交渉アナリスト資格について

実技試験あり筆記試験実務経験・学歴が必要誰でも受験可
民間資格

交渉アナリスト資格とは?

概要・難易度・取得後の活かし方を解説

交渉アナリスト資格の概要

「交渉アナリスト」は、特定非営利活動法人日本交渉協会が認定する、ビジネスにおける交渉力・調整力を体系的に学んだことを証明する民間資格です。「ビジネス交渉力」「ネゴシエーション・スキル」をテーマにした資格・講座は複数の団体が独自に提供していますが、交渉学の理論と実技の両面を体系化した資格制度として広く知られているのが、この交渉アナリストです。

交渉学とは、交渉を「駆け引き」や「個人の話術」としてではなく、相手との関係や状況を踏まえて再現性のある手順として研究する学問分野のことです。アメリカのビジネススクールなどで体系的に教えられています。

試験の出題範囲と形式

交渉アナリストには、知識面を問う「2級」、実技面を問う「補」、そして両方を兼ね備えたうえで実務経験を問う「1級」という段階があります。2級は通信講座で交渉学の理論を学び、添削レポートの提出によって認定される「知識課程」です。一方の補は、2日間の実技研修に参加し、ロールプレイを通じた交渉実践力を講師が判定する「技術課程」にあたります。

受験資格・対象者

2級・補には年齢や学歴などの受験資格は設けられておらず、ビジネスパーソンであれば誰でも申し込むことができます。最上位の1級は、2級と補の両方をすでに取得していることに加えて、3年以上のビジネス交渉経験があることが受験の条件となっており、知識・技術・経験の3つがそろってはじめて挑戦できる仕組みです。

「資格」というより「段階的に積み上げる学び」としての性格

交渉アナリストは、一度の試験に合格して終わりという資格ではなく、知識(2級)→実技(補)→実務経験を踏まえた総合評価(1級)という順序で、数年単位で積み上げていく設計になっています。1級の合格者には協会の準会員資格が授与されるなど、資格取得後も協会との関わりが続く点も特徴です。

難易度・学習時間の目安

★★★☆☆ 2級は通信講座で取得可能、1級は実務経験が前提の本格資格

2級は通信講座での学習が中心となるため、まとまった学習時間を確保すれば数か月程度で取得を目指せます。補は2日間の実技研修への参加が条件となるため、スケジュールさえ合わせられれば比較的取り組みやすいグレードです。一方、1級は2級・補の取得に加えて3年以上の実務経験が必要となるため、知識を学んでから実際に取得するまでに数年単位の時間がかかる、長期的な目標として位置づけられる資格です。

添削レポートとは、通信講座のテキストで学んだ内容について、課題に沿って自分の考えをまとめて提出し、講師から添削・フィードバックを受ける学習形式のことです。交渉アナリスト2級では、この添削レポートを複数回提出することで認定が行われます。

認定の目安:2級・補は、講座を最後まで受講し課題に取り組めば認定される「学習達成型」の認定方式に近く、極端に低い合格率にはならないとされています。一方、1級は面接やケース分析などを含む総合評価のため、相応の準備が必要です。

取得後に活かせる仕事・関連する職種

営業・調達・購買担当者

取引先との価格交渉や条件調整は、営業職や調達・購買担当者にとって日常的に発生する業務です。交渉学で学ぶ「お互いにとって良い結論」を目指す考え方は、一方的な値引き交渉ではなく、長期的な取引関係を築くための交渉に役立ちます。

Win-Win(ウィンウィン)とは、交渉の当事者双方が、それぞれにとって納得できる結果を得られる状態のことです。一方が得をしてもう一方が損をする「ゼロサム」な交渉ではなく、双方の利益を両立させる解決策を探すという考え方です。

経営者・管理職

取引先との契約条件の交渉だけでなく、社内の部門間調整や人事に関する話し合いなど、経営者・管理職が日々向き合う場面の多くは、広い意味での「交渉」です。交渉アナリストで学ぶ枠組みは、こうした社内外のさまざまな話し合いを整理して進めるための土台になります。

コンサルタント・研修講師

企業向けに交渉力研修やネゴシエーション研修を提供するコンサルタント・研修講師にとって、交渉アナリストで学ぶ理論は、研修プログラムの設計や説明に説得力を持たせるための裏付けとなります。1級取得者には協会の準会員資格が授与されるため、講師としての専門性をアピールする材料にもなります。

誕生の背景・歴史

1970年代:ハーバードで学んだ「交渉学」との出会い

交渉アナリスト資格の生みの親である藤田忠氏は、1970年代にハーバード大学の客員研究員として交渉学を研究し、帰国後、日本の大学で交渉学を教えるようになりました。当時の日本では、交渉は「個人の駆け引きの上手さ」として語られることが多く、欧米のように体系立てて学ぶ対象とはみなされていませんでした。

2003年:NPO法人としての発足

こうした研究と教育の実績をもとに、2003年10月、特定非営利活動法人日本交渉協会が認証を受けて発足しました。以降、交渉学を学んだ証として交渉アナリスト資格の認定が始まり、企業研修やビジネススクールとも連携しながら、交渉学を学べる場を広げています。

どんな人が、どんな目的で取得しているのか

営業職としてのレベルアップを目指す人

自己流の営業トークに頼った交渉から脱却し、相手の状況や利害を踏まえた提案ができるようになりたいという営業職の人が、2級の通信講座から学び始めるケースが多く見られます。

通信講座とは、通学せずにテキストや動画教材を使って自宅で学習を進める講座形式のことです。交渉アナリスト2級は、この通信講座での学習と添削レポートの提出によって認定が行われます。

経営者・起業家

資金調達や業務提携など、会社の将来を左右する重要な交渉に直面する経営者・起業家にとって、交渉を体系的に学ぶことは、感覚や経験則だけに頼らない判断材料を持つことにつながります。

研修・人材育成担当者

社内向けの交渉力研修やコミュニケーション研修を企画する人材育成担当者が、研修内容の理論的な裏付けを得るために、自ら2級・補を取得してから社内展開するケースもあります。

豆知識:「駆け引き」と「交渉学」の違い

交渉学は「相手に勝つ技術」ではない

「交渉が得意」というと、相手を言い負かしたり、駆け引きで有利な条件を引き出したりするイメージを持たれがちです。しかし、交渉学で扱う交渉は、双方が納得できる合意点を見つけるための手順を重視します。一時的に有利な条件を引き出せても、相手との関係が壊れてしまっては、ビジネスの交渉としては成功とはいえない、という考え方が根底にあります。

創設者は大学で教鞭をとっていた研究者

交渉アナリスト資格の創設者は、もともとビジネスの現場で活躍していた実務家ではなく、大学で交渉学を教えていた研究者です。学問としての交渉学を、ビジネスパーソンが実際に使える形に落とし込んだ点が、この資格のユニークな成り立ちといえます。

まとめ ― 「話し合いの結果」を変える交渉学の入門資格

こんな方にとくにおすすめ

  • 取引先との価格・条件交渉を担当する営業・調達・購買の方
  • 社内外の調整・話し合いが多い経営者・管理職の方
  • 交渉力研修・コミュニケーション研修を企画する人材育成担当の方

取得に向けた第一歩

まずは受験資格の制限がない2級の通信講座から、交渉学の基本的な考え方に触れてみることから始めましょう。学んだ枠組みを、自分が日々向き合っている取引先や社内との話し合いに少しずつ当てはめてみることが、交渉力を実感として身につける近道になります。