手話通訳士について

実技試験あり筆記試験誰でも受験可
公的資格

手話通訳士とは

手話通訳士について

聴覚障害者と聴者のコミュニケーションを支える公的資格。試験内容・合格率・受験資格から取得後の活躍の場まで、手話通訳士を目指す人に役立つ情報をわかりやすく解説します。

概要

手話通訳士は、聴覚障害者と聴者(耳の聞こえる人)の間で手話を用いて通訳を行う専門技能を認定する公的資格です。公益財団法人聴覚障害者福祉団体全国協会が実施する試験に合格し、厚生労働省への登録を行うことで取得できます。社会福祉・医療・行政・司法など、様々な場面での通訳業務を担う専門職として位置づけられています。

学科と実技の両方で専門性を証明する試験

手話通訳士試験は、学科試験(手話・聴覚障害者福祉・医学・通訳に関する知識)と実技試験(聴者から聴覚障害者への手話通訳・聴覚障害者から聴者への通訳)の2段階で実施されます。学科試験に合格した人のみが実技試験に進む仕組みです。試験は年1回実施され、学科と実技は同日に受験します。

受験資格は誰でも受験可能

手話通訳士試験には年齢・学歴・実務経験などの受験資格制限はなく、誰でも受験できます。ただし実際に合格するためには、手話の高度な表現力と読み取り力、聴覚障害に関する幅広い知識が必要であり、長期にわたる学習が一般的です。手話サークルや手話通訳者養成課程での経験が合格に大きく役立ちます。

難易度

手話通訳士試験の難易度は高く、合格率は例年10〜15%前後で推移しています。学科試験は手話理論・聴覚障害者福祉・医学・社会福祉と広範囲にわたる知識を問われます。実技試験は手話の質だけでなく、通訳の正確さ・スムーズさも評価されるため、日常会話レベルを超えた高度な手話スキルが要求されます。

手話通訳者養成研修との組み合わせが一般的

多くの受験者は、都道府県や市区町村が実施する「手話通訳者養成研修(基礎課程・応用課程・実践課程)」を修了してから試験に臨みます。養成研修だけで即合格できるわけではなく、さらに実践経験を積んだうえで複数回受験して合格するケースも多いです。手話のボランティア活動や現場での通訳経験が合格への大きな近道になります。

難易度の目安

★★★★☆

合格率は例年10〜15%前後。学科・実技ともに高い専門性が求められる難関資格です。手話の日常的な使用と実践的な通訳経験が合格の鍵となります。

合格率の目安

手話通訳者と手話通訳士の違い

「手話通訳者」は都道府県が認定する資格で、地域の通訳派遣業務などを担います。「手話通訳士」は国(厚生労働省登録)の公的資格で、より高度な専門性と広い業務範囲が認められています。手話通訳者として活動した後に手話通訳士を目指すステップアップのルートが一般的です。

取得後の仕事

手話通訳士の活躍の場は多岐にわたります。行政機関での窓口通訳・医療機関での診察通訳・裁判所や警察での司法通訳・学校・講演会・イベントでの通訳など、聴覚障害者が社会参加するあらゆる場面での通訳業務が想定されます。自治体の派遣通訳員として登録して活動する形態と、法人等に雇用されて専任通訳を行う形態があります。

専任の手話通訳士は全国でも少数

手話通訳士の資格取得者は全国で数千人規模ですが、専任(フルタイム)として雇用されているケースは限られており、多くは登録通訳員として必要に応じて派遣される形で活動しています。福祉・医療・教育関係の職場で他の業務と兼務しながら通訳業務を担う人も多くいます。

社会福祉士・介護福祉士との相乗効果

社会福祉士や介護福祉士の資格を持ちながら手話通訳士の資格も取得することで、聴覚障害のある利用者への支援幅が大きく広がります。福祉施設や相談支援機関で通訳と支援を一人で担える人材は希少であり、就労の際の強みになります。手話通訳士と福祉系資格を組み合わせることで、専門職としての独自性を高められます。

誕生の背景・歴史

手話通訳士制度は、1989年(平成元年)に「社会福祉士及び介護福祉士法」の一部改正により創設されました。それ以前は手話通訳の専門性を公的に証明する仕組みがなく、聴覚障害者の権利保障の観点からも資格制度の整備が求められていました。1990年の第1回試験から長年にわたって継続的に実施されています。

障害者の情報アクセスを保障するために

2006年の障害者権利条約採択・2011年の障害者基本法改正など、障害のある人の情報アクセス権への社会的関心が高まるなかで、手話通訳の専門職の重要性も再認識されています。2016年には「障害者差別解消法」が施行され、行政・企業における合理的配慮の提供義務が明確化されたことで、手話通訳士への需要が高まっています。

どんな人が向いているか

手話通訳士は、聴覚障害のある人と社会をつなぎたいという強い意志を持つ人に向いています。高い集中力と正確な情報処理能力、聴覚障害者のコミュニティへの理解と敬意が不可欠です。また、通訳という仕事の性質上、正確さとスピードを同時に求められるため、継続的な練習を厭わない真摯な姿勢を持つ人に適しています。

手話サークル・ろう学校との関わりから始める人が多い

手話通訳士を目指すきっかけとして、地域の手話サークルへの参加やろう学校でのボランティアがよく挙げられます。実際に聴覚障害のある人と日常的に交流を積み重ねることが、手話力の向上だけでなく通訳者としての倫理観や姿勢を身につけるうえでも大切です。

ろう者の文化・言語を深く理解することが大前提

手話は日本語の視覚的な表現ではなく、独自の文法構造を持つ言語(日本手話)です。手話通訳士として高い水準の通訳を行うためには、ろう者の文化・コミュニティ・生活への理解が欠かせません。通訳の正確さだけでなく、当事者の意図や文脈を正確に伝える倫理的感覚も重要なスキルです。ろう者と継続的に関わりながら、言語としての手話を磨き続けることが通訳者として成長する基盤になります。

豆知識

手話通訳士試験は年1回のみの実施で、例年9〜10月頃に学科・実技試験が行われます。学科試験は5肢択一式の筆記で、合格基準は各科目6割以上かつ総合得点の6割以上です。実技試験は録画された手話を読み取って通訳するVTR課題と、問題文を手話で表す表出課題から構成されます。実技は採点員が複数名で評価します。

合格後は厚生労働省への登録が必要

試験合格後は厚生労働省の手話通訳士登録台帳に登録することで、正式に「手話通訳士」として名乗れます。登録は5年ごとに更新が必要で、所定の研修受講が求められます。登録者数は年々増加していますが、活動できる地域や場面の拡大に向けて、より多くの有資格者が求められています。社会保障・医療・司法など幅広い分野での通訳活動に挑戦できる資格です。

まとめ

手話通訳士は、聴覚障害者と聴者のコミュニケーションを支える公的資格です。合格率10〜15%の難関試験ですが、行政・医療・司法など社会の様々な場面で必要とされる専門職であり、取得後は幅広い活躍の場があります。

手話通訳者からのステップアップとして目指す人も多い

都道府県認定の手話通訳者として経験を積んだうえで、手話通訳士試験に挑戦するルートが一般的です。養成課程・ボランティア活動・実践経験を積み重ねながら、国家レベルの公的資格取得を目指してみてください。聴覚障害のある人の社会参加を支えるやりがいのある仕事です。