕生

ITサービスマネージャ試験の前身は2001年に始まった「システム管理士試験」です。2000年代に入り、企業のITシステムへの依存度が急速に高まり「システムが止まると事業が止まる」という状況が一般化しました。「いかにシステムを止めずに安定的に運用するか」という運用管理の重要性が認識されるようになったのです。

2009年以降:ITIL・クラウド時代への対応

2009年の情報処理技術者試験改革で現在の「ITサービスマネージャ試験」として再設計され、国際標準ITIL v3の概念が大幅に取り入れられました。クラウド・SaaS時代においてもシステム運用管理の重要性は変わらず、むしろクラウドインフラの複雑化とともに高度な運用マネジメントの需要は高まっています。

どんな人が、どんな目的で取得しているのか

インフラ運用エンジニア・データセンター運用担当(実務3〜10年)

日々システムの監視・障害対応・変更管理を担ってきたエンジニアが、体系的な知識整理と国家資格取得を兼ねて受験するケースが最も多いです。

SIer・マネージドサービス提供者

顧客のIT運用を請け負う立場で、「ITサービス管理のプロ」としての信頼性を高める目的で取得するケースも多いです。お客様へのSLA提案・履行管理の際に資格の権威が説得力を持ちます。

ITIL資格とのセット取得者

ITILファンデーション資格(民間資格)を持つ方が、国内での上位の国家資格としてITサービスマネージャ試験に挑戦するケースもあります。

豆知識:「システムが止まる」コストはどれくらい?

1分あたり約80万円というダウンタイムのコスト

ITサービスマネージャが守る「システムの安定稼働」がいかに重要かを示す数字があります。大手調査会社Gartnerによると、ITシステムのダウンタイム(停止時間)のコストは平均で1分あたり約5,600ドル(約80万円)にのぼるといわれています。金融機関・ECサイト・基幹系業務システムなどでは、1時間の停止で数億円の損失になることもあります。

「止めない」ことがビジネス価値を守る

このような事態を防ぐために「高可用性設計・インシデント管理・問題管理・変更管理」を体系的に担うITサービスマネージャの存在は、企業にとって非常に重要です。「縁の下の力持ち」として目立ちにくい役割ですが、実はビジネスの継続に最も直接的に貢献しているポジションのひとつです。

まとめ ― 「守るエンジニア」として組織のITを支える最高峰資格

こんな方にとくにおすすめ

  • インフラ・サーバー運用を担当しており、国家資格で専門性を証明したい方
  • SIerやデータセンターでITサービス管理を担うエンジニア
  • クラウド環境でSRE・運用自動化を担当している方
  • ITIL資格をすでに持っており、国内での上位国家資格を目指したい方

取得に向けた第一歩

まずITILファンデーション(民間資格)でITSMの概念・用語を習得しておくことが効果的です。その後、IPA公式の過去問でSMの出題傾向をつかみ、日々の運用業務で「インシデント対応の課題と改善」を記録しておくことが論述試験への最善の準備になります。