海外安全対策・危機管理の資格について

実技試験あり筆記試験実務経験・学歴が必要
民間資格

海外安全対策・危機管理の資格とは?

概要・難易度・取得後の活かし方を解説

海外安全対策・危機管理の資格の概要

「海外赴任・駐在員向け危機管理検定」「海外安全対策アドバイザー」といった呼び方は、特定の一つの統一試験を指すものではなく、海外赴任者が直面する治安・医療・災害といったリスクへの対応知識を認定する、複数の団体による認定制度の総称として使われています。代表的な団体としては、一般社団法人日本在外企業協会(JOEA)が実施する「海外安全・危機管理者/責任者」認定や、NPO法人海外安全・危機管理の会(OSCMA)が実施する「海外安全スペシャリスト認定試験」が挙げられます。

危機管理とは、事件・事故・災害・感染症など、企業や個人にとって望ましくない事態が発生した際の被害を最小限に抑えるための備えと対応のことです。海外赴任の場面では、現地の治安情勢や医療事情への対応も含まれます。

試験の出題範囲と形式

JOEAの認定制度は「管理者」と「責任者」の2コースに分かれており、管理者コースは海外安全・危機管理を担当するうえで必要な基礎知識の習得に重点が置かれています。責任者コースは、すでに実務経験のあるマネジメント層を対象に、シミュレーション形式の研修を通じて実践的な対応力を高める内容です。一方、OSCMAの海外安全スペシャリスト認定試験は、面接・筆記試験、セミナーへの複数回の参加、小論文・実技試験という、複数段階にわたる選考プロセスで構成されています。

受験資格・対象者

JOEAの管理者コースは、海外安全・危機管理の担当になったばかりの人でも参加しやすい基礎レベルの内容です。一方、OSCMAの海外安全スペシャリスト認定試験は、企業・団体での3年以上の実務経験と、団体への会員登録が受験の前提条件となっており、すでに現場で危機管理に携わっている実務者向けの、上級者向けの認定です。

在外企業とは、海外に拠点(現地法人・支店・駐在員事務所など)を持つ日本企業のことです。JOEA(日本在外企業協会)は、こうした企業の海外活動を支援する目的で設立された団体です。

「資格」より「研修・セミナーへの参加」が中心という性格

これらの認定制度は、一発勝負の筆記試験で合否が決まるというより、団体が開催する研修・セミナーへの参加や実務経験の積み重ねが評価の土台になっている点が特徴です。資格を取って終わりではなく、団体の会員として情報交換やネットワーキングを継続していくことが前提とされている制度が多く見られます。

難易度・学習時間の目安

★★★★☆ 基礎コースは入門向け、上級の認定試験は実務経験者向けの本格資格

JOEAの管理者コースのような基礎レベルの研修は、海外安全対策の基本的な考え方や情報源を学ぶ内容が中心で、初めて担当になった人でも数日間の研修で全体像をつかめるよう設計されています。一方、OSCMAの海外安全スペシャリスト認定試験のように、実務経験・セミナー参加・小論文・実技試験までを求める認定は、数年単位で実務経験を積んだうえで、半年から1年程度かけて準備するイメージに近い、本格的な資格です。

NPO法人とは、特定非営利活動促進法に基づいて法人格を取得した非営利団体のことです。海外安全・危機管理の会(OSCMA)も、こうしたNPO法人として活動しており、会員企業・団体間の情報共有や人材育成を目的としています。

認定の目安:基礎レベルの研修受講型コースは、参加すれば修了として扱われるものが中心です。一方、OSCMAの海外安全スペシャリスト認定試験のような複数段階の選考を伴う認定は、実務経験や準備の度合いによって結果が左右される、相応に難易度の高い認定といえます。

取得後に活かせる仕事・関連する職種

海外進出企業の安全管理・危機管理担当者

海外に拠点を持つ企業では、現地の治安情勢や自然災害、感染症の流行などに関する情報を収集・分析し、社員の安全確保に向けた方針を策定する担当者が必要とされます。こうした認定で学ぶ知識は、平時の備えと有事の対応の両面で実務に直結します。

有事とは、事件・事故・災害など、通常とは異なる緊急事態が発生した状態のことです。対義語の「平時」は、こうした事態が起きていない通常の状態を指し、危機管理では平時の備えと有事の対応の両方を計画しておくことが重視されます。

海外赴任予定の駐在員本人

赴任先の安全情報をどこから得るか、緊急時にどう行動すべきかをあらかじめ知っておくことは、駐在員本人やその家族の安全に直結します。基礎コースの研修内容は、人事や総務の担当者だけでなく、これから赴任する本人にとっても役立つ知識です。

危機管理コンサルタント・研修講師

OSCMAの海外安全スペシャリスト認定試験のような上級認定は、合格者が「指導及びコンサルティング業務ができる」レベルとして位置づけられており、企業向けに海外安全対策の研修やコンサルティングを提供する専門家としての活動につながります。

誕生の背景・歴史

企業の海外進出とリスクの多様化

日本企業の海外進出が進むにつれて、海外拠点で働く社員が直面するリスクは、治安の悪化やテロ、自然災害、感染症の流行など多岐にわたるようになりました。こうしたリスクに個々の企業がそれぞれ対応するのではなく、企業同士で情報やノウハウを共有しながら備えていく必要性から、業界団体としての活動が広がっていきました。

「グローバル化の進展」を背景にした人材育成の必要性

海外安全・危機管理の会(OSCMA)のような団体は、グローバル化の進展にともなって増加するリスクに対応できる人材を育成する必要性を背景に活動しています。海外安全スペシャリスト認定試験のように、実務経験者を対象とした上級レベルの認定が設けられているのも、こうした「現場で指導できる専門人材」の不足という課題への対応といえます。

どんな人が、どんな目的で取得しているのか

人事・総務部門で海外赴任者の管理を担当する人

海外赴任者の安全管理体制を整える立場にある人事・総務担当者が、まずはJOEAの管理者コースのような基礎研修を受講し、社内の安全管理規程の整備に活かすケースが多く見られます。

海外安全対策の実務経験を積んだ専門職

すでに数年にわたり海外安全対策・危機管理の実務に携わってきた人が、自身の経験を客観的な認定として示すために、OSCMAの海外安全スペシャリスト認定試験に挑戦するケースがあります。

海外進出を検討している中小企業の経営者

これから海外進出を検討している中小企業にとって、安全対策・危機管理のノウハウを一から自社で構築するのは負担が大きいものです。経営者自身や担当者が基礎研修を受講することで、最低限備えておくべき視点を把握できます。

豆知識:「行ってから困る」を防ぐための仕組み

外務省の「海外安全ホームページ」とのすみ分け

海外の安全情報というと、外務省の「海外安全ホームページ」を思い浮かべる人も多いかもしれません。外務省の情報は、特定の国・地域の最新情勢を発信する一次情報源としての役割が中心です。一方、JOEAやOSCMAのような業界団体の認定制度は、そうした一次情報をどう読み解き、自社の対応にどう落とし込むかという「使いこなす力」を養う点に重点が置かれています。

セミナー参加が「単位」のように積み上がる仕組み

OSCMAの海外安全スペシャリスト認定試験では、団体が開催・指定するセミナーや講演会へ8回以上参加することが選考プロセスの一部に含まれています。一回のテストで知識を問うのではなく、継続的に学び続けている姿勢そのものを評価する仕組みは、変化の速い海外情勢を扱う分野ならではの工夫といえます。

まとめ ― 「もしも」に備える知識を体系的に学ぶ

こんな方にとくにおすすめ

  • 人事・総務部門で海外赴任者の安全管理を担当している方
  • 海外安全対策・危機管理の実務経験を、客観的な形で示したい方
  • これから海外進出を検討している企業の経営者・担当者の方

取得に向けた第一歩

まずは、外務省の「海外安全ホームページ」で自社・自分に関係する地域の情報に触れながら、JOEAなどの団体が開催する基礎レベルの研修・セミナーに参加してみることから始めましょう。実務経験を積んだ先に、より専門性の高い認定への挑戦という選択肢も見えてきます。