ITパスポート試験とは?
概要・難易度・取得のメリットを解説
ITパスポート試験の概要
ITパスポート試験(通称「iパス」)は、「ITを利活用するすべての人」のための国家試験です。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施しており、情報処理技術者試験という大きな試験区分の中でも、もっとも基礎的な位置づけにあります。
※ 独立行政法人情報処理推進機構(IPA)とは、国の情報処理に関する政策を支える機関のこと。ITパスポートをはじめ、複数の国家試験の実施・運営を担っています。
どんな人のための資格?
「IT」という名前から、エンジニアやプログラマー向けの専門資格だと思われがちですが、実際は年齢・学歴を問わず誰でも受験可能です。IT業界以外で働く社会人や学生にも、基礎的なITリテラシーを示す資格として広く活用されています。
試験の受け方
試験はコンピューターを使って受験する「CBT方式」を採用しており、全国の会場からほぼ毎日好きな日程を選んで申し込めるのも便利なポイントです。出題形式は多肢選択式で、合格すると経済産業大臣名の合格証書が交付されます。
※ CBT方式とは、紙ではなく会場のパソコンを使って受験する試験方式のこと(Computer Based Testingの略)。申込日や会場の選択肢が多く、自分の都合に合わせやすいのが特徴です。
受験料の目安は7,500円(税込)で、申し込みは公式サイトの専用ページからオンラインで行います。受験料や申込方法は変更される場合があるため、お申し込み前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。
出題される3つの分野
出題範囲は、特定の技術に偏らないよう次の3分野からバランスよく構成されています。社会人として最低限知っておきたいIT・経営の基礎知識を幅広く問われるのが、この試験ならではの特徴です。
- ストラテジ系:企業経営や法務など、ビジネスの土台となる知識
- マネジメント系:プロジェクトやサービスの管理に関する知識
- テクノロジ系:ITの技術的なしくみに関する知識
※ 「ストラテジ」「マネジメント」「テクノロジ」は、IT系の国家試験で共通して使われる分野名です。ざっくり言うと、ストラテジ=経営や法律の知識、マネジメント=管理・運営の知識、テクノロジ=技術そのものの知識、とイメージするとわかりやすいでしょう。
難易度・学習時間の目安
結論からいうと、ITパスポートは数ある国家試験の中でも「初学者が最初の一歩として挑戦しやすい試験」です。
客観的な目安となる数値
2人に1人が合格しているとイメージすると、決して無理な目標ではないことが伝わるのではないでしょうか。
- 学習時間の目安:IT分野の前提知識がない場合でおよそ150〜180時間、すでに基礎知識がある場合は100時間程度といわれています
- 出題形式:多肢選択式のCBT方式で、120分・100問程度が出題されます(出題数や時間は変更される場合があるため、受験前に必ず公式情報をご確認ください)
「初めての資格試験」にもおすすめ
もちろん「誰でも簡単に受かる」わけではなく、専門用語や計算問題に最初は戸惑うかもしれません。ただ出題範囲や形式が安定しているので、市販の参考書や問題集を一冊しっかりこなせば、着実に合格ラインへ近づけます。「資格試験に挑戦するのが初めて」という方の最初の一歩としても、ちょうどよい難易度といえるでしょう。
取得後に活かせる仕事・関連する職種
ITパスポートは、特定の職種への「入場券」というより、どんな仕事にも活きる「土台」としての性格が強い資格です。
知識を直接活かしやすい職種・業務
なかでも、次のような職種・業務では知識を直接活かしやすいでしょう。
- 一般事務・営業・企画など、社内システムやデータを日常的に扱うオフィスワーク全般
- 情報システム部門のアシスタントや、ヘルプデスク・社内SEのような「ITと現場をつなぐ」仕事
※ ヘルプデスク・社内SEとは、社員からの「パソコンが動かない」「システムの使い方がわからない」といった相談に対応したり、社内のIT環境を整えたりする仕事のこと。専門知識と「わかりやすく伝える力」の両方が求められます。
- ITベンダーの営業職など、技術者と顧客の間に立って話をする仕事
- 新卒・第二新卒でIT業界への就職を目指す人の、入口としてのアピール材料
専門資格へのステップアップにも
また、ここで身につけた基礎は、より専門的な資格にもつながります。「まずはITパスポートで土台を固めてから、専門資格へステップアップする」というルートを選ぶ人も少なくありません。
- 基本情報技術者試験:ITエンジニアの登竜門ともいわれる試験で、プログラミングや技術的な知識をより深く学びたい人向け
- 情報セキュリティマネジメント試験:情報セキュリティの管理・運用に関する知識を問う試験で、社内のセキュリティ対策に関わりたい人向け
※ どちらもITパスポートと同じ「情報処理技術者試験」の仲間ですが、ITパスポートよりも一段専門的な内容を扱う試験です。それぞれの記事も準備が整い次第、このサイトでご紹介していく予定です。
誕生の背景・歴史
ITパスポートは、2009年(平成21年)春期に誕生した、比較的新しい国家試験です。それ以前にあった「初級システムアドミニストレータ試験」が制度改定で廃止され、その後継として新設されました。
※ 初級システムアドミニストレータ試験とは、かつて存在した「社内のパソコンやシステムを使いこなす力」を問う国家試験のこと。時代の変化に合わせて発展的に廃止され、その考え方を引き継ぐ形でITパスポートが誕生しました。
誕生の理由 ― 「すべての人にITの力を」
誕生の背景にあったのは、「IT関連の職種に就く人だけでなく、あらゆる業種・職種の人にITを活用する力が求められる時代になる」という考え方です。つまりITパスポートは、最初から「すべての社会人・学生のための共通リテラシー試験」として設計された資格なのです。
今では定番資格のひとつに
創設から15年以上が経った今では、累計応募者数が260万人を突破。就職活動や社内研修などでもすっかり定着した、いわば「定番資格」のひとつに成長しています。
どんな人が、どんな目的で取得しているのか
ITパスポートは「IT業界を目指す人だけの資格」ではなく、受験者層は驚くほど幅広いのが特徴です。
主な受験者層
代表的なのは、次のような方々です。
- 就職・転職を控えた学生や社会人 ― 「基礎的なITリテラシーがある」ことを客観的に証明できるため、エントリーシートや面接でアピール材料になる
- 非IT部門で働く社会人 ― 営業・総務・経理など、IT部門以外の仕事でも、社内システムやデータをきちんと理解して使いこなすための土台づくりとして
- 新入社員研修の一環として取得を推奨されている人 ― 企業によっては、新入社員に共通の知識を身につけてもらう目的でITパスポートの取得を推奨・必須化しているケースもある
- これからIT分野へのキャリアチェンジを考えている人 ― 「基本情報技術者試験」など、より専門的な資格へのステップアップの第一歩として
共通する動機は「身近なステップアップ」
共通しているのは、「資格を取って特別な仕事に就きたい」というより、「今の仕事を、もっと自信を持ってこなせるようになりたい」という身近な動機です。気負わず挑戦しやすいのも、この資格らしいところといえるでしょう。
こんな人におすすめ・こんな人にはやや物足りないかも
「自分に合っているかどうか」を考えるときの参考に、向き・不向きの傾向も挙げておきます。
- おすすめな人:ITの基礎知識をゼロから体系的に身につけたい人/資格試験に挑戦するのが初めてで、まずは取り組みやすいものから始めたい人/就職・転職活動でITリテラシーをアピールしたい人
- やや物足りないかもしれない人:すでにIT関連の実務経験が長く、基礎知識は十分にあると感じている人/プログラミングなど、特定の技術を深く掘り下げたい人(この場合は「基本情報技術者試験」などより専門的な資格の方が学びの手応えを感じやすいかもしれません)
豆知識:広告キャラクターにも起用された “国民的” 試験?
実はITパスポートは、誕生して間もない頃から認知度アップのPRにとても力を入れてきた資格です。
人気女優が広告に起用されたことも
試験の告知ポスターやCMには、堀北真希さんや多部未華子さんといった、当時話題の女優が起用されたこともありました。
「資格試験の広告に人気女優を起用する」というのは、当時としては珍しい試みでした。「社会人なら誰もが取っておきたい、身近な資格」というイメージづくりに、一役買ったともいわれています。
今では屈指の人気資格に
こうした取り組みも追い風となり、ITパスポートは今や年間30万人以上が応募する、国家試験の中でも屈指の人気資格へと成長しました。気づけば、すっかり身近な存在になっている資格のひとつといえるでしょう。
まとめ ― 「ITが少し苦手」という人にこそおすすめしたい一歩
ITパスポートは、エンジニアを目指す人のための「専門資格」ではありません。
これからの時代を生きる、すべての人のための「共通の教養」を証明してくれる資格です。
「ITが苦手」という人ほど、得るものが大きい
「ITは何となく苦手」「専門用語が並ぶと身構えてしまう」という方ほど、一度しっかり学び直す価値があります。
仕事への向き合い方や、自信の持ち方が大きく変わるきっかけになるかもしれません。
最初の一歩として、ちょうどいい難易度
合格率は約50%、学習時間の目安は100〜180時間ほど。決して気軽すぎる数字ではありませんが、コツコツ取り組めば、十分に手の届く範囲にあります。
「何か新しいことに挑戦してみたい」――そう思ったときの最初の一歩として、ITパスポートはきっと頼れる存在になってくれるでしょう。
